ナース服の中の僕

なな

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第6章:朝の鏡の前で

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二日目の朝。まだ薄暗い時間、悠真は自室の机の上に制服一式を広げていた。

白いレースのキャミソールとショーツ。淡いピンクのチュニック。スカート。ストッキング。そして、ナースシューズ。

(……また、これを着るんだ)

一晩経っても、その現実にどこか実感が追いつかない。けれど、前日とは違って、制服を前にした胸の奥に小さな“ざわめき”が生まれていた。

羞恥ではない。恐怖でもない。

……もっと、言い表しづらい感情。期待にも似た、緊張。

ゆっくりとパジャマのボタンを外し、上着を脱ぐ。鏡の前には、少年らしい体つきの自分が映る。肩幅はある方だと思っていたのに、今朝はどこか華奢に見えた。

キャミソールを手に取り、頭からそっとかぶる。肩紐が腕を滑るたび、背中にひやりとした感触が走る。レースのふちが鎖骨にふれ、思わず小さく息が漏れた。

(……昨日より、なんか気持ちが敏感になってる……)

ショーツに履き替えると、いつものボクサーパンツよりもずっと薄くて柔らかく、肌と一体になるような感じがした。太腿にぴったり沿って、脚を動かすと布がついてくる。まるで、身体そのものが“女の子の形”に近づいていくような錯覚。

そして、ストッキングを丁寧にたぐり寄せ、つま先を通す。

昨日よりもスムーズに履けたことに、ほんの少し自分でも驚いた。膝まで上げた段階で一度手を止め、腿の上に手を置く。つるりとした手触りが、鏡の中の自分をまた変えていく。

(……スカートを履く準備が、できてきた……)

そう思うと、自然とスカートに手が伸びた。ウエストにそっと巻きつけ、ファスナーを引き上げる。お腹のあたりをしめつける感覚は、男子のズボンとは違い、どこか背筋が伸びるような気がする。

最後に、チュニックをかぶった。

ピンクの布がふわりと視界を覆い、柔らかい香りが鼻をくすぐる。前日よりも落ち着いた動作で、裾を整え、肩をならす。

鏡の前に立った自分は──確かに、昨日よりも自然だった。

(……慣れてきたんだ、僕)

でもそれは、単なる「慣れ」だけじゃなかった。

「この格好の僕」に、昨日よりも少しだけ、違和感がない。いや、むしろしっくりきている。胸に手を当てると、キャミソール越しの自分の鼓動が、ゆっくりと響いていた。

(このまま、もっと……)

その先の考えは、なんとなく怖くて、そこで止めた。
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