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第五章:女として街を歩く午後
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「じゃ、ゆうちゃん、行こうか」
午後1時半、優斗は市川に連れられて外出へ。新宿の百貨店に設置する売り場のディスプレイチェックと、競合ブランドの視察という目的だったが、彼にとってはそれ以上に“試練”のような時間だった。
理由は簡単だ。今、彼は完全に“女性の姿”をしている。
ピンクベージュのジャケットに、黒のフレアスカート。胸元には柔らかなラインを作る自社製ブラ、ウエストには薄手のシェイパーコルセット。そして、黒のストッキングと5cmヒールのパンプス。
(電車に乗って、人混みに入って……俺は、女として振る舞えるだろうか)
新宿駅の構内。休日でもないのに人は多く、スーツ姿の男女が行き交っていた。すれ違う人の視線が、自分のスカートの揺れやヒールの音に向いている気がしてならない。
市川は慣れた足取りで進み、階段の上り下りも軽やかだ。それに合わせようとすると、自然と足をそろえて歩かないとスカートがめくれてしまう。
「ね、ゆうちゃん。歩き方、だいぶ板についてきたよ」
「そ、そうですか……ありがとうございます……」
(ほんとは必死なんですけど……!)
ディスプレイチェックの間、市川は彼を“女性社員”としてスタッフに紹介し、説明を促す。優斗は声のトーンをやや高め、ゆっくり話すことを意識する。
(普通に接客されてる……女として)
不思議だった。女装をしているという感覚よりも、「演じている」「見られている」感覚のほうが濃い。
そして、――快感だった。
「次は競合ブランドの売り場ね。あっち」
市川がふいに彼の手首を引いた。細い手。華奢な指。その自分の“女の手”が、女性にリードされるように握られたことに、彼は思わず鼓動を跳ねさせた。
午後1時半、優斗は市川に連れられて外出へ。新宿の百貨店に設置する売り場のディスプレイチェックと、競合ブランドの視察という目的だったが、彼にとってはそれ以上に“試練”のような時間だった。
理由は簡単だ。今、彼は完全に“女性の姿”をしている。
ピンクベージュのジャケットに、黒のフレアスカート。胸元には柔らかなラインを作る自社製ブラ、ウエストには薄手のシェイパーコルセット。そして、黒のストッキングと5cmヒールのパンプス。
(電車に乗って、人混みに入って……俺は、女として振る舞えるだろうか)
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