20 / 41
第二十章:声の調教、女としての響き
しおりを挟む
「まずは、“声帯”の意識から変えていこうか」
音響テスト用の個室ブースに呼び出された陸は、マイクの前に座っていた。隣には優斗。少し離れて、市川と沙織がパネルの向こうで聞いている。
「胸に響かせないで。喉の奥、柔らかく鼻にかけて……そう、“抜く”ように」
「……あ、の……は……はじめまして……」
「もっと優しく。男の口調は“ぶつける”、女の子は“届ける”。空気に乗せて、ふわっと」
「……は、はじめまして……」
少しずつ、音が丸くなる。自分でも驚くほど、高く、震えるような声が出た。
(……え……これ、自分の声……?)
「今の、録音したから聞いてみて」
優斗が再生ボタンを押す。
流れてきたのは、明らかに“女性の声”だった。柔らかく、少し緊張気味で、けれど優しく――どこか艶のある響き。
「……わたし……?」
「うん。“女の子”になれてるよ」
恥ずかしさと、くすぐったさと、ちょっとした達成感が、胸の奥に同時に押し寄せた。
その日の午後:電話応対の実践練習
「はい、お電話ありがとうございます。ラヴィ・シュール、秘書課の朝倉でございます」
ヘッドセットから聞こえる自分の声は、もう「男性社員」ではなかった。
電話の相手が男性だと、自然と声が少し甘くなる自分に気づいて、内心どきりとする。
(……私、今、男の人に“女として”応対してる……)
その事実が、なぜか少し気持ちよかった。
「はい、かしこまりました。失礼いたします……」
切った瞬間、沙織が拍手を送ってくる。
「完璧。声も滑舌も、“女の声”。もう、あの子が男だったって誰も思わない」
「本当……?」
「声ってね、習慣だから。もう戻らないわよ、たぶん。だって、普通の男性の声、今出したら気持ち悪く感じるでしょ?」
「……うん。なんか、喉が拒否するっていうか……」
「じゃあ大丈夫。この声で、女としてのキャリアを積んでいきましょうね」
その夜:接客実習として“男性社員相手”の応対
テスト用に仕組まれた模擬接客。
相手は他部署の男性社員。内容は、ランジェリーの案内を「女として」行うというもの。
「こちらは、今季の新作でして……ウエストラインを柔らかく見せるカッティングが特徴です。実際に私も、今つけているんですけど……」
(え……今、自分で“つけてる”って言った……)
その一言で、相手の視線が一瞬だけ、腰へ落ちた。
スカートの下。今朝、きつく締めたローズカラーのコルセット。その上に合わせたショーツは、うっすら透ける総レース。
(……見えないのに、視線だけで“見られた”気がする……)
ゾクリと、背筋が震えた。
それでも、笑顔は崩さずに――いや、少し艶っぽくなった自分の声で、続けた。
「とっても、フィット感があって……私、これが一番好きなんです」
業務終了後、控え室
優斗が静かに言った。
「今日の接客、完璧だったよ。……もう“男性社員の陸”は、どこにもいなかった」
「……そう、かな……」
「ううん。“君が誰か”じゃなくて、“どう見られるか”で、すべてが決まる。会社も君を、男として扱わなくなるだろうね」
「……それでも、いい」
気づけば、自分の言葉が自然に“女声”になっていた。
下着に包まれた身体も、女として扱われる視線も、全部――受け入れていた。
音響テスト用の個室ブースに呼び出された陸は、マイクの前に座っていた。隣には優斗。少し離れて、市川と沙織がパネルの向こうで聞いている。
「胸に響かせないで。喉の奥、柔らかく鼻にかけて……そう、“抜く”ように」
「……あ、の……は……はじめまして……」
「もっと優しく。男の口調は“ぶつける”、女の子は“届ける”。空気に乗せて、ふわっと」
「……は、はじめまして……」
少しずつ、音が丸くなる。自分でも驚くほど、高く、震えるような声が出た。
(……え……これ、自分の声……?)
「今の、録音したから聞いてみて」
優斗が再生ボタンを押す。
流れてきたのは、明らかに“女性の声”だった。柔らかく、少し緊張気味で、けれど優しく――どこか艶のある響き。
「……わたし……?」
「うん。“女の子”になれてるよ」
恥ずかしさと、くすぐったさと、ちょっとした達成感が、胸の奥に同時に押し寄せた。
その日の午後:電話応対の実践練習
「はい、お電話ありがとうございます。ラヴィ・シュール、秘書課の朝倉でございます」
ヘッドセットから聞こえる自分の声は、もう「男性社員」ではなかった。
電話の相手が男性だと、自然と声が少し甘くなる自分に気づいて、内心どきりとする。
(……私、今、男の人に“女として”応対してる……)
その事実が、なぜか少し気持ちよかった。
「はい、かしこまりました。失礼いたします……」
切った瞬間、沙織が拍手を送ってくる。
「完璧。声も滑舌も、“女の声”。もう、あの子が男だったって誰も思わない」
「本当……?」
「声ってね、習慣だから。もう戻らないわよ、たぶん。だって、普通の男性の声、今出したら気持ち悪く感じるでしょ?」
「……うん。なんか、喉が拒否するっていうか……」
「じゃあ大丈夫。この声で、女としてのキャリアを積んでいきましょうね」
その夜:接客実習として“男性社員相手”の応対
テスト用に仕組まれた模擬接客。
相手は他部署の男性社員。内容は、ランジェリーの案内を「女として」行うというもの。
「こちらは、今季の新作でして……ウエストラインを柔らかく見せるカッティングが特徴です。実際に私も、今つけているんですけど……」
(え……今、自分で“つけてる”って言った……)
その一言で、相手の視線が一瞬だけ、腰へ落ちた。
スカートの下。今朝、きつく締めたローズカラーのコルセット。その上に合わせたショーツは、うっすら透ける総レース。
(……見えないのに、視線だけで“見られた”気がする……)
ゾクリと、背筋が震えた。
それでも、笑顔は崩さずに――いや、少し艶っぽくなった自分の声で、続けた。
「とっても、フィット感があって……私、これが一番好きなんです」
業務終了後、控え室
優斗が静かに言った。
「今日の接客、完璧だったよ。……もう“男性社員の陸”は、どこにもいなかった」
「……そう、かな……」
「ううん。“君が誰か”じゃなくて、“どう見られるか”で、すべてが決まる。会社も君を、男として扱わなくなるだろうね」
「……それでも、いい」
気づけば、自分の言葉が自然に“女声”になっていた。
下着に包まれた身体も、女として扱われる視線も、全部――受け入れていた。
1
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる