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第7部:新しい春に、もう一人の“僕”
第13話:女の子のまま、街へ ― 鍵は、もう戻せない ―
バイトが終わったロッカールーム。
ワンピースの裾を整えていると、鏡の前で髪を整えていた真帆さんが、ふと振り向いて言った。
「柊ちゃん、今から時間ある? 久しぶりに、エステ行こうかなって思って」
「……え?」
急な誘いに、思わず声が裏返る。
「うん、予約いれてあるの。よかったら一緒にどう? メイクそのままで平気そうだし」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
でも――このまま街を歩くこと、そのままエステで“扱われる”こと。
思い出すのは、なおさんと過ごした時間。
「……行きたい、です」
自分で答えながら、鼓動が跳ねた。
◆ ◆ ◆
帽子を深めにかぶり、ショールで肩を覆う。
真帆さんの後ろをついて歩きながら、ヒールの音がアスファルトに響く。
街灯の下、通りすがる人たちの視線が怖くて、でもそのスリルに高揚している自分がいる。
「大丈夫。堂々としてれば、誰も何も言わないよ」
真帆さんが笑ってくれる。
それだけで、歩く足取りが少しだけ軽くなる。
◆ ◆ ◆
エステサロンの受付を済ませると、それぞれ別の施術室へ案内された。
個室に入ると、スタッフの女性がにこやかに言う。
「下着だけになって、お待ちくださいね」
ドアが閉まる。静かになる空間。
柊は、ゆっくりとショールとワンピースを脱ぎ、ブラとショーツ、そして……その下にある装備の存在を意識する。
(……あ)
冷や汗がにじんだ。
コルセットは着替えるときに外せる。
でも、その奥――貞操具。
鍵は……なおさんが預かったまま。
「……しまった……」
スタッフが戻ってくる前に何とか……と思ったが、どうすることもできない。
ノックの音。
「失礼しますね」
スタッフの女性は、柊の身体を一瞥して、穏やかな笑みのまま施術を始めた。
(気づかれた? いや……でも……)
何も言わず、静かに、優しく。
指先がオイルをのばして、太もも、腰、下腹部へと触れていく。
そのすぐ近くに、“それ”がある。
でも――触れそうで触れない。
その絶妙な距離が、むしろ“分かっている”と告げているようで、柊の身体はどんどん熱を帯びていく。
「お肌、とてもきれいに整えてますね。今は、剃ってらっしゃるんですか?」
「……はい」
「でしたら、次はぜひ脱毛も検討してみてくださいね。すごく楽になりますよ」
(……脱毛)
それは、“長く続ける”人が選ぶ方法。
一瞬、その言葉にどこか心がざわめいた。
(私……続ける、のかな)
◆ ◆ ◆
帰り道。
ふくらはぎを撫でる夜風が、オイルの残り香とともに心地よい。
「どうだった? 気持ちよかった?」
真帆さんの問いに、柊は思わず頷く。
「……はい。変な感じもしたけど……でも、すごく、気持ちよかったです」
「ふふ、クセになるよ」
笑いながら歩く真帆さん。
そして、下着の奥――まだ外せていない“それ”の存在。
もう、自分では自由にならない身体。
でも、それがなぜか、安心だった。
鍵は、いまもなおさんの手の中。
それが、少しだけ嬉しかった。
ワンピースの裾を整えていると、鏡の前で髪を整えていた真帆さんが、ふと振り向いて言った。
「柊ちゃん、今から時間ある? 久しぶりに、エステ行こうかなって思って」
「……え?」
急な誘いに、思わず声が裏返る。
「うん、予約いれてあるの。よかったら一緒にどう? メイクそのままで平気そうだし」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
でも――このまま街を歩くこと、そのままエステで“扱われる”こと。
思い出すのは、なおさんと過ごした時間。
「……行きたい、です」
自分で答えながら、鼓動が跳ねた。
◆ ◆ ◆
帽子を深めにかぶり、ショールで肩を覆う。
真帆さんの後ろをついて歩きながら、ヒールの音がアスファルトに響く。
街灯の下、通りすがる人たちの視線が怖くて、でもそのスリルに高揚している自分がいる。
「大丈夫。堂々としてれば、誰も何も言わないよ」
真帆さんが笑ってくれる。
それだけで、歩く足取りが少しだけ軽くなる。
◆ ◆ ◆
エステサロンの受付を済ませると、それぞれ別の施術室へ案内された。
個室に入ると、スタッフの女性がにこやかに言う。
「下着だけになって、お待ちくださいね」
ドアが閉まる。静かになる空間。
柊は、ゆっくりとショールとワンピースを脱ぎ、ブラとショーツ、そして……その下にある装備の存在を意識する。
(……あ)
冷や汗がにじんだ。
コルセットは着替えるときに外せる。
でも、その奥――貞操具。
鍵は……なおさんが預かったまま。
「……しまった……」
スタッフが戻ってくる前に何とか……と思ったが、どうすることもできない。
ノックの音。
「失礼しますね」
スタッフの女性は、柊の身体を一瞥して、穏やかな笑みのまま施術を始めた。
(気づかれた? いや……でも……)
何も言わず、静かに、優しく。
指先がオイルをのばして、太もも、腰、下腹部へと触れていく。
そのすぐ近くに、“それ”がある。
でも――触れそうで触れない。
その絶妙な距離が、むしろ“分かっている”と告げているようで、柊の身体はどんどん熱を帯びていく。
「お肌、とてもきれいに整えてますね。今は、剃ってらっしゃるんですか?」
「……はい」
「でしたら、次はぜひ脱毛も検討してみてくださいね。すごく楽になりますよ」
(……脱毛)
それは、“長く続ける”人が選ぶ方法。
一瞬、その言葉にどこか心がざわめいた。
(私……続ける、のかな)
◆ ◆ ◆
帰り道。
ふくらはぎを撫でる夜風が、オイルの残り香とともに心地よい。
「どうだった? 気持ちよかった?」
真帆さんの問いに、柊は思わず頷く。
「……はい。変な感じもしたけど……でも、すごく、気持ちよかったです」
「ふふ、クセになるよ」
笑いながら歩く真帆さん。
そして、下着の奥――まだ外せていない“それ”の存在。
もう、自分では自由にならない身体。
でも、それがなぜか、安心だった。
鍵は、いまもなおさんの手の中。
それが、少しだけ嬉しかった。
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