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第30章:昼の街と、風に揺れるワンピース
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部屋に戻って、観光に出かける準備を始めた。
今日は街を散歩して、海辺のカフェや土産物店をまわる予定だという。
(じゃあ……ワンピースが、いいのかな)
淡いブルーに白い小花柄の、膝丈のワンピース。
昨日の買い物で梨乃さんと一緒に選んだものだった。
(涼しげで、肩が少し出るくらいのこのデザイン……ちょっとだけ大胆かも)
下着をランジェリーのセットからベージュのシンプルなブラとショーツに変えて、
そっとウエストインナーでラインを整える。
ワンピースをかぶると、裾がふわっと広がり、
鏡の中には、まるでどこにでもいる観光客の女の子のような自分がいた。
「……信じられないな。前は、制服さえ恥ずかしかったのに」
胸元にリップの色をなじませながら、髪を軽く巻いてみる。
ナチュラルなカールが顔の輪郭をやわらげてくれて、少しだけ自信が湧いた。
リップを塗り終えると、桐谷がドアをノックして声をかけた。
「準備、できた?」
「……うん、今出るね」
ロビーで待つ桐谷の前に現れると、
彼の目がふっと見開かれて──すぐに柔らかな笑顔になった。
「すごく、似合ってる。……風に揺れる感じ、すごく綺麗」
「ほんとに……? 変じゃない?」
「まったく。ちょっとデートどころじゃなくなりそうだよ」
街を歩くふたりは、ごく普通のカップルに見えていた。
木陰のベンチでアイスを分け合って食べ、
帽子を選んだり、海辺のアクセサリーを見たり。
(こんなふうに外を歩いてて、あんまり不安を感じない……)
でも──人混みの中で、ふと耳に届く声があった。
「あれ……今の子、男?」
一瞬、背筋が冷たくなる。
思わず立ち止まりそうになる脚を、桐谷がそっと腕を引いて支えてくれた。
「大丈夫。気にしなくていい。……僕には、君がちゃんと女の子に見えてる」
その言葉が、胸の奥でふっと灯をともしたように響いた。
ビーチ近くのカフェでは、
風でワンピースの裾が揺れ、サンダルの細いストラップが足首を飾っていた。
「……ねえ、悠真」
「うん?」
「明日の夜、ちょっとドレスアップして出かけない? 予約してあるんだ、いいレストラン。
ナイトドレスを着た君を、きちんとエスコートしたい」
「……わたし、そんなの、似合うかな……」
「きっと、惚れ直すよ。……一緒に選びに行こうか。今日の夕方」
今日は街を散歩して、海辺のカフェや土産物店をまわる予定だという。
(じゃあ……ワンピースが、いいのかな)
淡いブルーに白い小花柄の、膝丈のワンピース。
昨日の買い物で梨乃さんと一緒に選んだものだった。
(涼しげで、肩が少し出るくらいのこのデザイン……ちょっとだけ大胆かも)
下着をランジェリーのセットからベージュのシンプルなブラとショーツに変えて、
そっとウエストインナーでラインを整える。
ワンピースをかぶると、裾がふわっと広がり、
鏡の中には、まるでどこにでもいる観光客の女の子のような自分がいた。
「……信じられないな。前は、制服さえ恥ずかしかったのに」
胸元にリップの色をなじませながら、髪を軽く巻いてみる。
ナチュラルなカールが顔の輪郭をやわらげてくれて、少しだけ自信が湧いた。
リップを塗り終えると、桐谷がドアをノックして声をかけた。
「準備、できた?」
「……うん、今出るね」
ロビーで待つ桐谷の前に現れると、
彼の目がふっと見開かれて──すぐに柔らかな笑顔になった。
「すごく、似合ってる。……風に揺れる感じ、すごく綺麗」
「ほんとに……? 変じゃない?」
「まったく。ちょっとデートどころじゃなくなりそうだよ」
街を歩くふたりは、ごく普通のカップルに見えていた。
木陰のベンチでアイスを分け合って食べ、
帽子を選んだり、海辺のアクセサリーを見たり。
(こんなふうに外を歩いてて、あんまり不安を感じない……)
でも──人混みの中で、ふと耳に届く声があった。
「あれ……今の子、男?」
一瞬、背筋が冷たくなる。
思わず立ち止まりそうになる脚を、桐谷がそっと腕を引いて支えてくれた。
「大丈夫。気にしなくていい。……僕には、君がちゃんと女の子に見えてる」
その言葉が、胸の奥でふっと灯をともしたように響いた。
ビーチ近くのカフェでは、
風でワンピースの裾が揺れ、サンダルの細いストラップが足首を飾っていた。
「……ねえ、悠真」
「うん?」
「明日の夜、ちょっとドレスアップして出かけない? 予約してあるんだ、いいレストラン。
ナイトドレスを着た君を、きちんとエスコートしたい」
「……わたし、そんなの、似合うかな……」
「きっと、惚れ直すよ。……一緒に選びに行こうか。今日の夕方」
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