ナース服の中の僕

なな

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第19章:波音の向こうで待つ人へ

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「……海辺のリゾートって、どうしよう……」

その夜、悠真は梨乃の部屋のソファで、抱きしめたクッションに顔を埋めていた。
桐谷とのディナーデートから帰ったばかりの顔には、まだ微かな赤みが残っている。

「で? ちゃんと“行きたいです”って言ったんでしょ?」

「うん……けど、旅行って、泊まりで、しかも連休中だから結構長いの、 ずっと女の子でいなきゃいけないし、……ばれたらって思うと怖い」

梨乃は静かにうなずきながら、悠真の髪を撫でた。

「大丈夫。今までのあんたの頑張りなら、きっと自然に過ごせるよ。それに……」

彼女は押し入れから、大きなトランクを引っ張り出してきた。

「準備は、私が手伝ってあげる。女の子の“旅支度”って、楽しいんだから」

まず最初に決めたのは、水着だった。

「……ビキニはさすがに無理だと思うけど……タンキニならお腹も隠せるし、可愛いの多いよ」

ピンクの花柄、ネイビーのシンプルなセット、肩紐付きのフリルワンピース。
鏡の前で一つずつ試着するたびに、悠真は心拍が上がるのを感じた。

「あと、日焼け止めは絶対。メイク崩れないようにウォータープルーフのやつ使お」

次はリゾートワンピース。
白地に淡いブルーのグラデーションが入ったノースリーブのワンピは、砂浜でも風に揺れて映えそうだった。

「インナーはこれがいいかな。シームレスで響かないし、胸元も自然に見える」

梨乃が出してきたのは、ベージュのシームレスブラとショーツのセット。
肩紐を透明に替えれば、ワンピースにも合わせられる。

(こんなにたくさんの“女性の持ち物”を、僕が……)

戸惑いと、でもどこか誇らしさが入り混じる。

「寝間着は……どうする? 普通のTシャツでもいいけど、せっかくだし可愛いの着てみない?」

「…………えっ」

梨乃が差し出したのは、パステルブルーのキャミワンピ。胸元にレースがあしらわれていて、透け感もある。

「冗談だってば、そんな顔しないの。……でも、こういうの似合っちゃいそうで怖いわ」

二人で笑い合ううち、悠真の中の緊張が、少しだけほどけていった。

スーツケースには、日焼け止め、軽いメイクセット、髪用のブラシやピン、ヒールサンダル、涼しげなシャツワンピ。
「女性として4泊5日を過ごす」ためのアイテムが、きちんと並んでいく。

(ちゃんと準備したら、大丈夫。……彼に、“一緒にいてよかった”って思ってもらえるように)

心の中で、そっとつぶやいた。
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