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一章「王都動乱~紅蓮の正義~」
一章 第十一話「颶風のミルドレッド」
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迫りくる三体の魔人を間一髪のところで退けたエルキュールたちを狙ってきた、豪奢な薄緑のドレスに身を包んだ長身の女性。
その口から発せられた恐ろしい肩書に、エルキュールは内心焦りを感じていた。
アマルティア幹部。つまりはザラームと肩を並べるほどの力を持った魔人。ここ一帯で起こった異常事態を説明づけるにはこの上ないほどの分かりやすい人物ではあるが、そんな論理的な整合性に喜ぶほど余裕のある状況ではない。
魔獣の群れに、騎士が汚染されて生まれた魔人。戦闘の連続によってただでさえ消耗しているというのに、その上アマルティア幹部とも対峙することになろうとは。
強力な魔術師であるジェナは不意を突かれて倒れてしまった。この場に帰ってきていない以上、やはり気絶している可能性が高い。
何としてでも、エルキュールは一人でこの場を切り抜けなければならなかった。
「アマルティア、か……まさかこんな所で遭遇するとは。先日の演説の通り、表立っての行動に移ったということか」
相対するミルドレッドは不意に攻撃した時とは打って変わって、今のところ動く素振りが見られない。ならば、こちらから下手に行動する必要はないだろう。当たり障りのない会話で時間を稼ぎ、自身の体力を回復し、あわよくばジェナの復活を待つ。
この窮地を脱するにはそれしか考えられなかった。
「ひひひ……惚けちゃって、まあ……言ったでしょう? ザラームから聞いていると。魔人であるというのに、人間に与する変人ですって! 貴方とザラームが既に接触していることなど分かりきっていますのよ?」
「……だとしたら、俺が今ここにいることに説明がつかないはずだ。俺はお前らの敵だ。自分たちに仇なすものを排除するのがお前らのやり方だろう?」
あくまで断定することを避け、皮肉を込めて返す。他のイブリスとは異なり、ミルドレッドもザラームと同じくある程度会話に応じてくれるようだ。
ならば、少しでもアマルティアに関する情報を手に入れられるように事を進めるべきだ。
「あら、なんて悲しいことを……でも、貴方が何をしようとワタクシたちは止まらなくってよ。今はそれより恐れるべきものが――」
ミルドレッドの視線がややエルキュールから外れ、それまで浮かべていた笑みが消失する。が、その意図を測りかねるうちに再び同様の薄ら笑いに戻ってしまう。
「――とにかく、貴方が彼のエルキュール・ラングレーであることは間違いなく、この場での邂逅もきっと主の導きによるもの! さあ、迷える魔人さん! 無駄な足掻きなど止めて、ワタクシたちアマルティアと共に反逆の道を行きましょう!」
両手を高く広げ、賛美歌でも歌うような調子で高らかに告げるミルドレッド。やはり彼女も、エルキュールを引き入れるつもりのようだ。
日をそれほど跨がないうちに受ける二度目のアプローチ。流石に嫌気がさしたが、それと同時に新たな発見もあった。
アマルティアは、少なくともこのミルドレッドは、エルキュールのことを大した脅威と思っていないこと。今のところアマルティアにとって、エルキュールという魔人はただの仲間候補であり、人間の世界に生きる変わり者だと評価されているようだ。
次に彼女が口にした「主」という存在。実在するものか、はたまた概念上のものか。どちらにせよ、アマルティアという組織に関わる新たな手がかりに思える。
そして、最後に彼女たちが恐れているという存在。思えばザラームの去り際も、この件と同様に考えられるのではなかろうか。
彼は仲間から「王都の件」について聞き、エルキュールを解放しヌールの街を後にした。王都とアマルティアに何かの関係があるとは踏んでいたが、もしも彼らが恐れるべきものが王都にあるのだと考えれば、エルキュールよりもその件を優先したザラームの行動にも頷ける。
王都には王国騎士団本部をはじめ、魔物がらみの案件に対処する機関・デュランダル、今朝の騎士隊の詰所でも話題なったブラッドフォード家の存在もある。これだけの要素があるならば、相応に注意を払うのも必然であろう。
「お前たちの仲間にはならない。これは変わらない俺の意志だ……理解できたのならとっととお引き取り願おうか。もちろんアルトニーの街を襲わせたりもしない」
これだけの情報を貰えるとは思ってもみなかった。これ以上を求めてしまえば、どんな危険が生じるか想像もつかない。
エルキュールは己の不利を省みて、この得体の知れない女との話を切り上げ、この場から彼女を撤退させようと試みた。
我が身を思っての事だけではない。彼女の目的は不明だが、またヌールの件のような惨劇を繰り返させるわけにはいかなかった。
エルキュールは毅然とした態度を崩さぬまま言い放った。
しかし、下手に相手の思い通りに従うことの抵抗を強く示したからか、それまで喜色の笑みを浮かべていたミルドレッドの貌が、不意に苛立たしげに歪んだ。魔人とはいえ、彼女の容貌がほぼ人間と変わらないほど精巧なものだったため、彼女の反感は容易にエルキュールへと伝播した。
「……あぁ、ああ……気に入りませんわね……その反抗的な目つき、態度、姿勢……どうしてそのような物言いをなさるのでしょう。ワタクシ、己の分を心得ない殿方はあまり得意ではありませんの。だって、こちらは善意で申し上げていますのに……少しは酷いとは思いませんこと?」
歌うような流暢で大袈裟な話しぶりは崩れない。しかし、その声には確かに暗いものが混じっており、エルキュールは自らの落ち度を呪った。この場を穏便に収めるなら、アマルティアに対する敵愾心を極力見せないことは必須だったというのに。
「せっかくの同朋に傷は付けたくないのですけど。その生意気な態度……少しは矯正して差し上げるのも同族の務めでしょうか?」
瞬間、ミルドレッドの周囲に風の魔素の奔流が生じる。同時にそれまでは巧妙に隠されていた魔素質とコアの輝きが、彼女の厚手のドレス越しからでも見て取れるようになるまで強くなる。
その光は深緑――先ほど対峙した魔人のものとそっくり一緒であった。リーベから生まれるイブリスは汚染された対象と同じ属性を持つ。故に魔素質から発せられる光も似ている。
やはり、騎士を汚染した元凶は目の前のミルドレッドその人らしい。
半ば予想していた通りの事実だったが、今はそれについて考える暇もない。こちらが同種であるからミルドレッドも穏便に接してきていたというのに、むざむざとその有利を放棄してしまった。
「それにですね? これから来るべき闘争……鈍ってしまった身体では少々不安だと思っていましたの。ねぇ……? 仲間にならないというのなら、せめてワタクシの余興に付き合ってください、なっ――!」
藪蛇とはこのことだろう。迂闊に踏み込み、無用な闘争心に火をつけてしまったのだから。
だがそんな反省をする間もなく、ミルドレッドは己の周りに纏わせていた風の魔素を掌に集約させ、球状に圧縮しエルキュールの方へと放り投げた。
風の初級魔法、エアシュート。魔法を学び始めたばかりものでも習得できる魔法の一つだが、ミルドレッドが放ったものはそれとは比にならない威力を有していた。
こうなってしまってはどうしようもないと、エルキュールは横に飛んで放たれた風の弾丸を躱す。
球体が直撃するのは避けたはずだが、その球の周辺には小規模の風の奔流が渦巻いていたようで、その風の刃とも形容すべき風が直撃を免れたエルキュールの半身に襲いかかった。
「っ――!」
こういった魔法による攻撃はハルバードで防御するよりもオーラを用いた方がいいのだが、咄嗟の事だったのでエルキュールであっても僅かにその判断は遅れてしまった。
風刃が着ていた外套の一部が裂き、エルキュールの頬にも傷をつけた。頬の傷口からは血の代わりに魔素質が漏れ出た。
外見は魔素を巧みに操ることで、通常の人間のような血色のいい肌に見せることに成功しているが、その内側まで同じように手を加えることは今のエルキュールには不可能であった。
万が一肌に傷がつかないよう、普段から厚手の服装に身を包み、手袋も装着することで肌を露出させないように気を遣っていたのだが、ここに来てぼろが出てしまった。
エルキュールは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、幸いここにいるのは魔人だけであり、ジェナも気を失っている。今はその不覚を省みる時ではない。
そう短く結論付け、エルキュールは目の前の相手に集中することに決めた。
「なかなか良い動きですこと。しかし……これも同じように躱せるかしら!」
もちろん掠り傷を負わせた程度で攻撃の手を緩めるつもりなどないのだろう、ミルドレッドは続けざまに風の魔素を手繰る。
手を上空に掲げ、そこを中心にして風が流れ込んでゆく。次第にその風は姿を変え、槍のように細長い形を形成し始める。
出会い頭に放たれた魔法だと、すぐに理解したエルキュール。が、受け身になってばかりでは埒が明かない。分が悪いとはいえ、早々に終わらせるためにはこちらから仕掛ける必要がある。
あの魔法の攻撃範囲は二度放たれた今となっては見切っている。エルキュールは姿勢を低く、ミルドレッド目がけて駆けた。
間髪入れず放たれる風の槍。正面から迫りくる風の塊の下側を滑り込むように回避する。
「まぁ……!」
見たところミルドレッドに得物の類は見られない。ならば魔法の射程を活かしづらい近距離戦に持ち込んだ方が、まだ勝ちの目を拾えるだろう。
もちろんこの場で倒せると思いあがってはいけない。だだ下手の動きをするだけの気勢を削ぎ、一刻も早くこの場から退けさせること。それが今のエルキュールにできる全てだ。
寝そべるような体勢から一転、上体を起こして反撃の構えをとる。ハルバードを前方に、ミルドレッドの胸部を目がけて刃を向ける。魔人なら誰しもそこにコアが刻まれている。そこに傷をつければ、彼女もこれ以上無茶はできないだろう。
「――甘いですわよ」
とはいえ、現実はそう上手くいかなかった。ミルドレッドは懐にもぐりこまれたことに寸分の焦りも見せず、驚くべき速さで魔素を操る。
それは瞬く間に短剣なようなものを形成し、その華奢の腕で以てエルキュールの渾身の一撃を難なく防いだ。
「なに……!?」
あり得ない。率直にそう思った。あれほど一瞬の合間に、エルキュールの斬撃を受け止めるだけの強度を持った短剣を生み出すことなど、並大抵の使い手――ひょっとするとジェナのような魔術師であっても中々できない芸当だ。
六属性全てをその内に擁する物質は、魔素質に比べて存在が安定しており、頑丈である。同じ質量の場合でも、その両者がぶつかり合えば大抵は魔素質の方が砕け散るはずだ。
だからこそ、まるで玩具のような短剣で攻撃を防がれたことが理解できなかった。疑念と焦燥に駆られ、エルキュールは拮抗して動かなくなっているハルバードの穂先を強引に押し込んだ。
「ひひひ、案外強情な方みたいですわね。そんなに力任せにしても無駄ですわよ!」
それでも切っ先をミルドレッドの胸部に当てるどころか、受け止められた刃を動かすことすらできない。
一方、それを見て笑うミルドレッドはまるで嘲けるかのように容易く、エルキュールの身体をその短剣で押し返した。
決死の思いで詰めた間合いが元通りになる。が、それを悔やむ間もなく、今度はミルドレッドが攻勢をかけてきた。
「く……どういう……」
「ああ、そんな顔なさらず。ワタクシ、他と比べて少しばかり魔素感覚が強すぎるみたいですの……ですから、これくらいのことなら造作もないのですのよ?」
辛うじて避け続けるエルキュールの困惑に、攻撃の手を緩めぬままにミルドレッドは丁寧に説いた。
魔素感覚。魔素を感知し、操る能力。魔素を使う技術全般に必須な基礎の基礎だが、それも極まれば一つの武器となるということなのだろう。
堅固な鉄の刃を魔素質の塊で制することができる程度には。
確かに彼女の風魔法の威力や回転数、普段から抑えているエルキュールの魔人としての力を見抜いたことを考えると、その言葉にはこの上ない納得感がある。
しかし、種が割れても、依然として彼我の実力差は健在である。ミルドレッドの風の剣による猛攻に、徐々に押され始めていた。
彼女の得物はエルキュールのものよりも強力なうえ、小ぶりで手数も多い。間合いを詰められた今の状況では、反撃する暇もなかった。
「そこっ――!」
消耗の激しいハルバードで防ぐのを躊躇い、無理に躱したところに足払いをかけられる。一瞬宙に浮くその身体を地面に叩きつけると、すかさず胸元に短剣が押し当てられる。
ドレスとヒールを身につけているとは思えない圧倒的な体術に、エルキュールは為す術なく打ち負かされてしまった。
「……呆気ない、もう終わりですの?」
相手を撤退させるどころか一撃も与えられぬまま天を仰ぐエルキュールに、底冷えするような低い言葉がかけられる。それまでの朗らかな声色は消え失せ、侮蔑すら感じられる調子であった。
服越しにコアに刃を突き立てられているため下手なこともいえず、エルキュールはただただ悔しげに唇を引き結んだ。
「これでは話に聞いていたのと丸きり違いますわ。ザラームはなぜこんなのを熱心に捜し求めていたのかしら……?」
何を苛立っているのか、ミルドレッドは地面に放られていたエルキュールの腕を踵で踏んずけると、持ち前の鋭利な眼差しで彼を嬲る。
容赦ない振る舞いの彼女であるが、一つ思い当たることがあったようで、その瞳がふっと細められる。
「ふむ……まさかとは思いますけど。貴方、本気を出していない……なんてことありませんわよねぇ……?」
「……!」
決して何も言うまいと、声は抑えたつもりであるが、動揺の色を見せる瞳までは誤魔化せなかった。
その雄弁な沈黙に、それまで保っていた厳かな緊張を解いたミルドレッドは凄絶な笑みを浮かべた。
「ああ、そうですか……そうなのですか……! なるほど、それだけの知性を持った魔人であるのに、この不甲斐なさは奇妙だと思っていましたが……そういうことですの」
胸部に突きつけられていた刃はそのままに、ミルドレッドは納得したように呟く。それから押さえつけられているエルキュールに顔を近づけ、その瞳を覗き込んできた。
まるで心の奥を見透かさんとするその眼に、エルキュールは思わず視線を逸らす。
「恐れ、でしょうか? 貴方の根底にあるのは。貴方を閉じ込めてしまっているものは」
「…………」
「なんとまあ勿体ない。確かに、愚かな人間どもが支配するこの世界、彼らの目を欺くために彼らと同じ姿を模倣するのは分かりますわ。我らを駆逐せんとするその目に留まり、たかられるのも億劫でしょうし。ただ……その力すべてを封じる必要など、つゆにもありませんのに」
すべてを封じる必要はない、それは反逆者の考えだ。敷かれた秩序に真っ向から歯向かう者にしか通用しない。
魔人として生まれた以上、この世界で穏便に暮らすためには避けられない犠牲もあるのだ。
が、どうしてかその思いを声に乗せることができず、ミルドレッドの言葉のみが粛々と紡がれる。
「ほら、こんなか弱い乙女による拘束など、貴方が魔人としての能力を存分に振るえば簡単に跳ね除けられるでしょう? そうして、もっとワタクシと遊んでくださいな。楽しませてください、誘いを断ったのですから。それとも……貴方にできないというなら代わりの者に務めてもらった方がいいでしょうか?」
言うてミルドレッドが示した先は、エルキュールたちがやって来た方角。即ち、アルトニーがある方角だった。
彼女が言いたいのはエルキュールが魔人の力を解放しないのなら、アルトニーの街を襲うということだろう。
明確な脅し文句に、エルキュールの表情はいっそう強張る。
これまでの彼女の話しぶりから、この森にいた直接の目的はエルキュールでもアルトニーでもなかったはずである。エルキュールとここで会ったのは単なる偶然で、アルトニーを襲うつもりならとっくに実行に移しているはずだ。
だから、これは単なる脅しに過ぎない。過ぎないはずなのだが、今エルキュールにはそうと断定することはできなかった。ミルドレッドの言には、そんな推測をも掻き消してしまう凄味があった。
「いいんですの? 貴方、ヌールでも同じことをしたのかしら。恐れて、行動を起こさず、指を加えて見ているだけ――」
そうだ。このままでは、アルトニーの未来もヌールと同じ道を辿る。それは避けなくてはならない。
そのためには力を。押さえつけている力を。解放しなくては。ザラームに敗れたとき、悟ったはずだ。もう自分に人間としての生を送ることなど不可能だということに。それでも、家族が生きているこの世界を壊させはしないと誓った。
ならば、今ここでするべきことは決まっている。イブリスとしての力、それを開放すれば、今とは比べ物にならない身体能力と無尽蔵の魔素を得ることができる。ミルドレッドに報いることができる。
できる。できるというのに。どうしてエルキュールの身体は思い通りに動かないのか。どうして自身の身を堕とすことを躊躇ってしまうのか。
恐れているからと、ミルドレッドは言った。
母と妹から人としての普通の暮らしを奪ってしまったのは、魔人としての力。それが再び明るみに出てしまって、またしても同じ過ちを繰り返すことは確かに何よりも苦痛だった。
アマルティアの出現は、エルキュールにさらなる絶望を与えた。彼らはエルキュールを狙っている。抗わなければ周りは傷つき、抗うには全力を尽くす必要がある。
今のエルキュールは魔人としての活動を抑え、人間としての姿を保つために、力のほとんどを使ってしまっている。
その半端な状態から脱却するために、エルキュールは家族のもとに帰らないことを決意したというのに。
結局、魔人としての在り方の差が顕著に生じ、この場においても劣勢を強いられている。
まったく何をやっているのか。これでは本末転倒である。今は恐れている場合ではない。恐れる必要などない。憂うことなく力を使えばいい。そのための別れだったのだから。
エルキュールは決意を固め、今なお滔滔と語るミルドレッドを見据えた。
「……ふぅん? 何ですの、ようやくその気になったのかしら?」
「ああ――」
「お前に一矢報いる程度――力に頼るまでもない」
期待から驚愕に染まるミルドレッドの顔、その間抜けな移ろいに内心笑いながら、エルキュールはそれまで静かに蓄え続けた闇の魔素を使役し始めた。
エルキュールの背と地面との僅かな隙間、そこに人間一人がすっかり入れるほどの穴を闇魔法で生成する。瞬間、それまで拘束されていたエルキュールの身体は、たちまち地面に空いた穴に吸い込まれてその場から消え失せたた。
「な、なんですの!?」
それまでエルキュールの方に身を寄せていたミルドレッドは、彼の突然の消失にその身体の重心を失った。
開いた穴は瞬く間に閉じ、その場には砂利と草に覆われた地面のほかには何一つとして残っていない。
「どこに――」
当然湧いてくる疑問。ミルドレッドはよろめく身体を支えながら辺りを見回し、やがて気付く。
突如空が雲に覆われたように周囲が暗くなり、それに伴うように生じた自身の身を焼く鋭い殺気に。
「はああぁぁぁっ――!」
その声が上空から発せられたとミルドレッドが認識したのと、自身の胸の辺りに鋭い痛みが走ったのはほぼ同時の事だった。
「かっ……はっ……!」
押し出されるような口気を発し、震える視線で痛みを覚えた部分を見れば、先ほどまで自身が相手取っていたハルバードが、深々と胸を貫通しているのが映る。
その光景を目の当たりにして、ミルドレッドはようやく、上から降ってきたエルキュールによって攻撃を受けたのだと理解した。
「う、ぐ……この、離れなさい!」
「……っ! 馬鹿な……!」
しかし、普通の人間なら致命傷だといえるほどの傷を負ってもなお、ミルドレッドの気勢は削がれることはなく、彼女の激情に呼応するような暴風が彼女を中心に吹き荒れた。
驚くべきことに、その風は深々と刺したハルバードごとエルキュールの身体を吹き飛ばし、両者の間合いは再び振り出しに戻った。
完全に不意を突いた上に渾身の力を込めた刺突は、僅かにミルドレッドのコアを外してしまった。地面に叩きつけられる寸前に受け身をとったエルキュールは、彼女から目放さぬままその事実を重く受け止めた。
ミルドレッドの方もまた、今の一撃には流石に肝を冷やしたようで、エルキュールに反撃をすることはなくただ肩を震わせていた。
どちらも死線に曝された直後だからだろうか、相手の方を窺いながらも自分から行動を起こすことはなく、ここに至って熾烈な格闘に一瞬の空白が生まれた。
が、それを先に崩そうとしたのはエルキュール側だった。先の一撃は間違いなくミルドレッドに打撃を与えた。この勢いに乗じて畳みかけ、彼女を撤退させる。
その決意を刃に込め、今一度得物を振るおうとしたその刹那――
「……ヒ、ヒヒ……ひひヒヒひヒひひひ!」
不気味な、且つけたたましい哄笑が、張り詰めた空気を響かせた。得体の知れない気味の悪さから、攻撃を仕掛けようとしたエルキュールの動きが止まる。
何か仕掛けるのではないかと警戒していたエルキュールであったが、その思惑に反してミルドレッドは肩を震わせ笑うばかりで、これといった行動をとることはなかった。
「……ええ、えエ。まっタク……驚かせてクれマスわね」
それから一通り笑い散らかした彼女は落ち着きを取り戻したのか、気を静めるように呟くと、それまで膝をついていた身体を起こしてエルキュールの方に向き直った。
ミルドレッドの全身が正面に映る。
「それは……」
初めて対峙したときとは若干異なるその姿に思わず声が漏れる。
着こんでいた豪奢なドレスは胸元の部分から裂かれ、そこに隠されていた緑色のコアが露わになっている。そのすぐ横には、先ほどエルキュールが貫いたと思われる傷がぽっかりと空いており、早くもその瑕疵を埋めようと傷口からは魔素が渦巻き、修復活動を開始している。
笑みを湛えた面には、その表情こそ変わらないものの、肌の所々にこれまた緑色の痣が継ぎ接ぎの人形のように刻まれている。それまで精巧に人間を模倣していた頃を思えば、見栄えの悪い格好である。
次いでに、先ほどエルキュールに語りかけてきた声は、どこか人間のものとは思えない独特な響きを持っていた。恐らく人間の声帯に近い構造を保っていた部分が、魔人としての力を振るった際に狂ってしまったのだろう。
総合的に見て、今目の前にいるミルドレッドはおよそ人間とは思えない姿形をしており、同時にエルキュールが魔人としての力を使うことに対する忌避を、一部分ではあるが表してもいるようだった。
不快感から露骨に眉を歪めるエルキュールに、ミルドレッドはくつくつと笑う。
「あら、どうしてそのように嫌がるのでしょう? これが私たちの本性ですのに」
その間に曝け出されたコア以外すっかり元通りになったミルドレッドは、目を細めながら問いかける。
命の危機に瀕していたというのに、その調子は酷く穏やかのものであり、エルキュールもつい自然と口答えしてしまっていた。
「ああ、そうだな。その通りだ――だが、それは魔人であって、ヒトではない」
それはエルキュールが窮地に立たされても魔人としての力を振るわなかった理由でもあった。
確かにヌールが襲われたあの日、エルキュールは自身の在り方と向き合わされた。人間ではなく、世界に仇なす魔人の一員であるということを強く突きつけられた。
それに絶望し、一度はその身を堕とそうとした。そうするのが分相応だと絶対的に正しいと思っていた。
が、実際はそれだけではなかった。
一人で出ていこうとしたエルキュールを追いかけてきたグレン。自分たちの子供のことを託してくれたクラーク一家。迫りくる凶手から身を挺して庇ってくれたジェナ。
捨てたはずの人の縁の中に、未だエルキュールはいる。それが魔人であるということを知られていないからだとしても、この事実は変わらない。
『あなたが私たちと一緒にいてくれて、本当によかったと思ってるのよ』
『私が兄さんの妹で、兄さんが私の兄なのは、どんなことがあっても、誰が否定しても変わらないんだから』
自身を人として迎えてくれた家族。彼女たちが認めてくれた自分自身を捨て去ることは、矛盾した在り方を抱えている今以上に彼女たちを苦しめることになるだろう。
ここまでの見聞きしてきた経験が、エルキュールに気づかせてくれたことだった。
「俺は、そうあってはいけないんだ。いつか……家族の元に帰るその日まで」
「…………家族」
決意を込めた言葉に、ミルドレッドの眼が意味深に細められる。が、それはたちまち霧消し、いつもの不敵な笑みが貼り付けられた。
「なるほど、それが貴方の思いですか。あくまでもそのままの貴方で、ワタクシたちに立ち向かうと……ひひ、なんとまあ健気で愛らしいこと」
優雅な所作で乱れた服装を整えながら放たれた言葉からは、もはや闘争の色が消えていた。
「この場は痛み分けとしましょう。ワタクシもこれ以上ここで力を消耗するわけにはいきませんの……ワタクシに一本取った妙技と貴方のその気概に免じて、今回は大人しく退散するとしますわ」
到底信じられないな、と口を開きかけたのをすんでのところで抑えた。ただでさえ口が災いして、彼女を高ぶらせてしまったのだ。退いてくれるというのなら、それ以上は何も言わないのが吉であろう。
色々と知りたい部分もあるが、ジェナとアルトニーの住人たちの安全には代えられない。
彼女が心変わりしないうちに、エルキュールは無言で頷いた。
「ひひ、よろしい。ああ、でも……勘違いなさらず。この胸の傷の借りはいつかお返ししますから、次に会ったときには必ず。ですので……その在り方でどこまで持つか分かりませんが……それまでどうか、簡単には死なないでくださいな。ねぇ、エルキュール様?」
爪先を立て、優雅に一礼をするミルドレッド。するとどこからともなく風が吹き、彼女を包み込むように渦巻き始めた。その流れは次第に濃くなり、やがて光の帯のようなものを形成する。その風の帯はミルドレッドの全身を包み込み、それが解けたときには、彼女の姿はもうどこにも見当たらなかった。
「転移魔法か? はあ……まるで嵐のようだったな」
ようやくアマルティアの魔人から解放されたエルキュール。蓄積された疲れを全身に感じ、深い溜息が出た。
とはいえミルドレッドの去り際の言葉を考えるに、どうにも彼女から変に因縁をつけられたような気がしてならない。
彼女たちアマルティアとの関わりは、これからも続いていくのだと思うと殊更に気分が暗くなる。
「と、今はそんなことを考えても仕方ないか」
またしても落ち込み始めた気分を無理やりに上げる。密度の濃い時間を経て忘れかけていたが、ミルドレッドの不意打ちを喰らって倒れたジェナの様子を診る必要があった。
急いで彼女が倒れ伏している木の幹にまで駆け寄って、その安否を確認する。
やはり身体を強く打ちつけられた影響で気を失っているようだが、それ以外に目立った外傷は見られなかった。
エルキュールはほっと胸を撫で下ろした。
「この調子なら、回復魔法をかけていれば直に目を覚ますだろう」
診察を終えたエルキュールはそっとジェナの横に座り込み、彼女を治療しようと試みる。彼女と無事に帰ってこそ、ようやくクラーク一家との約束は完璧に果たされるのだから。
そうして一刻も早い回復を願いながら、エルキュールは回復魔法の詠唱を開始した。
その口から発せられた恐ろしい肩書に、エルキュールは内心焦りを感じていた。
アマルティア幹部。つまりはザラームと肩を並べるほどの力を持った魔人。ここ一帯で起こった異常事態を説明づけるにはこの上ないほどの分かりやすい人物ではあるが、そんな論理的な整合性に喜ぶほど余裕のある状況ではない。
魔獣の群れに、騎士が汚染されて生まれた魔人。戦闘の連続によってただでさえ消耗しているというのに、その上アマルティア幹部とも対峙することになろうとは。
強力な魔術師であるジェナは不意を突かれて倒れてしまった。この場に帰ってきていない以上、やはり気絶している可能性が高い。
何としてでも、エルキュールは一人でこの場を切り抜けなければならなかった。
「アマルティア、か……まさかこんな所で遭遇するとは。先日の演説の通り、表立っての行動に移ったということか」
相対するミルドレッドは不意に攻撃した時とは打って変わって、今のところ動く素振りが見られない。ならば、こちらから下手に行動する必要はないだろう。当たり障りのない会話で時間を稼ぎ、自身の体力を回復し、あわよくばジェナの復活を待つ。
この窮地を脱するにはそれしか考えられなかった。
「ひひひ……惚けちゃって、まあ……言ったでしょう? ザラームから聞いていると。魔人であるというのに、人間に与する変人ですって! 貴方とザラームが既に接触していることなど分かりきっていますのよ?」
「……だとしたら、俺が今ここにいることに説明がつかないはずだ。俺はお前らの敵だ。自分たちに仇なすものを排除するのがお前らのやり方だろう?」
あくまで断定することを避け、皮肉を込めて返す。他のイブリスとは異なり、ミルドレッドもザラームと同じくある程度会話に応じてくれるようだ。
ならば、少しでもアマルティアに関する情報を手に入れられるように事を進めるべきだ。
「あら、なんて悲しいことを……でも、貴方が何をしようとワタクシたちは止まらなくってよ。今はそれより恐れるべきものが――」
ミルドレッドの視線がややエルキュールから外れ、それまで浮かべていた笑みが消失する。が、その意図を測りかねるうちに再び同様の薄ら笑いに戻ってしまう。
「――とにかく、貴方が彼のエルキュール・ラングレーであることは間違いなく、この場での邂逅もきっと主の導きによるもの! さあ、迷える魔人さん! 無駄な足掻きなど止めて、ワタクシたちアマルティアと共に反逆の道を行きましょう!」
両手を高く広げ、賛美歌でも歌うような調子で高らかに告げるミルドレッド。やはり彼女も、エルキュールを引き入れるつもりのようだ。
日をそれほど跨がないうちに受ける二度目のアプローチ。流石に嫌気がさしたが、それと同時に新たな発見もあった。
アマルティアは、少なくともこのミルドレッドは、エルキュールのことを大した脅威と思っていないこと。今のところアマルティアにとって、エルキュールという魔人はただの仲間候補であり、人間の世界に生きる変わり者だと評価されているようだ。
次に彼女が口にした「主」という存在。実在するものか、はたまた概念上のものか。どちらにせよ、アマルティアという組織に関わる新たな手がかりに思える。
そして、最後に彼女たちが恐れているという存在。思えばザラームの去り際も、この件と同様に考えられるのではなかろうか。
彼は仲間から「王都の件」について聞き、エルキュールを解放しヌールの街を後にした。王都とアマルティアに何かの関係があるとは踏んでいたが、もしも彼らが恐れるべきものが王都にあるのだと考えれば、エルキュールよりもその件を優先したザラームの行動にも頷ける。
王都には王国騎士団本部をはじめ、魔物がらみの案件に対処する機関・デュランダル、今朝の騎士隊の詰所でも話題なったブラッドフォード家の存在もある。これだけの要素があるならば、相応に注意を払うのも必然であろう。
「お前たちの仲間にはならない。これは変わらない俺の意志だ……理解できたのならとっととお引き取り願おうか。もちろんアルトニーの街を襲わせたりもしない」
これだけの情報を貰えるとは思ってもみなかった。これ以上を求めてしまえば、どんな危険が生じるか想像もつかない。
エルキュールは己の不利を省みて、この得体の知れない女との話を切り上げ、この場から彼女を撤退させようと試みた。
我が身を思っての事だけではない。彼女の目的は不明だが、またヌールの件のような惨劇を繰り返させるわけにはいかなかった。
エルキュールは毅然とした態度を崩さぬまま言い放った。
しかし、下手に相手の思い通りに従うことの抵抗を強く示したからか、それまで喜色の笑みを浮かべていたミルドレッドの貌が、不意に苛立たしげに歪んだ。魔人とはいえ、彼女の容貌がほぼ人間と変わらないほど精巧なものだったため、彼女の反感は容易にエルキュールへと伝播した。
「……あぁ、ああ……気に入りませんわね……その反抗的な目つき、態度、姿勢……どうしてそのような物言いをなさるのでしょう。ワタクシ、己の分を心得ない殿方はあまり得意ではありませんの。だって、こちらは善意で申し上げていますのに……少しは酷いとは思いませんこと?」
歌うような流暢で大袈裟な話しぶりは崩れない。しかし、その声には確かに暗いものが混じっており、エルキュールは自らの落ち度を呪った。この場を穏便に収めるなら、アマルティアに対する敵愾心を極力見せないことは必須だったというのに。
「せっかくの同朋に傷は付けたくないのですけど。その生意気な態度……少しは矯正して差し上げるのも同族の務めでしょうか?」
瞬間、ミルドレッドの周囲に風の魔素の奔流が生じる。同時にそれまでは巧妙に隠されていた魔素質とコアの輝きが、彼女の厚手のドレス越しからでも見て取れるようになるまで強くなる。
その光は深緑――先ほど対峙した魔人のものとそっくり一緒であった。リーベから生まれるイブリスは汚染された対象と同じ属性を持つ。故に魔素質から発せられる光も似ている。
やはり、騎士を汚染した元凶は目の前のミルドレッドその人らしい。
半ば予想していた通りの事実だったが、今はそれについて考える暇もない。こちらが同種であるからミルドレッドも穏便に接してきていたというのに、むざむざとその有利を放棄してしまった。
「それにですね? これから来るべき闘争……鈍ってしまった身体では少々不安だと思っていましたの。ねぇ……? 仲間にならないというのなら、せめてワタクシの余興に付き合ってください、なっ――!」
藪蛇とはこのことだろう。迂闊に踏み込み、無用な闘争心に火をつけてしまったのだから。
だがそんな反省をする間もなく、ミルドレッドは己の周りに纏わせていた風の魔素を掌に集約させ、球状に圧縮しエルキュールの方へと放り投げた。
風の初級魔法、エアシュート。魔法を学び始めたばかりものでも習得できる魔法の一つだが、ミルドレッドが放ったものはそれとは比にならない威力を有していた。
こうなってしまってはどうしようもないと、エルキュールは横に飛んで放たれた風の弾丸を躱す。
球体が直撃するのは避けたはずだが、その球の周辺には小規模の風の奔流が渦巻いていたようで、その風の刃とも形容すべき風が直撃を免れたエルキュールの半身に襲いかかった。
「っ――!」
こういった魔法による攻撃はハルバードで防御するよりもオーラを用いた方がいいのだが、咄嗟の事だったのでエルキュールであっても僅かにその判断は遅れてしまった。
風刃が着ていた外套の一部が裂き、エルキュールの頬にも傷をつけた。頬の傷口からは血の代わりに魔素質が漏れ出た。
外見は魔素を巧みに操ることで、通常の人間のような血色のいい肌に見せることに成功しているが、その内側まで同じように手を加えることは今のエルキュールには不可能であった。
万が一肌に傷がつかないよう、普段から厚手の服装に身を包み、手袋も装着することで肌を露出させないように気を遣っていたのだが、ここに来てぼろが出てしまった。
エルキュールは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、幸いここにいるのは魔人だけであり、ジェナも気を失っている。今はその不覚を省みる時ではない。
そう短く結論付け、エルキュールは目の前の相手に集中することに決めた。
「なかなか良い動きですこと。しかし……これも同じように躱せるかしら!」
もちろん掠り傷を負わせた程度で攻撃の手を緩めるつもりなどないのだろう、ミルドレッドは続けざまに風の魔素を手繰る。
手を上空に掲げ、そこを中心にして風が流れ込んでゆく。次第にその風は姿を変え、槍のように細長い形を形成し始める。
出会い頭に放たれた魔法だと、すぐに理解したエルキュール。が、受け身になってばかりでは埒が明かない。分が悪いとはいえ、早々に終わらせるためにはこちらから仕掛ける必要がある。
あの魔法の攻撃範囲は二度放たれた今となっては見切っている。エルキュールは姿勢を低く、ミルドレッド目がけて駆けた。
間髪入れず放たれる風の槍。正面から迫りくる風の塊の下側を滑り込むように回避する。
「まぁ……!」
見たところミルドレッドに得物の類は見られない。ならば魔法の射程を活かしづらい近距離戦に持ち込んだ方が、まだ勝ちの目を拾えるだろう。
もちろんこの場で倒せると思いあがってはいけない。だだ下手の動きをするだけの気勢を削ぎ、一刻も早くこの場から退けさせること。それが今のエルキュールにできる全てだ。
寝そべるような体勢から一転、上体を起こして反撃の構えをとる。ハルバードを前方に、ミルドレッドの胸部を目がけて刃を向ける。魔人なら誰しもそこにコアが刻まれている。そこに傷をつければ、彼女もこれ以上無茶はできないだろう。
「――甘いですわよ」
とはいえ、現実はそう上手くいかなかった。ミルドレッドは懐にもぐりこまれたことに寸分の焦りも見せず、驚くべき速さで魔素を操る。
それは瞬く間に短剣なようなものを形成し、その華奢の腕で以てエルキュールの渾身の一撃を難なく防いだ。
「なに……!?」
あり得ない。率直にそう思った。あれほど一瞬の合間に、エルキュールの斬撃を受け止めるだけの強度を持った短剣を生み出すことなど、並大抵の使い手――ひょっとするとジェナのような魔術師であっても中々できない芸当だ。
六属性全てをその内に擁する物質は、魔素質に比べて存在が安定しており、頑丈である。同じ質量の場合でも、その両者がぶつかり合えば大抵は魔素質の方が砕け散るはずだ。
だからこそ、まるで玩具のような短剣で攻撃を防がれたことが理解できなかった。疑念と焦燥に駆られ、エルキュールは拮抗して動かなくなっているハルバードの穂先を強引に押し込んだ。
「ひひひ、案外強情な方みたいですわね。そんなに力任せにしても無駄ですわよ!」
それでも切っ先をミルドレッドの胸部に当てるどころか、受け止められた刃を動かすことすらできない。
一方、それを見て笑うミルドレッドはまるで嘲けるかのように容易く、エルキュールの身体をその短剣で押し返した。
決死の思いで詰めた間合いが元通りになる。が、それを悔やむ間もなく、今度はミルドレッドが攻勢をかけてきた。
「く……どういう……」
「ああ、そんな顔なさらず。ワタクシ、他と比べて少しばかり魔素感覚が強すぎるみたいですの……ですから、これくらいのことなら造作もないのですのよ?」
辛うじて避け続けるエルキュールの困惑に、攻撃の手を緩めぬままにミルドレッドは丁寧に説いた。
魔素感覚。魔素を感知し、操る能力。魔素を使う技術全般に必須な基礎の基礎だが、それも極まれば一つの武器となるということなのだろう。
堅固な鉄の刃を魔素質の塊で制することができる程度には。
確かに彼女の風魔法の威力や回転数、普段から抑えているエルキュールの魔人としての力を見抜いたことを考えると、その言葉にはこの上ない納得感がある。
しかし、種が割れても、依然として彼我の実力差は健在である。ミルドレッドの風の剣による猛攻に、徐々に押され始めていた。
彼女の得物はエルキュールのものよりも強力なうえ、小ぶりで手数も多い。間合いを詰められた今の状況では、反撃する暇もなかった。
「そこっ――!」
消耗の激しいハルバードで防ぐのを躊躇い、無理に躱したところに足払いをかけられる。一瞬宙に浮くその身体を地面に叩きつけると、すかさず胸元に短剣が押し当てられる。
ドレスとヒールを身につけているとは思えない圧倒的な体術に、エルキュールは為す術なく打ち負かされてしまった。
「……呆気ない、もう終わりですの?」
相手を撤退させるどころか一撃も与えられぬまま天を仰ぐエルキュールに、底冷えするような低い言葉がかけられる。それまでの朗らかな声色は消え失せ、侮蔑すら感じられる調子であった。
服越しにコアに刃を突き立てられているため下手なこともいえず、エルキュールはただただ悔しげに唇を引き結んだ。
「これでは話に聞いていたのと丸きり違いますわ。ザラームはなぜこんなのを熱心に捜し求めていたのかしら……?」
何を苛立っているのか、ミルドレッドは地面に放られていたエルキュールの腕を踵で踏んずけると、持ち前の鋭利な眼差しで彼を嬲る。
容赦ない振る舞いの彼女であるが、一つ思い当たることがあったようで、その瞳がふっと細められる。
「ふむ……まさかとは思いますけど。貴方、本気を出していない……なんてことありませんわよねぇ……?」
「……!」
決して何も言うまいと、声は抑えたつもりであるが、動揺の色を見せる瞳までは誤魔化せなかった。
その雄弁な沈黙に、それまで保っていた厳かな緊張を解いたミルドレッドは凄絶な笑みを浮かべた。
「ああ、そうですか……そうなのですか……! なるほど、それだけの知性を持った魔人であるのに、この不甲斐なさは奇妙だと思っていましたが……そういうことですの」
胸部に突きつけられていた刃はそのままに、ミルドレッドは納得したように呟く。それから押さえつけられているエルキュールに顔を近づけ、その瞳を覗き込んできた。
まるで心の奥を見透かさんとするその眼に、エルキュールは思わず視線を逸らす。
「恐れ、でしょうか? 貴方の根底にあるのは。貴方を閉じ込めてしまっているものは」
「…………」
「なんとまあ勿体ない。確かに、愚かな人間どもが支配するこの世界、彼らの目を欺くために彼らと同じ姿を模倣するのは分かりますわ。我らを駆逐せんとするその目に留まり、たかられるのも億劫でしょうし。ただ……その力すべてを封じる必要など、つゆにもありませんのに」
すべてを封じる必要はない、それは反逆者の考えだ。敷かれた秩序に真っ向から歯向かう者にしか通用しない。
魔人として生まれた以上、この世界で穏便に暮らすためには避けられない犠牲もあるのだ。
が、どうしてかその思いを声に乗せることができず、ミルドレッドの言葉のみが粛々と紡がれる。
「ほら、こんなか弱い乙女による拘束など、貴方が魔人としての能力を存分に振るえば簡単に跳ね除けられるでしょう? そうして、もっとワタクシと遊んでくださいな。楽しませてください、誘いを断ったのですから。それとも……貴方にできないというなら代わりの者に務めてもらった方がいいでしょうか?」
言うてミルドレッドが示した先は、エルキュールたちがやって来た方角。即ち、アルトニーがある方角だった。
彼女が言いたいのはエルキュールが魔人の力を解放しないのなら、アルトニーの街を襲うということだろう。
明確な脅し文句に、エルキュールの表情はいっそう強張る。
これまでの彼女の話しぶりから、この森にいた直接の目的はエルキュールでもアルトニーでもなかったはずである。エルキュールとここで会ったのは単なる偶然で、アルトニーを襲うつもりならとっくに実行に移しているはずだ。
だから、これは単なる脅しに過ぎない。過ぎないはずなのだが、今エルキュールにはそうと断定することはできなかった。ミルドレッドの言には、そんな推測をも掻き消してしまう凄味があった。
「いいんですの? 貴方、ヌールでも同じことをしたのかしら。恐れて、行動を起こさず、指を加えて見ているだけ――」
そうだ。このままでは、アルトニーの未来もヌールと同じ道を辿る。それは避けなくてはならない。
そのためには力を。押さえつけている力を。解放しなくては。ザラームに敗れたとき、悟ったはずだ。もう自分に人間としての生を送ることなど不可能だということに。それでも、家族が生きているこの世界を壊させはしないと誓った。
ならば、今ここでするべきことは決まっている。イブリスとしての力、それを開放すれば、今とは比べ物にならない身体能力と無尽蔵の魔素を得ることができる。ミルドレッドに報いることができる。
できる。できるというのに。どうしてエルキュールの身体は思い通りに動かないのか。どうして自身の身を堕とすことを躊躇ってしまうのか。
恐れているからと、ミルドレッドは言った。
母と妹から人としての普通の暮らしを奪ってしまったのは、魔人としての力。それが再び明るみに出てしまって、またしても同じ過ちを繰り返すことは確かに何よりも苦痛だった。
アマルティアの出現は、エルキュールにさらなる絶望を与えた。彼らはエルキュールを狙っている。抗わなければ周りは傷つき、抗うには全力を尽くす必要がある。
今のエルキュールは魔人としての活動を抑え、人間としての姿を保つために、力のほとんどを使ってしまっている。
その半端な状態から脱却するために、エルキュールは家族のもとに帰らないことを決意したというのに。
結局、魔人としての在り方の差が顕著に生じ、この場においても劣勢を強いられている。
まったく何をやっているのか。これでは本末転倒である。今は恐れている場合ではない。恐れる必要などない。憂うことなく力を使えばいい。そのための別れだったのだから。
エルキュールは決意を固め、今なお滔滔と語るミルドレッドを見据えた。
「……ふぅん? 何ですの、ようやくその気になったのかしら?」
「ああ――」
「お前に一矢報いる程度――力に頼るまでもない」
期待から驚愕に染まるミルドレッドの顔、その間抜けな移ろいに内心笑いながら、エルキュールはそれまで静かに蓄え続けた闇の魔素を使役し始めた。
エルキュールの背と地面との僅かな隙間、そこに人間一人がすっかり入れるほどの穴を闇魔法で生成する。瞬間、それまで拘束されていたエルキュールの身体は、たちまち地面に空いた穴に吸い込まれてその場から消え失せたた。
「な、なんですの!?」
それまでエルキュールの方に身を寄せていたミルドレッドは、彼の突然の消失にその身体の重心を失った。
開いた穴は瞬く間に閉じ、その場には砂利と草に覆われた地面のほかには何一つとして残っていない。
「どこに――」
当然湧いてくる疑問。ミルドレッドはよろめく身体を支えながら辺りを見回し、やがて気付く。
突如空が雲に覆われたように周囲が暗くなり、それに伴うように生じた自身の身を焼く鋭い殺気に。
「はああぁぁぁっ――!」
その声が上空から発せられたとミルドレッドが認識したのと、自身の胸の辺りに鋭い痛みが走ったのはほぼ同時の事だった。
「かっ……はっ……!」
押し出されるような口気を発し、震える視線で痛みを覚えた部分を見れば、先ほどまで自身が相手取っていたハルバードが、深々と胸を貫通しているのが映る。
その光景を目の当たりにして、ミルドレッドはようやく、上から降ってきたエルキュールによって攻撃を受けたのだと理解した。
「う、ぐ……この、離れなさい!」
「……っ! 馬鹿な……!」
しかし、普通の人間なら致命傷だといえるほどの傷を負ってもなお、ミルドレッドの気勢は削がれることはなく、彼女の激情に呼応するような暴風が彼女を中心に吹き荒れた。
驚くべきことに、その風は深々と刺したハルバードごとエルキュールの身体を吹き飛ばし、両者の間合いは再び振り出しに戻った。
完全に不意を突いた上に渾身の力を込めた刺突は、僅かにミルドレッドのコアを外してしまった。地面に叩きつけられる寸前に受け身をとったエルキュールは、彼女から目放さぬままその事実を重く受け止めた。
ミルドレッドの方もまた、今の一撃には流石に肝を冷やしたようで、エルキュールに反撃をすることはなくただ肩を震わせていた。
どちらも死線に曝された直後だからだろうか、相手の方を窺いながらも自分から行動を起こすことはなく、ここに至って熾烈な格闘に一瞬の空白が生まれた。
が、それを先に崩そうとしたのはエルキュール側だった。先の一撃は間違いなくミルドレッドに打撃を与えた。この勢いに乗じて畳みかけ、彼女を撤退させる。
その決意を刃に込め、今一度得物を振るおうとしたその刹那――
「……ヒ、ヒヒ……ひひヒヒひヒひひひ!」
不気味な、且つけたたましい哄笑が、張り詰めた空気を響かせた。得体の知れない気味の悪さから、攻撃を仕掛けようとしたエルキュールの動きが止まる。
何か仕掛けるのではないかと警戒していたエルキュールであったが、その思惑に反してミルドレッドは肩を震わせ笑うばかりで、これといった行動をとることはなかった。
「……ええ、えエ。まっタク……驚かせてクれマスわね」
それから一通り笑い散らかした彼女は落ち着きを取り戻したのか、気を静めるように呟くと、それまで膝をついていた身体を起こしてエルキュールの方に向き直った。
ミルドレッドの全身が正面に映る。
「それは……」
初めて対峙したときとは若干異なるその姿に思わず声が漏れる。
着こんでいた豪奢なドレスは胸元の部分から裂かれ、そこに隠されていた緑色のコアが露わになっている。そのすぐ横には、先ほどエルキュールが貫いたと思われる傷がぽっかりと空いており、早くもその瑕疵を埋めようと傷口からは魔素が渦巻き、修復活動を開始している。
笑みを湛えた面には、その表情こそ変わらないものの、肌の所々にこれまた緑色の痣が継ぎ接ぎの人形のように刻まれている。それまで精巧に人間を模倣していた頃を思えば、見栄えの悪い格好である。
次いでに、先ほどエルキュールに語りかけてきた声は、どこか人間のものとは思えない独特な響きを持っていた。恐らく人間の声帯に近い構造を保っていた部分が、魔人としての力を振るった際に狂ってしまったのだろう。
総合的に見て、今目の前にいるミルドレッドはおよそ人間とは思えない姿形をしており、同時にエルキュールが魔人としての力を使うことに対する忌避を、一部分ではあるが表してもいるようだった。
不快感から露骨に眉を歪めるエルキュールに、ミルドレッドはくつくつと笑う。
「あら、どうしてそのように嫌がるのでしょう? これが私たちの本性ですのに」
その間に曝け出されたコア以外すっかり元通りになったミルドレッドは、目を細めながら問いかける。
命の危機に瀕していたというのに、その調子は酷く穏やかのものであり、エルキュールもつい自然と口答えしてしまっていた。
「ああ、そうだな。その通りだ――だが、それは魔人であって、ヒトではない」
それはエルキュールが窮地に立たされても魔人としての力を振るわなかった理由でもあった。
確かにヌールが襲われたあの日、エルキュールは自身の在り方と向き合わされた。人間ではなく、世界に仇なす魔人の一員であるということを強く突きつけられた。
それに絶望し、一度はその身を堕とそうとした。そうするのが分相応だと絶対的に正しいと思っていた。
が、実際はそれだけではなかった。
一人で出ていこうとしたエルキュールを追いかけてきたグレン。自分たちの子供のことを託してくれたクラーク一家。迫りくる凶手から身を挺して庇ってくれたジェナ。
捨てたはずの人の縁の中に、未だエルキュールはいる。それが魔人であるということを知られていないからだとしても、この事実は変わらない。
『あなたが私たちと一緒にいてくれて、本当によかったと思ってるのよ』
『私が兄さんの妹で、兄さんが私の兄なのは、どんなことがあっても、誰が否定しても変わらないんだから』
自身を人として迎えてくれた家族。彼女たちが認めてくれた自分自身を捨て去ることは、矛盾した在り方を抱えている今以上に彼女たちを苦しめることになるだろう。
ここまでの見聞きしてきた経験が、エルキュールに気づかせてくれたことだった。
「俺は、そうあってはいけないんだ。いつか……家族の元に帰るその日まで」
「…………家族」
決意を込めた言葉に、ミルドレッドの眼が意味深に細められる。が、それはたちまち霧消し、いつもの不敵な笑みが貼り付けられた。
「なるほど、それが貴方の思いですか。あくまでもそのままの貴方で、ワタクシたちに立ち向かうと……ひひ、なんとまあ健気で愛らしいこと」
優雅な所作で乱れた服装を整えながら放たれた言葉からは、もはや闘争の色が消えていた。
「この場は痛み分けとしましょう。ワタクシもこれ以上ここで力を消耗するわけにはいきませんの……ワタクシに一本取った妙技と貴方のその気概に免じて、今回は大人しく退散するとしますわ」
到底信じられないな、と口を開きかけたのをすんでのところで抑えた。ただでさえ口が災いして、彼女を高ぶらせてしまったのだ。退いてくれるというのなら、それ以上は何も言わないのが吉であろう。
色々と知りたい部分もあるが、ジェナとアルトニーの住人たちの安全には代えられない。
彼女が心変わりしないうちに、エルキュールは無言で頷いた。
「ひひ、よろしい。ああ、でも……勘違いなさらず。この胸の傷の借りはいつかお返ししますから、次に会ったときには必ず。ですので……その在り方でどこまで持つか分かりませんが……それまでどうか、簡単には死なないでくださいな。ねぇ、エルキュール様?」
爪先を立て、優雅に一礼をするミルドレッド。するとどこからともなく風が吹き、彼女を包み込むように渦巻き始めた。その流れは次第に濃くなり、やがて光の帯のようなものを形成する。その風の帯はミルドレッドの全身を包み込み、それが解けたときには、彼女の姿はもうどこにも見当たらなかった。
「転移魔法か? はあ……まるで嵐のようだったな」
ようやくアマルティアの魔人から解放されたエルキュール。蓄積された疲れを全身に感じ、深い溜息が出た。
とはいえミルドレッドの去り際の言葉を考えるに、どうにも彼女から変に因縁をつけられたような気がしてならない。
彼女たちアマルティアとの関わりは、これからも続いていくのだと思うと殊更に気分が暗くなる。
「と、今はそんなことを考えても仕方ないか」
またしても落ち込み始めた気分を無理やりに上げる。密度の濃い時間を経て忘れかけていたが、ミルドレッドの不意打ちを喰らって倒れたジェナの様子を診る必要があった。
急いで彼女が倒れ伏している木の幹にまで駆け寄って、その安否を確認する。
やはり身体を強く打ちつけられた影響で気を失っているようだが、それ以外に目立った外傷は見られなかった。
エルキュールはほっと胸を撫で下ろした。
「この調子なら、回復魔法をかけていれば直に目を覚ますだろう」
診察を終えたエルキュールはそっとジェナの横に座り込み、彼女を治療しようと試みる。彼女と無事に帰ってこそ、ようやくクラーク一家との約束は完璧に果たされるのだから。
そうして一刻も早い回復を願いながら、エルキュールは回復魔法の詠唱を開始した。
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