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第32章:締められて、整えられていく私
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案内されたエステルームは、柔らかな照明とアロマの香りに包まれていた。
ベージュのタオルに覆われた施術台。
壁際にはキャンドルが灯り、まるで静かな聖域のようだった。
「それでは、お洋服をお脱ぎいただいて、こちらのガウンにお着替えくださいね。
メイクはそのままで構いません。脚やVライン中心の施術になりますから、恥ずかしがらなくて大丈夫ですよ」
エステティシャンの声はとても優しく、まるで何も特別なことではないように微笑んでいた。
ガウンに着替え、そっとベッドに横になると、
あたたかな手が脚に触れ、オイルをなじませていく。
「脚、細くて長いですね。肌も綺麗。
少し保湿しながら、産毛を丁寧に整えていきますね」
すべる指先が、ひざ裏や太ももの内側を優しく撫でるたび、
ゾワッとした感覚とくすぐったさが混ざり、胸の奥がチクリと疼いた。
次はVIO──見られている、でも恥ずかしくない。
手際よく、そっと、配慮に満ちた動きで整えてくれていた。
「はい、すごく綺麗になりました。……ふふ、大丈夫。誰にも気づかれませんよ。
むしろ、完璧なレディだと思われるはずです」
言葉の端々に、まるで“女の子として接してくれている”という実感があった。
それが、嬉しくて、少し切なかった。
施術が終わると、スタッフが鏡の前までエスコートしてくれた。
「お持ちのコルセットを装着なさるということでしたね。お手伝いしてもよろしいですか?」
「……お願いします」
ミラーの前に立つと、彼女はコルセットをそっと手に取り、
広げた状態で背後に立った。
「ウエストを少しずつ締めていきますね。最初は苦しく感じるかもしれませんが、
ドレス姿がぐっと引き締まって見えますよ」
ギュ、ギュッ──
背中を這うレースが徐々に絞られていく。
胸が押し上げられ、腰がくびれていく感覚に、呼吸が浅くなる。
(苦しい……でも、これが“綺麗”になるってことなんだ)
「うん、とっても綺麗。これで、どんなドレスも完璧に着こなせますね」
鏡に映る自分は、
しなやかなカーブを描く身体を手に入れていた。
「大丈夫。あなた、本当に可愛らしいですよ。……彼氏さん、惚れ直しちゃいますね」
そんな風に言われることが、
どうしてこんなに、心をじんわりと温かくするんだろう。
着替えを終え、桐谷が待つロビーへ戻ると、
彼の目がすっと自分の姿をとらえ──そして、微笑んだ。
「……やっぱり、連れてきてよかった。
いまの君、完璧に美しいよ」
嬉しくて、ちょっと照れて、でも──
“女の子として褒められる”ことが、こんなにも胸を満たすなんて、知らなかった。
ベージュのタオルに覆われた施術台。
壁際にはキャンドルが灯り、まるで静かな聖域のようだった。
「それでは、お洋服をお脱ぎいただいて、こちらのガウンにお着替えくださいね。
メイクはそのままで構いません。脚やVライン中心の施術になりますから、恥ずかしがらなくて大丈夫ですよ」
エステティシャンの声はとても優しく、まるで何も特別なことではないように微笑んでいた。
ガウンに着替え、そっとベッドに横になると、
あたたかな手が脚に触れ、オイルをなじませていく。
「脚、細くて長いですね。肌も綺麗。
少し保湿しながら、産毛を丁寧に整えていきますね」
すべる指先が、ひざ裏や太ももの内側を優しく撫でるたび、
ゾワッとした感覚とくすぐったさが混ざり、胸の奥がチクリと疼いた。
次はVIO──見られている、でも恥ずかしくない。
手際よく、そっと、配慮に満ちた動きで整えてくれていた。
「はい、すごく綺麗になりました。……ふふ、大丈夫。誰にも気づかれませんよ。
むしろ、完璧なレディだと思われるはずです」
言葉の端々に、まるで“女の子として接してくれている”という実感があった。
それが、嬉しくて、少し切なかった。
施術が終わると、スタッフが鏡の前までエスコートしてくれた。
「お持ちのコルセットを装着なさるということでしたね。お手伝いしてもよろしいですか?」
「……お願いします」
ミラーの前に立つと、彼女はコルセットをそっと手に取り、
広げた状態で背後に立った。
「ウエストを少しずつ締めていきますね。最初は苦しく感じるかもしれませんが、
ドレス姿がぐっと引き締まって見えますよ」
ギュ、ギュッ──
背中を這うレースが徐々に絞られていく。
胸が押し上げられ、腰がくびれていく感覚に、呼吸が浅くなる。
(苦しい……でも、これが“綺麗”になるってことなんだ)
「うん、とっても綺麗。これで、どんなドレスも完璧に着こなせますね」
鏡に映る自分は、
しなやかなカーブを描く身体を手に入れていた。
「大丈夫。あなた、本当に可愛らしいですよ。……彼氏さん、惚れ直しちゃいますね」
そんな風に言われることが、
どうしてこんなに、心をじんわりと温かくするんだろう。
着替えを終え、桐谷が待つロビーへ戻ると、
彼の目がすっと自分の姿をとらえ──そして、微笑んだ。
「……やっぱり、連れてきてよかった。
いまの君、完璧に美しいよ」
嬉しくて、ちょっと照れて、でも──
“女の子として褒められる”ことが、こんなにも胸を満たすなんて、知らなかった。
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