妹とそんなに比べるのでしたら、婚約を交代したらどうですか?

慶光

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№9 舞踏会開催

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「お母様……この舞踏会に、レイラが来るのですか?」

「おそらくは来るでしょう。ホルムズ様がいらっしゃるようだから、レイラが出席しないはずがないわ」

「それは確かにそうですけど……」


 ホルムズとレイラが参加する予定の舞踏会……その舞踏会に一足早く訪れていたのは、ローラと母親のマリーンであった。目的はもちろん、二人の様子を窺う為だ。ホルムズとレイラの婚約が成立し、レイラと会える機会が減ってしまったので、こういう所で様子を見るのが最も効率的だとマリーンは考えていた。

 ローラも妹のレイラのことが気になっているので、ついて来たのだった。

 舞踏会は既に始まってはいたが、まだチラホラと貴族が居る程度だ。途中からやって来る者も多いと言うことになる。まだ、ホルムズとレイラの姿もなかった。


「お母様、緊張致します……」

「あら、ドレス姿とても良く似合っているわよ。とても素敵だわ……それだけの格好をしていたら、素敵な殿方から声を掛けられるかもしれないわね」

「あ、ありがとうございます、お母様。そう言って貰えるのは嬉しいです」


 マリーンはお世辞を言ったわけではないが、ローラは自分の魅力に気付いていない。お礼は言ったが、あまり本気にはしていなかった。既に何名かの貴族が彼女を見ているとも知らずに……。

 いつ声を掛けられてもおかしくない状況だと言えるだろう。彼女と面識のある人物も居るのだから。


「それにしても……レイラは本当に大丈夫でしょうか? 何か酷い目に遭っていないか心配になってしまいます」


 ローラの頭の中はレイラのことでいっぱいだったのだ。自分の提案でホルムズとの婚約が決まってしまったようなもの……その後悔は一朝一夕で消えるものではなかった。なぜあんなことを言ってしまったのか……そう言った自問自答が繰り返されるのだ。


「レイラが酷い目に遭う? 考えられないわね。そう言えばローラは知らなかったかしら? 私は魔導士の家系なのよ、今でこそ一線を退いているけれど」

「いえ、それは存じておりますお母様」

「そう、それなら安心ね。これはおそらく知らないだろうけれど、レイラはその魔導士の能力に覚醒しているの。だからこそ、他人とは違う運動能力を有しているのよ」

「そ、そうだったのですか……?」

「ええ、おそらくはホルムズ様も知らないでしょうね。ホルムズ様の驚く様が今から楽しみだわ」

 マリーンがレイラに対して心配していない理由はそこにあったのだ。レイラが人より優秀だ、素早く行動が出来る秘密……それを誰よりも実感しているのは、同じ魔導士である彼女だからだ。

 その後、レイラとホルムズの二人は舞踏会会場に姿を現すことになり、いよいよ、役者が揃った。
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