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№7 レイラはホルムズの元へ
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「承知いたしました、ホルムズ様。私で宜しければ、是非、婚約させてください」
「れ、レイラ……!?」
レイラのその言葉を前にローラは驚きの声を上げた。彼女としても予想の範囲内の回答ではあったが、声を出さずにはいられなかったのだ。
「流石はレイラだな。よく分かっているじゃないか」
「私がホルムズ様の隣に行くのは運命のようですので」
「その通りだ、本当に賢いなお前は。どこかの鈍間とは大違いだ」
鈍間という言葉にローラは強く反応してしまう。確かに彼女はレイラと比べれば鈍いということにはなるが……それでも人並の行動は可能だった。しかし、ホルムズはレイラと比べた場合のローラが鈍いと罵り、現在に至っているのだ。
レイラが素早く行動が出来るのには、理由があったりもする。それを現在のホルムズは知らない……。この中で知っているのは父親のクワッドだけということになる。
「ナイトメア侯爵……ローラのことを罵るのは、それ以上は止めていただきたい。二人は既に婚約解消が決定しているのですから」
「これは済まなかったな、ツインズ伯爵。では、これからはローラのことを馬鹿にするのは控えておこう」
ホルムズはレイラが手に入ることで上機嫌になっていた。その為、素直に言うことを聞いている。
「ナイトメア侯爵、レイラと婚約するということでよろしいのですね?」
「当然だ……レイラは舞踏会で見る限り、非常に動ける人材だ。運動能力が高いと言えばいいのか。それに明るく、貴族達からの人気も高いだろう? 私の隣に相応しい人間なのだよ」
「……畏まりました、ナイトメア侯爵。レイラ……苦労を掛けるが、申し訳ない」
「いえ、大丈夫ですお父様。私のことは気にしないでくださいませ」
「レイラ……」
「お父様……」
ローラとしては見ていられなかった。クワッドとレイラが抱きしめ合っている姿というのは。自分が言い出したことでもあるので、強く否定できないのも後悔に拍車を掛けているのだ。
また、侯爵家を怒らせるわけにもいかない……レイラとホルムズの婚約は決まったも同然であった。
それからしばらくの月日が流れ、ホルムズとレイラは正式に婚約することになった。
ローラの心情は微妙なままであったが……。
「ローラ、まだレイラのことを心配しているの?」
「お母様……」
浮かない表情をしているローラの部屋を訪れたのは、母親であるマリーン・ツインズ伯爵夫人だった。今は一線を退いてはいるが、魔導士の家系出身でもある。
「お母様、私はやはりレイラに悪いことをしてしまったという、後悔の念が消えないのです……」
「そうね……ホルムズ様との婚約は、貴族内の勢力向上という意味では意義があるけれど、心情的なものを入れるとどうしてもね……」
「はい、私は……」
「心配いらないわ、ローラ」
後悔しているローラを優しく抱きしめるマリーン。自分の娘が信頼できない貴族に奪われたも同然だが、マリーンは大して気にしていないようだった。
「ホルムズ様とレイラ……個人的な見解だけれど、とても婚約関係が上手くいくとは思えないわ。だからローラ……そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「お母様……?」
その時のローラは意味が分からず、首を傾げることしか出来なかった。マリーンの言葉の意味が分かるのは、もう少し先の話になる……。
「れ、レイラ……!?」
レイラのその言葉を前にローラは驚きの声を上げた。彼女としても予想の範囲内の回答ではあったが、声を出さずにはいられなかったのだ。
「流石はレイラだな。よく分かっているじゃないか」
「私がホルムズ様の隣に行くのは運命のようですので」
「その通りだ、本当に賢いなお前は。どこかの鈍間とは大違いだ」
鈍間という言葉にローラは強く反応してしまう。確かに彼女はレイラと比べれば鈍いということにはなるが……それでも人並の行動は可能だった。しかし、ホルムズはレイラと比べた場合のローラが鈍いと罵り、現在に至っているのだ。
レイラが素早く行動が出来るのには、理由があったりもする。それを現在のホルムズは知らない……。この中で知っているのは父親のクワッドだけということになる。
「ナイトメア侯爵……ローラのことを罵るのは、それ以上は止めていただきたい。二人は既に婚約解消が決定しているのですから」
「これは済まなかったな、ツインズ伯爵。では、これからはローラのことを馬鹿にするのは控えておこう」
ホルムズはレイラが手に入ることで上機嫌になっていた。その為、素直に言うことを聞いている。
「ナイトメア侯爵、レイラと婚約するということでよろしいのですね?」
「当然だ……レイラは舞踏会で見る限り、非常に動ける人材だ。運動能力が高いと言えばいいのか。それに明るく、貴族達からの人気も高いだろう? 私の隣に相応しい人間なのだよ」
「……畏まりました、ナイトメア侯爵。レイラ……苦労を掛けるが、申し訳ない」
「いえ、大丈夫ですお父様。私のことは気にしないでくださいませ」
「レイラ……」
「お父様……」
ローラとしては見ていられなかった。クワッドとレイラが抱きしめ合っている姿というのは。自分が言い出したことでもあるので、強く否定できないのも後悔に拍車を掛けているのだ。
また、侯爵家を怒らせるわけにもいかない……レイラとホルムズの婚約は決まったも同然であった。
それからしばらくの月日が流れ、ホルムズとレイラは正式に婚約することになった。
ローラの心情は微妙なままであったが……。
「ローラ、まだレイラのことを心配しているの?」
「お母様……」
浮かない表情をしているローラの部屋を訪れたのは、母親であるマリーン・ツインズ伯爵夫人だった。今は一線を退いてはいるが、魔導士の家系出身でもある。
「お母様、私はやはりレイラに悪いことをしてしまったという、後悔の念が消えないのです……」
「そうね……ホルムズ様との婚約は、貴族内の勢力向上という意味では意義があるけれど、心情的なものを入れるとどうしてもね……」
「はい、私は……」
「心配いらないわ、ローラ」
後悔しているローラを優しく抱きしめるマリーン。自分の娘が信頼できない貴族に奪われたも同然だが、マリーンは大して気にしていないようだった。
「ホルムズ様とレイラ……個人的な見解だけれど、とても婚約関係が上手くいくとは思えないわ。だからローラ……そんなに心配しなくても大丈夫よ」
「お母様……?」
その時のローラは意味が分からず、首を傾げることしか出来なかった。マリーンの言葉の意味が分かるのは、もう少し先の話になる……。
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