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7 魔法の箒
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ビクターは、包帯も取れて、すっかり傷も治っていた。
ビクターの初授業は、怪我から1週間たった頃で、体育館はまだ強力に封印がされている為、屋上での授業だった。
ピンクのローブを着て屋上に現れたビクターに、生徒たちは興味津々な目で見つめていた。
「体育の先生って、みんなピンクローブなのか?」
「ピンクローブって、魔力が測定不能とか言われてなかったか?」
「俺はあんなのは恥ずかしくて、外を出歩けないよ。」
「俺もだよ。なのに、どうしてだ?」
「どうやったら、あんなローブの人がこの名門の魔法学園の先生になれるんだ?」
口々に、生徒たちは今まで見たことのないこのローブについて批判を繰り返していた。
「先生は魔法大学を卒業したのですか?僕は、いま大学見学をして歩いてるんですが、そんなローブの大学生を見たことがありません。」
ビクターは落胆したとばかりに溜息をつく。
「みんなは、このピンクのローブに興味ありげだが、先生にとっては、何色でも関係ない。最近ニュースにもなっているが、この地域の磁場が変調をきたして、突然魔力に影響を与えることがあると聞く。もし瞬間移動の最中に、突然魔力が消えたら君たちはどうする。」
ビクターの声に生徒たちは、互いに顔を見合わせていた。
「俺は、体育の教師だ。徹底的に体を鍛えなければ自分の身さえ守れないぞ。ちなみに、俺は卒業したのは魔法大学ではなく、教育大学の体育学部だ。ボディメカニズムには詳しいぞ。」
「まさか、箒の操縦方法を知らないとは……」
一年生の体育の授業は、持久走のつもりだった。
よーいドンで、走ってからいきなり肉離れを起こす人たちが続出したため、様子を見て箒の持久走に変更したのだが、ここの生徒たちは飛ぶどころか浮き上がるだけが精一杯。
魔法の箒には、その一本一本精霊が宿っている。箒を操るには、精霊を手なずける必要がある。それなのに、生徒たちは、ようやく飛び出したかと思ったら、幾人かの生徒の箒が暴走して学園外へ飛び出し、下の樹海に勢い余って飛び込んでしまったのだ。
「うそだろ……」
「ギャー、ギョエー」
「おい、どこまで行くつもりだ。戻ってこい。そっちは、樹海だぞ……」
「せんせいー、箒が言うことを聞いてくれないんだよ。」
「だれか助けてくれ―」
異常を察した学内の教授陣が屋上に集結してきた。
「どこまで行ったんだ。まったく、これは、どうなっているんだ……」
「みんな、鎮まりなさい。」
「こら、鎮まれ!いま先生たちが救出に向かっています。」
生徒たちを、ビクターはルンバで飛び回り、回収して歩く。たが、中には樹海の魔獣と化した草木に囚われて居る者もあり、箒が植物と変化しているものもあり、腕力で戦いを挑むビクターは助けることに少々難儀をしていた。
「いやだよー、こいつら扱いが雑なんだ。飛びたくないよー」
生徒を逆さに乗せたまま、空中で回転する箒から泣き声が聞こえてきた。
「痛いよー。こいつら、競走馬みたいに僕を叩くんだ。昔は、もっと丁寧に扱われていたのに……」
「まじか……」
そこへ突然、アンバーの声がした。
「……天の光よ、集まれ」
空に一瞬だけ強い光が放たれる。強い光の中央にアンバーが箒の上に直立で立っているのが見えた。
「今だ。ビクター、早く。」
陽の光に弱い樹海の木々は、その瞬間枝葉の部分の力を緩めた。その隙をついて、ビクターは生徒を救出する。
「ふう、なんとか、全員間に合ったか……」
だが少々、怪我人が出てしまったのだった。
教授たちは、生徒たちの怪我具合を見ながら、何かをゴソゴソと話し合っていた。
「これは、どういうことなのかね……?」
「このままでは、まずいわね。これは、少し乱暴ではないかしら?」
「怪我の状態は?こんなことは前代未聞だよ。」
あんなに箒が暴走する最中だった。でも、生徒の怪我は、大抵がかすり傷程度だった。
「俺たちは、箒の競争なんて出来ないと言ったのに、あの先生が無理やり……」
「箒に跨るなんて、何時代の人だよ。子供じゃあるまいし、そんな恥ずかしいことできるかよ。」
「こんなに怪我をしたのは初めてだよ。親に言いつけてやるから。」
箒での飛行は、ドローンが発達した今では、生徒にとっては、子供が乗る三輪車くらいの意識だった。
「生徒の親たちには、もうとっくに報告は行っているよ。」
「大したことはないからと、このままでは済まされないだろうな。」
「だが、うちの生徒たちが、まだろくに魔法の箒も操れないとは……」
「この魔法界は、精霊との協力関係で成り立っているからな……これは、大問題だよ。」
アンバーは、かすり傷の生徒たちが休んでいる横で佇む、血だらけの拳をしたビクターを見る。
「また怪我人か。もう、僕のメンタルが持たないんだよ。」と。
「すみません。ちょっと、やり過ぎました。」
「アンバー教授、あなたが指導しておきながら何たることだね……この学園の何たるかを知っているのかね。数々の歴史に名だたる各省の魔法大臣を輩出してきた伝統ある魔法学校だというのに。」
やってきたのは副校長だった。
「副校長、すみません。」
「なんたる惨状かね。これから、私は、父母の会や、この学園の役員会に説明をして歩かなければならない。傷の手当てをしたら、あとで校長室にいきなさい。ビクター君、きみも一緒にね。」
つづく
ビクターの初授業は、怪我から1週間たった頃で、体育館はまだ強力に封印がされている為、屋上での授業だった。
ピンクのローブを着て屋上に現れたビクターに、生徒たちは興味津々な目で見つめていた。
「体育の先生って、みんなピンクローブなのか?」
「ピンクローブって、魔力が測定不能とか言われてなかったか?」
「俺はあんなのは恥ずかしくて、外を出歩けないよ。」
「俺もだよ。なのに、どうしてだ?」
「どうやったら、あんなローブの人がこの名門の魔法学園の先生になれるんだ?」
口々に、生徒たちは今まで見たことのないこのローブについて批判を繰り返していた。
「先生は魔法大学を卒業したのですか?僕は、いま大学見学をして歩いてるんですが、そんなローブの大学生を見たことがありません。」
ビクターは落胆したとばかりに溜息をつく。
「みんなは、このピンクのローブに興味ありげだが、先生にとっては、何色でも関係ない。最近ニュースにもなっているが、この地域の磁場が変調をきたして、突然魔力に影響を与えることがあると聞く。もし瞬間移動の最中に、突然魔力が消えたら君たちはどうする。」
ビクターの声に生徒たちは、互いに顔を見合わせていた。
「俺は、体育の教師だ。徹底的に体を鍛えなければ自分の身さえ守れないぞ。ちなみに、俺は卒業したのは魔法大学ではなく、教育大学の体育学部だ。ボディメカニズムには詳しいぞ。」
「まさか、箒の操縦方法を知らないとは……」
一年生の体育の授業は、持久走のつもりだった。
よーいドンで、走ってからいきなり肉離れを起こす人たちが続出したため、様子を見て箒の持久走に変更したのだが、ここの生徒たちは飛ぶどころか浮き上がるだけが精一杯。
魔法の箒には、その一本一本精霊が宿っている。箒を操るには、精霊を手なずける必要がある。それなのに、生徒たちは、ようやく飛び出したかと思ったら、幾人かの生徒の箒が暴走して学園外へ飛び出し、下の樹海に勢い余って飛び込んでしまったのだ。
「うそだろ……」
「ギャー、ギョエー」
「おい、どこまで行くつもりだ。戻ってこい。そっちは、樹海だぞ……」
「せんせいー、箒が言うことを聞いてくれないんだよ。」
「だれか助けてくれ―」
異常を察した学内の教授陣が屋上に集結してきた。
「どこまで行ったんだ。まったく、これは、どうなっているんだ……」
「みんな、鎮まりなさい。」
「こら、鎮まれ!いま先生たちが救出に向かっています。」
生徒たちを、ビクターはルンバで飛び回り、回収して歩く。たが、中には樹海の魔獣と化した草木に囚われて居る者もあり、箒が植物と変化しているものもあり、腕力で戦いを挑むビクターは助けることに少々難儀をしていた。
「いやだよー、こいつら扱いが雑なんだ。飛びたくないよー」
生徒を逆さに乗せたまま、空中で回転する箒から泣き声が聞こえてきた。
「痛いよー。こいつら、競走馬みたいに僕を叩くんだ。昔は、もっと丁寧に扱われていたのに……」
「まじか……」
そこへ突然、アンバーの声がした。
「……天の光よ、集まれ」
空に一瞬だけ強い光が放たれる。強い光の中央にアンバーが箒の上に直立で立っているのが見えた。
「今だ。ビクター、早く。」
陽の光に弱い樹海の木々は、その瞬間枝葉の部分の力を緩めた。その隙をついて、ビクターは生徒を救出する。
「ふう、なんとか、全員間に合ったか……」
だが少々、怪我人が出てしまったのだった。
教授たちは、生徒たちの怪我具合を見ながら、何かをゴソゴソと話し合っていた。
「これは、どういうことなのかね……?」
「このままでは、まずいわね。これは、少し乱暴ではないかしら?」
「怪我の状態は?こんなことは前代未聞だよ。」
あんなに箒が暴走する最中だった。でも、生徒の怪我は、大抵がかすり傷程度だった。
「俺たちは、箒の競争なんて出来ないと言ったのに、あの先生が無理やり……」
「箒に跨るなんて、何時代の人だよ。子供じゃあるまいし、そんな恥ずかしいことできるかよ。」
「こんなに怪我をしたのは初めてだよ。親に言いつけてやるから。」
箒での飛行は、ドローンが発達した今では、生徒にとっては、子供が乗る三輪車くらいの意識だった。
「生徒の親たちには、もうとっくに報告は行っているよ。」
「大したことはないからと、このままでは済まされないだろうな。」
「だが、うちの生徒たちが、まだろくに魔法の箒も操れないとは……」
「この魔法界は、精霊との協力関係で成り立っているからな……これは、大問題だよ。」
アンバーは、かすり傷の生徒たちが休んでいる横で佇む、血だらけの拳をしたビクターを見る。
「また怪我人か。もう、僕のメンタルが持たないんだよ。」と。
「すみません。ちょっと、やり過ぎました。」
「アンバー教授、あなたが指導しておきながら何たることだね……この学園の何たるかを知っているのかね。数々の歴史に名だたる各省の魔法大臣を輩出してきた伝統ある魔法学校だというのに。」
やってきたのは副校長だった。
「副校長、すみません。」
「なんたる惨状かね。これから、私は、父母の会や、この学園の役員会に説明をして歩かなければならない。傷の手当てをしたら、あとで校長室にいきなさい。ビクター君、きみも一緒にね。」
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