魔法学園ピンクローブ事件簿〜ルンバでやって来た男、封印の謎に巻き込まれる~

加茂茶 芽衣

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22 校長先生と教頭先生

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シークエント教頭は、昼過ぎ、いつもの巡回をしていた。

今は昼食直後の5時間目の授業だ。

眠たい目を擦りつつ、50階から100階までの廊下をくまなく歩いていく。

「今日は、化学の授業は休みか。」

化学室には、誰もいなかった。アンバー教授は隣だろうか。
だが、教頭は研究室を覗くつもりはなかった。時々臭い瘴気をまき散らす樹海の生物が、どうも苦手だったのだ。

ようやく60階までたどり着いた。

「あれは、……」

教室内に授業中だというのに、堂々と居眠りをしている生徒が数人いた。溜息をつきたくなる。いつの時代も子供というものは変わらない。

「確か、ここのクラスは、4時間目は体育だったのか。」

体育教師はあのビクターだ。散々しごかれたに違いない。このクラスは、特に問題児が多いクラス。

――あの魔法の箒暴走事件のクラスだからな。

なんとも骨の折れる作業だ。こればかりは、魔法に頼ることなく徒歩で歩いていく。今年で200歳になる教頭には、特に階段の上り下りがきつい。グルコサミンが欠かせない年なのだが、思わぬところで思わぬ人物に出会ったりもするので、気が抜けない。これも教頭の職務だ。

ここは、魔法学園、ときとして、予想もつかないことが、例えば暴走や発火事件や時々樹海からの招かれざる客が、こちらの事情を気にもせずやって来る時がある。

70階は平和だった。三年生のクラス授業だったからだ。

「さすが、三年生、みんな落ち着いているな。」

80階、ようやく半分のクラスが終わった。

「何事も、なければいいが……」

あれは、エリーゼ教授の古典魔法のクラスであったが、扉の前には自習との張り紙があった。

「はて、今日は何事かあったかな?」

三年生の古典魔法授業のはずだった。みんな静かにそれぞれ自習をしているが、その中に空席が一つある。

なぜか嫌な予感がした。胸の奥に冷たいものが走った。

そう言えば、1週間前にそれぞれが合わせて、休暇を取っていたのではなかったか。

ガクン

地の底から、なにかが這い出すようなおおきな揺れだった。

揺れのもとを慎重に探り、駆け付けると、エリオット校長がいた。


「校長、今の振動は?」
「私も、今来たところだ。」

「この階段の下でしたよね。ここは100年前に封印されたはずでは……」
「ああ、その通りだ。封印を解けるものは、一人しかいない。」

精霊との魂の契約『パクタ・アニマ』を交わしたものにしか解けないはずの封印。あの日あの瞬間が頭の中で蘇る。忘れたくても忘れられない瞬間だった。

人間界と魔法界との交流は混乱を防ぐため妖精が決めた厳格な掟が存在する。
その禁忌を犯した二人。

妖精のヒカリが霧のように二人を包み込み、そして確実に弾けた。
それは瞬きをしたら終わってしまう程の、あっという間の出来事だった。
契約には魂の代償が伴う。拒否すれば、もう2度と二人は出会うことはない。
死して、解かれる永遠の契約だった。

「まさか……彼女が……そんな、まさか……」


体育会の入り口への階段は、いつにもまして、静かに感じられた。


つづく








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