1 / 2
雨の日
しおりを挟む
今日は朝からずっと雨だ。梅雨だからっていうのもあるんだろうけど、やっぱり雨は苦手だ。
放課後になり、いつも一緒にいる友だちと昇降口で別れて、僕は一人空を見上げた。暗くて重い空が山の奥まで続いていて、一向に止む気配がなかった。
僕も帰ろうと傘立てを探すけど、そこにあるはずの傘がなかった。きっと誰かが間違えてもって帰ったんだろうと思い、仕方なくバックを傘がわりに昇降口を出る。でもバックにも限界があるようで、すぐに服は濡れて靴の中もびしょびしょだ。唯一髪だけは濡れなかったけど、こんなに濡れていたら意味もない。
小走りでバス停に逃げ込み、カバンの水を払い落とした。
雨が止むのを待とうにも、ずっとここにいては風を引いてしまう。バス停のベンチに座り、車道の方を眺めた。同じ傘に入って帰る男女や、僕のように傘がなくて走る男子が反対側の歩道を走っている。
あんまり長居するのも良くないからと立ち上がる。
「あれ、聡くん?」
その声に振り返ると、そこには同級生の小柳さんが傘を差して立っていた。黒くながい髪に、やっぱり猫みたいなつぶらな瞳。でもちょっと遠くをみているようで、いつも不思議だ。
僕と小柳さんは幼稚園から一緒で高校も同じ、家も近いしクラスでもよく話す。こういうのを幼馴染っていうのかなって、時々考える。
「家近いのにバスで帰るの?」
不思議そうに首を傾けてこちらを見つめる。
「そうじゃなくて、僕の傘を誰かが間違えちゃったみたいで、ここで少し雨宿りしてたんだ」
そう言って頭をかく。
「私の傘、入る……?」
唐突にそんなことを言い出す小柳さんの顔は至って真面目で、いつもと変わらない目をしている。でもずっと一緒にいる僕にはわかるんだ。小柳さんが笑っていることを。クラスの友達には、「なんで分かるんだ……?」と不思議がられるけれど、わからないほうがおかしいと思う。
僕はそのお誘いを受けようとしたけど、真剣に考えてみたらこれは”相合い傘”になると気づいた。そんなことで僕が迷っていると、小柳さんが小さな口を開いた。
「もしかして、嫌……?」
「え、あ、いやそうじゃなくて……!」
悲しげな顔で見つめる小柳さんには勝てなくて、結局傘に入れてもらうことになった。
けど、
「あ、」
たまたま吹いた強風が小柳さんの傘をさらって、どこか遠くへ飛んでいく。
「どうしよう……」
あわあわと慌てる小柳さんだったけど、すぐ冷静さを取り戻して僕の横に座った。
「聡くん、こうなったら家まで走るしか無いよ……」
「ええ……」
そう言われてもこのバス停から家まで1キロはあるから、体力が無い僕には無理なことだ。
「よし……!」
なにかを決意した小柳さんは、勢いよく立ち上がった。
「負けたほうがジュース奢るね。よーい……どん……!」
僕の意見も聞かないで、小柳さんは雨の中に飛びこんだ。
「それはずるいよ!」
僕もその背中を追うように雨の中へと飛び込む。
服が濡れて体にへばりつくけど、走るときの暑さと雨の冷たさがいい塩梅で、不快には感じなかった。
別に濡れたっていっか。
雨の中を走るのも案外気持ちよくて、無意識のうちにそう思ってしまう。
放課後になり、いつも一緒にいる友だちと昇降口で別れて、僕は一人空を見上げた。暗くて重い空が山の奥まで続いていて、一向に止む気配がなかった。
僕も帰ろうと傘立てを探すけど、そこにあるはずの傘がなかった。きっと誰かが間違えてもって帰ったんだろうと思い、仕方なくバックを傘がわりに昇降口を出る。でもバックにも限界があるようで、すぐに服は濡れて靴の中もびしょびしょだ。唯一髪だけは濡れなかったけど、こんなに濡れていたら意味もない。
小走りでバス停に逃げ込み、カバンの水を払い落とした。
雨が止むのを待とうにも、ずっとここにいては風を引いてしまう。バス停のベンチに座り、車道の方を眺めた。同じ傘に入って帰る男女や、僕のように傘がなくて走る男子が反対側の歩道を走っている。
あんまり長居するのも良くないからと立ち上がる。
「あれ、聡くん?」
その声に振り返ると、そこには同級生の小柳さんが傘を差して立っていた。黒くながい髪に、やっぱり猫みたいなつぶらな瞳。でもちょっと遠くをみているようで、いつも不思議だ。
僕と小柳さんは幼稚園から一緒で高校も同じ、家も近いしクラスでもよく話す。こういうのを幼馴染っていうのかなって、時々考える。
「家近いのにバスで帰るの?」
不思議そうに首を傾けてこちらを見つめる。
「そうじゃなくて、僕の傘を誰かが間違えちゃったみたいで、ここで少し雨宿りしてたんだ」
そう言って頭をかく。
「私の傘、入る……?」
唐突にそんなことを言い出す小柳さんの顔は至って真面目で、いつもと変わらない目をしている。でもずっと一緒にいる僕にはわかるんだ。小柳さんが笑っていることを。クラスの友達には、「なんで分かるんだ……?」と不思議がられるけれど、わからないほうがおかしいと思う。
僕はそのお誘いを受けようとしたけど、真剣に考えてみたらこれは”相合い傘”になると気づいた。そんなことで僕が迷っていると、小柳さんが小さな口を開いた。
「もしかして、嫌……?」
「え、あ、いやそうじゃなくて……!」
悲しげな顔で見つめる小柳さんには勝てなくて、結局傘に入れてもらうことになった。
けど、
「あ、」
たまたま吹いた強風が小柳さんの傘をさらって、どこか遠くへ飛んでいく。
「どうしよう……」
あわあわと慌てる小柳さんだったけど、すぐ冷静さを取り戻して僕の横に座った。
「聡くん、こうなったら家まで走るしか無いよ……」
「ええ……」
そう言われてもこのバス停から家まで1キロはあるから、体力が無い僕には無理なことだ。
「よし……!」
なにかを決意した小柳さんは、勢いよく立ち上がった。
「負けたほうがジュース奢るね。よーい……どん……!」
僕の意見も聞かないで、小柳さんは雨の中に飛びこんだ。
「それはずるいよ!」
僕もその背中を追うように雨の中へと飛び込む。
服が濡れて体にへばりつくけど、走るときの暑さと雨の冷たさがいい塩梅で、不快には感じなかった。
別に濡れたっていっか。
雨の中を走るのも案外気持ちよくて、無意識のうちにそう思ってしまう。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる