ナース服の中の僕

なな

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第28章:一緒に過ごす夜

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観覧車を降りたあと、海辺をしばらく歩いた。
手を繋いだまま、言葉は少なかったけど、どこか満たされた沈黙だった。

リゾートホテルへ戻る頃、桐谷がぽつりとつぶやいた。

「ねえ、今夜……同じ部屋で、眠ってくれない?」

足が一瞬止まりそうになった。

「……え……」

「無理はしない。でも……君のこと、もっと大切にしたいって思ってる。
ちゃんと……付き合ってほしい。俺と」

夜風が止まったかのように、音が消えた。

「……わたし、男なのに……」

「それでも、君が好きだよ。君が女の子として笑ってくれてる今も、
迷いながら頑張ってる君も、全部。……ダメかな?」

悠真はうつむいたまま、唇を噛んで──
でも、そっと桐谷の手を握り返した。

「……うん。私でよければ……」

部屋に入ると、静かでやわらかな明かりが落ちていた。

桐谷がバスルームを貸してくれて、
悠真はゆっくりとクローゼットにしまっていたワインレッドのランジェリーに着替えた。

肩にかかるレースのストラップ、
鏡の中の姿に、自分でも思わず頬が熱くなる。

(こんなの……見られるの、はじめてなのに……)

リビングに戻ると、桐谷がソファに腰をかけていて──
目が合うと、少し驚いたように息を飲んだ。

「……綺麗だ」

「っ、やだ、見ないで……」

「見せてくれて、ありがとう」

そっと手を差し出され、抱き寄せられる。
胸の上で鼓動が早くなり、言葉も声も出ない。

「緊張してる?」

こくん、と頷いた。

「……わたし、こういうの……初めてで……」

その瞬間、桐谷は優しく微笑んだ。

「大丈夫。何もしないよ。無理に近づいたりもしない。
ただ、君を大事にしたいだけ」

ぎゅっと抱きしめられて、髪に口づけられる。

手がそっと背中をなで、肩に回される腕が心地よい重さで、
自分の存在を丸ごと肯定されているようだった。

「……好きだよ。悠真」

「……わたしも……」

夜は、静かに更けていく。

ランジェリー姿のまま、胸元を抱かれながら
桐谷の鼓動を感じて、悠真は目を閉じた。

ただそっと抱きしめられながら、
少しずつ、心の奥にあった不安が溶けていくようだった。
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