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第二十章:声の調教、女としての響き
「まずは、“声帯”の意識から変えていこうか」
音響テスト用の個室ブースに呼び出された陸は、マイクの前に座っていた。隣には優斗。少し離れて、市川と沙織がパネルの向こうで聞いている。
「胸に響かせないで。喉の奥、柔らかく鼻にかけて……そう、“抜く”ように」
「……あ、の……は……はじめまして……」
「もっと優しく。男の口調は“ぶつける”、女の子は“届ける”。空気に乗せて、ふわっと」
「……は、はじめまして……」
少しずつ、音が丸くなる。自分でも驚くほど、高く、震えるような声が出た。
(……え……これ、自分の声……?)
「今の、録音したから聞いてみて」
優斗が再生ボタンを押す。
流れてきたのは、明らかに“女性の声”だった。柔らかく、少し緊張気味で、けれど優しく――どこか艶のある響き。
「……わたし……?」
「うん。“女の子”になれてるよ」
恥ずかしさと、くすぐったさと、ちょっとした達成感が、胸の奥に同時に押し寄せた。
その日の午後:電話応対の実践練習
「はい、お電話ありがとうございます。ラヴィ・シュール、秘書課の朝倉でございます」
ヘッドセットから聞こえる自分の声は、もう「男性社員」ではなかった。
電話の相手が男性だと、自然と声が少し甘くなる自分に気づいて、内心どきりとする。
(……私、今、男の人に“女として”応対してる……)
その事実が、なぜか少し気持ちよかった。
「はい、かしこまりました。失礼いたします……」
切った瞬間、沙織が拍手を送ってくる。
「完璧。声も滑舌も、“女の声”。もう、あの子が男だったって誰も思わない」
「本当……?」
「声ってね、習慣だから。もう戻らないわよ、たぶん。だって、普通の男性の声、今出したら気持ち悪く感じるでしょ?」
「……うん。なんか、喉が拒否するっていうか……」
「じゃあ大丈夫。この声で、女としてのキャリアを積んでいきましょうね」
その夜:接客実習として“男性社員相手”の応対
テスト用に仕組まれた模擬接客。
相手は他部署の男性社員。内容は、ランジェリーの案内を「女として」行うというもの。
「こちらは、今季の新作でして……ウエストラインを柔らかく見せるカッティングが特徴です。実際に私も、今つけているんですけど……」
(え……今、自分で“つけてる”って言った……)
その一言で、相手の視線が一瞬だけ、腰へ落ちた。
スカートの下。今朝、きつく締めたローズカラーのコルセット。その上に合わせたショーツは、うっすら透ける総レース。
(……見えないのに、視線だけで“見られた”気がする……)
ゾクリと、背筋が震えた。
それでも、笑顔は崩さずに――いや、少し艶っぽくなった自分の声で、続けた。
「とっても、フィット感があって……私、これが一番好きなんです」
業務終了後、控え室
優斗が静かに言った。
「今日の接客、完璧だったよ。……もう“男性社員の陸”は、どこにもいなかった」
「……そう、かな……」
「ううん。“君が誰か”じゃなくて、“どう見られるか”で、すべてが決まる。会社も君を、男として扱わなくなるだろうね」
「……それでも、いい」
気づけば、自分の言葉が自然に“女声”になっていた。
下着に包まれた身体も、女として扱われる視線も、全部――受け入れていた。
音響テスト用の個室ブースに呼び出された陸は、マイクの前に座っていた。隣には優斗。少し離れて、市川と沙織がパネルの向こうで聞いている。
「胸に響かせないで。喉の奥、柔らかく鼻にかけて……そう、“抜く”ように」
「……あ、の……は……はじめまして……」
「もっと優しく。男の口調は“ぶつける”、女の子は“届ける”。空気に乗せて、ふわっと」
「……は、はじめまして……」
少しずつ、音が丸くなる。自分でも驚くほど、高く、震えるような声が出た。
(……え……これ、自分の声……?)
「今の、録音したから聞いてみて」
優斗が再生ボタンを押す。
流れてきたのは、明らかに“女性の声”だった。柔らかく、少し緊張気味で、けれど優しく――どこか艶のある響き。
「……わたし……?」
「うん。“女の子”になれてるよ」
恥ずかしさと、くすぐったさと、ちょっとした達成感が、胸の奥に同時に押し寄せた。
その日の午後:電話応対の実践練習
「はい、お電話ありがとうございます。ラヴィ・シュール、秘書課の朝倉でございます」
ヘッドセットから聞こえる自分の声は、もう「男性社員」ではなかった。
電話の相手が男性だと、自然と声が少し甘くなる自分に気づいて、内心どきりとする。
(……私、今、男の人に“女として”応対してる……)
その事実が、なぜか少し気持ちよかった。
「はい、かしこまりました。失礼いたします……」
切った瞬間、沙織が拍手を送ってくる。
「完璧。声も滑舌も、“女の声”。もう、あの子が男だったって誰も思わない」
「本当……?」
「声ってね、習慣だから。もう戻らないわよ、たぶん。だって、普通の男性の声、今出したら気持ち悪く感じるでしょ?」
「……うん。なんか、喉が拒否するっていうか……」
「じゃあ大丈夫。この声で、女としてのキャリアを積んでいきましょうね」
その夜:接客実習として“男性社員相手”の応対
テスト用に仕組まれた模擬接客。
相手は他部署の男性社員。内容は、ランジェリーの案内を「女として」行うというもの。
「こちらは、今季の新作でして……ウエストラインを柔らかく見せるカッティングが特徴です。実際に私も、今つけているんですけど……」
(え……今、自分で“つけてる”って言った……)
その一言で、相手の視線が一瞬だけ、腰へ落ちた。
スカートの下。今朝、きつく締めたローズカラーのコルセット。その上に合わせたショーツは、うっすら透ける総レース。
(……見えないのに、視線だけで“見られた”気がする……)
ゾクリと、背筋が震えた。
それでも、笑顔は崩さずに――いや、少し艶っぽくなった自分の声で、続けた。
「とっても、フィット感があって……私、これが一番好きなんです」
業務終了後、控え室
優斗が静かに言った。
「今日の接客、完璧だったよ。……もう“男性社員の陸”は、どこにもいなかった」
「……そう、かな……」
「ううん。“君が誰か”じゃなくて、“どう見られるか”で、すべてが決まる。会社も君を、男として扱わなくなるだろうね」
「……それでも、いい」
気づけば、自分の言葉が自然に“女声”になっていた。
下着に包まれた身体も、女として扱われる視線も、全部――受け入れていた。
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