異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

文字の大きさ
22 / 119
2章 魔法使いと戦争

20.「ただいま」

しおりを挟む

 剣の先端が突き刺さり、血しぶきが飛び散る。
 これで何人目だろうか。
 数え切れないほど殺した。
 そこらには何百人という人の死体が転がっている。
 全部俺が殺した。

 時々、俺はなんのために生きているのか、とふと思う。
 これは俺が本当にやらなければならないことなのか、と。
 若くして剣術が超級になった時からそれを考え始めた。
 俺は何のために生きているのだろう?
 俺の使命は何なのだろう?

 その答えは今でも出ていない。
 当分出ないだろうし焦る必要もないと思う。

 「戦士長!後ろ!」

 そんなもの言われなくてもわかっている。
 殺気がバレバレだ。
 俺は後ろも向かずに斬り殺す。
 生命が1つ、途絶えた感覚がする。

 いつからだったか。
 俺が戦場の悪魔と恐れられるようになったのは。
 若き日の俺はただ武勇を立てたくて人を殺しに殺した。あの頃は天狗になったものだ。
 それから戦場を歩き回り、ついにはそう呼ばれるようになった。そうだ。20歳のことだった。

 そしてあの時のことは忘れるはずもない。
 天狗になっていた俺は、史上最強の一人と世に名高い火神ガリウスに喧嘩を売った。
 結果はもちろんボロ負けだった。
 斬ることも、ましてや触れることさえできなかった。
 そしていいように遊ばれ、最後は彼の慈悲によって生き延びた。
 俺は火傷だらけの体とズタボロになったプライドを引きずって、必死に逃げ惑った。

 そんな時、領主様と出会った。
 おそらく悪名は知れ渡っていたであろう俺を、領主様はなんの分け隔てなく治療し、城にかくまわせてくれた。
 俺に恨みをもった者どもが押しかけてきても、貴族どもが引き渡せと言ってきても、領主様は俺を守ってくれた。

 そして俺は初めて人に仕えたいと思った。
 この人ならば命を捧げてもいいと。
 俺が騎士として仕えたいと言った時も、周りの猛反対も気にせず喜んで了承してくれた領主様を俺は一生かけて仕えていくつもりだ。


 ーーーーーーーーーーーー


 「戦争は終わった。兵役ご苦労であった。そなたらに帰還の命をだす」

 いきなり戦争が終わった。
 どうやらウルスア領で大きな戦いがあったらしく、シリル公国が降伏したとのことだった。
 みなが心配だ。

 それに、俺にはもう1つ心配事が増えた。
 息子だ。
 血は繋がっていない。
 それでも俺の息子だ。
 息子はとても強い。最近では俺も勝てないんじゃないか、と思わせる強さになってきた。
 もちろん経験不足は感じる。しかしそれをカバーしようとする知恵がある。
 息子の成長は速かった。今まで見てきた誰よりも才能があった。
 それは恐らく俺よりも。

 だから俺のように道を踏み外さないか心配だった。
 そしてまだ子供だ。いくら強いと言っても子供では困難も多々あるはずだ。
 まだ俺が守ってやらねばならない歳だ。
 そんな息子の大事な時に近くにいないとは...。
 息子は無事だろうか。怪我はないだろうか。ちゃんと暮らせているだろうか。
 などと心配してしまう。俺も立派な親バカになったものだ。


 ーーーーーーーーーーーー


 領主様の城が見えてきた。
 薄々気づいていたが、攻撃の跡がある。
 塔は崩れ、かしこに土で補強した後が見られる。
 やはりここも戦場になったのか。

 気づくと俺は薄汚れた城を目指し走っていた。
 みんなは大丈夫だろうか。領主様は、俺の部下は、息子は....。


 まず最初に騎士が7人死んだのを聞いた。
 みんな俺を慕ってくれていた大切な部下だった。
 しかし重傷者を含めかなりの者が生き残った。それだけでもよかった。

 次に領主様一家の無事を聞いた。
 よかった。あの方々には恩がある。まだ返したりていない。
 俺はその一報を聞き、とても安心した。

 しかし領主様からあることを聞いても、一目見るまで不安なことがあった。
 それに反応して勝手に体が動き出す。
 早く無事を確認したい。

 俺はある部屋のドアを強引に開ける。

 ——そこには俺が誰よりも無事を確認したかった人が、確かにいた。

 「・・・ただいま」

 「おかえり」

 そう言いながら俺に笑いかけるレイの顔を見た瞬間、俺は長年の疑問がようやく解消できたのがわかった。

 ああ。俺は息子の...レイの、守るべきこの笑顔を見るためだけに生きているのだと。
 この笑顔を守ることが俺のやることなのだと。
 いくら親バカと言われようがどうでもいい。
 血が繋がってなかろうがどうでもいい。
 ただ俺は家族を守りたいだけなのだ。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...