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5章 奈落の底の魔法使い
51.無光の暗闇
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夢を見ていた。
それは戦争で駆け抜けていく夢。夢の中で俺が通り過ぎていくたびに人が死に、死体が積み上がる。
見ていて良いものでは無かったが、自分の体でもあるのに止められなかった。
ーーーーーー自分の体?
いいや違う。これは決して自分の体なんかじゃーーー
「起きろレイ!!」
その声に反応して思わず飛び上がる。混濁した意識が頭を回っていた。
さっきまで何の夢みてたっけな?
思い出せない。思い出そうとして鍵がかかったみたいに思い出せないのだ。
「おーい。もしもし?見えてますかー?」
ぶちの猫が俺の前でブンブン手を振る。
てかここどこだ?
一見さっきまでの洞窟に似ているが、何か重苦しい。
ーーーそういえば戦闘はどうなったんだ?
「裏切られたんだよ」
唐突に、マーブルがそう言いだした。
「いや何を言ってーーー」
「あの魔物を倒した後、生贄を差し出せと言われたんだ。そしてあの2人はレイを差し出した」
「・・・・は?」
あの2人が?
いやまさかそんなはずは無い。2人とも仲良くしていたし、そんな差し出すような真似するか?いや、絶対にしないはずだ。
「信じるも信じないのもレイの自由だけど今ココにいる理由に目を背けたらダメだよ」
・・・なるほど。マーブルの言う通りかもしれない。生贄云々はともかく状況がわからない今、むやみに行動するのは命取りだ。
それに"生贄"にするという事は、生贄に捧げる何かがいるという事だ。慎重に行動しないと....。
俺は静かに立ち上がるとほぼ真っ暗な洞窟内を見渡す。
体の傷はマーブルが治してくれたようでほぼ完治していた。
それにしても不気味だ。
やけに静かすぎる洞窟。しかし無闇に照らしたり行動は出来ない。さて、どうするか。
『取り敢えずこの空洞全体照らしてみたら?僕的には何もいないよ?』
空気を読んで心で喋るあたりマーブルは優れている。
しかしそうか。ま、一度やってみよう。魔力もまあまあ回復しているしな。
「光天」
光属性の超級魔法、広範囲を短時間光らす魔法だ。
光の玉が上空に上がっていき、そこから光の輪をどんどん広がらせていく。
みるみる空洞内が明るくなっていった。
「・・・確かに何もいないな」
明るく照らされた空洞、ざっと体育館ぐらいの大きさの中には何も無かった。
岩が凸凹しているだけだ。
短時間の魔法なので直ぐに光が失われていく。そのとき、何やら先に続く道を発見した。
「進んでみるか」
「だね」
今度は懐中電灯程度の光魔法で前方を照らしながら歩いていく。
不気味なほどに静かだ。俺の足音だけが洞窟に反響し、リズムを作る。
まるでホラー映画のよう.....考えるのは止めておこう。
やがて通路も終わりを迎え、2つ目の空洞に出た。
先にマーブルに気配を確認してもらうが無反応だ。
やはり何もいないのか....?
そう思った瞬間、マーブルがビクリと跳ねた。
「マズい!ヤバイやつが来た!」
何やらホラーチックなセリフに咄嗟に近くの岩に隠れる。
「ど、どこだ?」
「わからない。けど強すぎるよ」
そういうマーブルはビクビクしている。何か怖いんですけど。
てかコレ前ばっかりに注目してたら背後にいるやつでは....。
と思ったが怖いので振り返らないでおいた。
「・・・来る」
ズン ズン ズン
マーブルが言った後、鈍い音が響き渡る。
まるでマンモスが来たような音だ。
まあまさかマンモスのわけーーー
「パァオオオーーーーン!!!」
マンモス....というか象かよ!
恐る恐る岩の陰から象を覗く。
それは象、というより大きさ的にはトラックのようだった。
ずんぐりとした巨体、荒々しく動き回る長い鼻、動物園にいたら卒倒してしまうレベルの象だ。
そんな象と、ふと目が合う。
「あ、やべ」
急いで岩に姿を隠したときには遅かった。
ドスドスドスドス
白鵬100人分もあるように重い音がどんどん近付いてくる。
『バカか!!』
マーブルから心で罵倒されるがそんな場合じゃない。
戦うしかないだろう。意外と倒せるかもしれないしな。
俺は岩から出ると、マーブルに杖を出してもらう。
マーブルは身につけさえすれば亜空間に物をしまえる。それを利用して普段は杖を閉まっているのだ。....折れたら困るからな。
俺は杖を構えると得意技を繰り出す。
「雷撃!!!」
その瞬間、暗闇に慣れていた目に一気に輝きが焼きつき、思わず目を閉じた。
ズドオオオォォン、と落ちた音がし、俺は象の行方を見守る。
普通なら即死、A級の魔物でも大ダメージの魔法だ。
「パァオオオーーーーン!!!」
しかしそんな魔法をもろともしないように象は雄叫びをあげた。
うん。これは敵わないや。
「逃げるぞマーブル!」
「最初からそうしなよ....」
全力疾走で入ってきた入り口へと向かう。
あそこなら狭すぎて象も入れないはずだ。
ドスドスドスドス
背後から死の重戦車が迫ってくる。
がもう俺は入り口に入った。
俺の勝ちだ!
そう思った瞬間、象は突っ込んできた。
俺に悪い予感がよぎった時、時すでに遅し。
そう。マンモスが通路を破壊しながら迫ってきたのだ。
「いや、ちょっ....」
「パァオオオーーーーン!!」
俺の動揺などどうでもいいようにマンモスが突っ込んでくる。
「マジかぁぁぁああああ!!」
そして俺とマンモスの死の鬼ごっこが幕を上げた。
それは戦争で駆け抜けていく夢。夢の中で俺が通り過ぎていくたびに人が死に、死体が積み上がる。
見ていて良いものでは無かったが、自分の体でもあるのに止められなかった。
ーーーーーー自分の体?
いいや違う。これは決して自分の体なんかじゃーーー
「起きろレイ!!」
その声に反応して思わず飛び上がる。混濁した意識が頭を回っていた。
さっきまで何の夢みてたっけな?
思い出せない。思い出そうとして鍵がかかったみたいに思い出せないのだ。
「おーい。もしもし?見えてますかー?」
ぶちの猫が俺の前でブンブン手を振る。
てかここどこだ?
一見さっきまでの洞窟に似ているが、何か重苦しい。
ーーーそういえば戦闘はどうなったんだ?
「裏切られたんだよ」
唐突に、マーブルがそう言いだした。
「いや何を言ってーーー」
「あの魔物を倒した後、生贄を差し出せと言われたんだ。そしてあの2人はレイを差し出した」
「・・・・は?」
あの2人が?
いやまさかそんなはずは無い。2人とも仲良くしていたし、そんな差し出すような真似するか?いや、絶対にしないはずだ。
「信じるも信じないのもレイの自由だけど今ココにいる理由に目を背けたらダメだよ」
・・・なるほど。マーブルの言う通りかもしれない。生贄云々はともかく状況がわからない今、むやみに行動するのは命取りだ。
それに"生贄"にするという事は、生贄に捧げる何かがいるという事だ。慎重に行動しないと....。
俺は静かに立ち上がるとほぼ真っ暗な洞窟内を見渡す。
体の傷はマーブルが治してくれたようでほぼ完治していた。
それにしても不気味だ。
やけに静かすぎる洞窟。しかし無闇に照らしたり行動は出来ない。さて、どうするか。
『取り敢えずこの空洞全体照らしてみたら?僕的には何もいないよ?』
空気を読んで心で喋るあたりマーブルは優れている。
しかしそうか。ま、一度やってみよう。魔力もまあまあ回復しているしな。
「光天」
光属性の超級魔法、広範囲を短時間光らす魔法だ。
光の玉が上空に上がっていき、そこから光の輪をどんどん広がらせていく。
みるみる空洞内が明るくなっていった。
「・・・確かに何もいないな」
明るく照らされた空洞、ざっと体育館ぐらいの大きさの中には何も無かった。
岩が凸凹しているだけだ。
短時間の魔法なので直ぐに光が失われていく。そのとき、何やら先に続く道を発見した。
「進んでみるか」
「だね」
今度は懐中電灯程度の光魔法で前方を照らしながら歩いていく。
不気味なほどに静かだ。俺の足音だけが洞窟に反響し、リズムを作る。
まるでホラー映画のよう.....考えるのは止めておこう。
やがて通路も終わりを迎え、2つ目の空洞に出た。
先にマーブルに気配を確認してもらうが無反応だ。
やはり何もいないのか....?
そう思った瞬間、マーブルがビクリと跳ねた。
「マズい!ヤバイやつが来た!」
何やらホラーチックなセリフに咄嗟に近くの岩に隠れる。
「ど、どこだ?」
「わからない。けど強すぎるよ」
そういうマーブルはビクビクしている。何か怖いんですけど。
てかコレ前ばっかりに注目してたら背後にいるやつでは....。
と思ったが怖いので振り返らないでおいた。
「・・・来る」
ズン ズン ズン
マーブルが言った後、鈍い音が響き渡る。
まるでマンモスが来たような音だ。
まあまさかマンモスのわけーーー
「パァオオオーーーーン!!!」
マンモス....というか象かよ!
恐る恐る岩の陰から象を覗く。
それは象、というより大きさ的にはトラックのようだった。
ずんぐりとした巨体、荒々しく動き回る長い鼻、動物園にいたら卒倒してしまうレベルの象だ。
そんな象と、ふと目が合う。
「あ、やべ」
急いで岩に姿を隠したときには遅かった。
ドスドスドスドス
白鵬100人分もあるように重い音がどんどん近付いてくる。
『バカか!!』
マーブルから心で罵倒されるがそんな場合じゃない。
戦うしかないだろう。意外と倒せるかもしれないしな。
俺は岩から出ると、マーブルに杖を出してもらう。
マーブルは身につけさえすれば亜空間に物をしまえる。それを利用して普段は杖を閉まっているのだ。....折れたら困るからな。
俺は杖を構えると得意技を繰り出す。
「雷撃!!!」
その瞬間、暗闇に慣れていた目に一気に輝きが焼きつき、思わず目を閉じた。
ズドオオオォォン、と落ちた音がし、俺は象の行方を見守る。
普通なら即死、A級の魔物でも大ダメージの魔法だ。
「パァオオオーーーーン!!!」
しかしそんな魔法をもろともしないように象は雄叫びをあげた。
うん。これは敵わないや。
「逃げるぞマーブル!」
「最初からそうしなよ....」
全力疾走で入ってきた入り口へと向かう。
あそこなら狭すぎて象も入れないはずだ。
ドスドスドスドス
背後から死の重戦車が迫ってくる。
がもう俺は入り口に入った。
俺の勝ちだ!
そう思った瞬間、象は突っ込んできた。
俺に悪い予感がよぎった時、時すでに遅し。
そう。マンモスが通路を破壊しながら迫ってきたのだ。
「いや、ちょっ....」
「パァオオオーーーーン!!」
俺の動揺などどうでもいいようにマンモスが突っ込んでくる。
「マジかぁぁぁああああ!!」
そして俺とマンモスの死の鬼ごっこが幕を上げた。
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