妹とそんなに比べるのでしたら、婚約を交代したらどうですか?

慶光

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№5 ホルムズがやって来た

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「レイラ……本当に行くのか? それで大丈夫なのか?」

「お父様、私は大丈夫です。侯爵様との関係を維持出来れば、ツインズ伯爵家の将来にも繋がるでしょうし」


 約束の日の当日……レイラ父親のクワッド・ツインズと話をしていた。ローラもその場に居たが、彼女の覚悟を悟り、本当に何も言えない日々を送っていたのだ。

 4か月間のホルムズとの生活で精神的に参ってしまったゆえの行動とはいえ、レイラが犠牲になることに後悔の念が生まれていた。しかも、レイラはそれを良しとしている為に、なおさら、ローラは罪悪感があったのだ。例え、周囲が許してくれたとしても、その罪悪感が消えることはなかなかないだろう。

「ローラに続いてレイラを欲するとは、あのホルムズ様は一体、何を考えていらっしゃるのだ……!」


 ローラとの婚約破棄を踏まえて、父親であるクワッドは一度、ホルムズの元を訪れている。しかし、解決には至らず、レイラと会わせるようにと言われただけであった。レイラとの婚約を確定させなかっただけでも、成功だったのかもしれないが、クワッドの印象としては既にホルムズはレイラとの婚約を確定させているように感じられた。


 父親としては、可愛い妹をホルムズのところに行かせたくはない……しかし、ローラの件もある為に、断ることは難しいのが現状だった。クワッドは自らが伯爵でしかないことを、心から憎んでいた。


「レイラ……」

「姉さん、そんな顔しないで。これが姉さんの為になるんだったら本望だわ。だから、罪悪感とかそういうものは持たないでね」

「……」


 レイラを行かせたくはない……その思いはローラも同じであった。だが、最初に「レイラを選んではどうか?」とホルムズに提案したのは彼女自身なのだ。その為に、何とも言えない想いが脳内を支配している。強く否定することが出来ないのだった。

 だからこそ、ローラはレイラを抱きしめる。


「レイラ……!」

「姉さん、ありがとう」


 姉妹だからこそ伝わる絆……レイラにはそれが感じられたのかもしれない。と、その時だった。彼らのところに執事がやって来たのは。急いでいる様子だ。

「失礼致します、クワッド様」

「どうかしたのか?」

「はい……実は、ホルムズ・ナイトメア侯爵がお見えになっておられます。如何なさいますでしょうか……?」

「なんだと……ホルムズ様が来ているだと……?」


 当初の予定では、レイラの方から行くはずだったのだ。それだけに、ホルムズの訪問は予想外だと言えた。ローラ達は戸惑いを隠せない。どのような展開になるのか、一切、読むことが出来ないからだ。不安感が勝ってしまっている……。
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