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8章 勇者の国
81ー1.異世界道中膝栗毛1
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シガナの森、通称"人喰いの森"から出発して早1ヶ月とちょっと。渡された食糧はとうに底をつき、その日暮らしの旅が続いていた。
それもこれもあの楽観視な湯婆婆のせいだ。
「ここから一番近い都市ぃ?それはぁヒイラギじゃぁ。歩いてすぐじゃよぉ」
結果、エルフの歩いてすぐは頭がおかしいことがわかった。
どこが歩いてすぐなんだ。もう1ヶ月経ちますけど?都民が知ったら卒倒しそうな感覚だな。
「それにしてもあっついのぅ.....」
日差しよけに黒いマントを被るハクリは恨めしそうに太陽に向けて呟いた。マントが黒色だと逆に光を集めてこんがり卵焼きになりそうなものだが、それは理科の知識がないのでご愛嬌。
俺はただ内心で嘲笑っているだけだ。うん、クソだな俺。
それにしても平凡な道が続く。見渡す限り地平線の彼方まで何もない。ただの荒野だ。
そんな代わり映えしない景色に、クソ暑い気温がプラス。こう、なんかイラついてくる。
隣ではなぜかカルナが太陽に向けて謝ってるし、妖狐のアンは既にへばってin俺の背中だ。
お前年上じゃねぇのかよ。
「ふ、不覚なのだ......」
「そのセリフ10回目だからもう言わなくていいぞ」
もう相手をする気も起きん。
そんな時だった。
急に辺りに低いくぐもった音が響く。天気は晴天、周りには俺たち以外に何ものもいない。
なんなんだこの音はッ!!??
「すまない.....お腹が空いたのだ....!」
いやてめえかよ。
びっくりさせやがって.....。てかアンが一番歩いてないからな!?なんでお前が一番お腹空いてんだ。
グウゥゥゥウ
そこへもう一発絶対消化器官による体内消費力の不足を伝える欲求不足伝令音波が鳴った。
どうせ今度はハクリだろうと溜め息を吐く。
「おいおい、あんまり鳴らしちゃあ鼓膜が破れちまうぜーーー」
「ごごごごごめんさない!わわわわ私ですぅっ!」
俺の自分でも面白くないジョークをかき消してカルナが顔を真っ赤にして手を挙げた。
可愛い。とても100越えの婆さんとは思えん。
しかしそうだな、確かにそろそろごはんどきかもしれない。
「よし、飯にするか!」
「飯はどこにもないけどの!」
「ーーーえ?」
確か4日ほど前に通ったオアシス的なところで2週間は持つぐらいの食糧を確保したはずだ。
まだ4日目だぞ?
という目でハクリを見ると、
「ん」
とアンを指差した。
同時にアンがビクリと肩を震わす。
まさか、まさかそんな某少年漫画のテンプレ展開でありそうなことするはずがないよ.....な?
「わ、私の姿は仮の姿。本来はあの巨大な体なのだ。だ、だから消費量は姿が変わっても同じなのだ」
あわあわしながらアンは答える。
そんな姿も可愛い。思わず顔面をぶん殴ってしまいたくなるぐらいに。
そうか、いつも飯の時にコソコソしていたのはアレだったのか。てっきりホームシックで泣いているのかと.....。
と、その時唯一心配そうな顔をしていた女の子が俺の目を見た。
「ど、どうするんですか!?」
「どうも何も」
俺は一旦言葉を区切った。そしてある人物と声を合わせるようにして、
「「魔物を食うしかないだろ」じゃろう」
「ふぇぇえええ!?」
カルナから可愛らしい悲鳴があがった。アンといえば腹が減りすぎて死んだ魚の目をしている。
お前まじでなんなんだ。
「で、ですけどそんな程よく魔物が現れるんですか!?」
やっぱり不安そうにするカルナの意見は最もだ。確かにいくら魔物を食おうともいなければ話にならないーーーのだが、
「この辺は魔物うじゃうじゃいるぞ?」
そう言うとカルナは首を傾げた。
「で、でも今まで魔物なんか現れました?」
「ああ、俺とハクリで追っ払ってたんだよ。魔力放ってな」
たまに武力行使はしたが。
「そんなことはどうでもいいから早くご飯を持ってくるのだ.....。お腹が、私のお腹が暴れているぅ」
腹を抑えて蹲るアンはそのうち「邪竜心眼!!!」とか言いそうだ。
その時は黒歴史の数々を抑えて将来爆発させてやろう。
俺がそんな優しい(?)未来計画を立てていると、早くもハクリが遠くにいた魔物を1匹引きずって持ってきた。
イノシシに似た大型の魔物だ。
その魔物をハクリは素手で分解しながら魔法を駆使して肉を捌いていく。
俺はその間に魔法で鍋を作ると、ちょっとしたかまどを用意し、さらに炎を焚いて鍋をその上に乗せる。即席の鍋パーティーである。
「て、手慣れている.....」
そんな風景を見てカルナが愕然とした表情を浮かべていたのは見なかったことにした。
俺たちが迷宮内でやっていたことが必ずしも受け入れられるとは限らないからな。
少なくとも王都やウルスア領では魔物は食わなかったし。
「さあ、食うのじゃ!」
ハクリは捌き終わったらしく、大量の肉を鍋に投入した。俺は火の火力を強くし、肉を焼く。
鍋の意味?ただでかいからだ。
「うーん、それにしても中々焼けないな」
肉が分厚いのか鍋の熱伝導が悪いのか....。
「めんどくせぇ。直接火ぃつけるか」
とりあえず火魔法で鍋ごと燃やしておいた。
鍋の意味?なんですかそれは。
しかし少し女の子には過激すぎたかもしれない。まあ婆さんと怪物なんだけどな。
なんとなくちらりとアンを見やると案の定目を輝かせて鍋の周りで踊っていた。
「肉肉肉肉!!!肉~肉~肉肉っ!」
うん、1人は大丈夫そうだ。馬鹿だから。
さてもう1人はーーー
「ちょっと、ここが火力弱いです。えいっ」
なんて言ってばんばん燃やしてた。俺の心配返せ。
それもこれもあの楽観視な湯婆婆のせいだ。
「ここから一番近い都市ぃ?それはぁヒイラギじゃぁ。歩いてすぐじゃよぉ」
結果、エルフの歩いてすぐは頭がおかしいことがわかった。
どこが歩いてすぐなんだ。もう1ヶ月経ちますけど?都民が知ったら卒倒しそうな感覚だな。
「それにしてもあっついのぅ.....」
日差しよけに黒いマントを被るハクリは恨めしそうに太陽に向けて呟いた。マントが黒色だと逆に光を集めてこんがり卵焼きになりそうなものだが、それは理科の知識がないのでご愛嬌。
俺はただ内心で嘲笑っているだけだ。うん、クソだな俺。
それにしても平凡な道が続く。見渡す限り地平線の彼方まで何もない。ただの荒野だ。
そんな代わり映えしない景色に、クソ暑い気温がプラス。こう、なんかイラついてくる。
隣ではなぜかカルナが太陽に向けて謝ってるし、妖狐のアンは既にへばってin俺の背中だ。
お前年上じゃねぇのかよ。
「ふ、不覚なのだ......」
「そのセリフ10回目だからもう言わなくていいぞ」
もう相手をする気も起きん。
そんな時だった。
急に辺りに低いくぐもった音が響く。天気は晴天、周りには俺たち以外に何ものもいない。
なんなんだこの音はッ!!??
「すまない.....お腹が空いたのだ....!」
いやてめえかよ。
びっくりさせやがって.....。てかアンが一番歩いてないからな!?なんでお前が一番お腹空いてんだ。
グウゥゥゥウ
そこへもう一発絶対消化器官による体内消費力の不足を伝える欲求不足伝令音波が鳴った。
どうせ今度はハクリだろうと溜め息を吐く。
「おいおい、あんまり鳴らしちゃあ鼓膜が破れちまうぜーーー」
「ごごごごごめんさない!わわわわ私ですぅっ!」
俺の自分でも面白くないジョークをかき消してカルナが顔を真っ赤にして手を挙げた。
可愛い。とても100越えの婆さんとは思えん。
しかしそうだな、確かにそろそろごはんどきかもしれない。
「よし、飯にするか!」
「飯はどこにもないけどの!」
「ーーーえ?」
確か4日ほど前に通ったオアシス的なところで2週間は持つぐらいの食糧を確保したはずだ。
まだ4日目だぞ?
という目でハクリを見ると、
「ん」
とアンを指差した。
同時にアンがビクリと肩を震わす。
まさか、まさかそんな某少年漫画のテンプレ展開でありそうなことするはずがないよ.....な?
「わ、私の姿は仮の姿。本来はあの巨大な体なのだ。だ、だから消費量は姿が変わっても同じなのだ」
あわあわしながらアンは答える。
そんな姿も可愛い。思わず顔面をぶん殴ってしまいたくなるぐらいに。
そうか、いつも飯の時にコソコソしていたのはアレだったのか。てっきりホームシックで泣いているのかと.....。
と、その時唯一心配そうな顔をしていた女の子が俺の目を見た。
「ど、どうするんですか!?」
「どうも何も」
俺は一旦言葉を区切った。そしてある人物と声を合わせるようにして、
「「魔物を食うしかないだろ」じゃろう」
「ふぇぇえええ!?」
カルナから可愛らしい悲鳴があがった。アンといえば腹が減りすぎて死んだ魚の目をしている。
お前まじでなんなんだ。
「で、ですけどそんな程よく魔物が現れるんですか!?」
やっぱり不安そうにするカルナの意見は最もだ。確かにいくら魔物を食おうともいなければ話にならないーーーのだが、
「この辺は魔物うじゃうじゃいるぞ?」
そう言うとカルナは首を傾げた。
「で、でも今まで魔物なんか現れました?」
「ああ、俺とハクリで追っ払ってたんだよ。魔力放ってな」
たまに武力行使はしたが。
「そんなことはどうでもいいから早くご飯を持ってくるのだ.....。お腹が、私のお腹が暴れているぅ」
腹を抑えて蹲るアンはそのうち「邪竜心眼!!!」とか言いそうだ。
その時は黒歴史の数々を抑えて将来爆発させてやろう。
俺がそんな優しい(?)未来計画を立てていると、早くもハクリが遠くにいた魔物を1匹引きずって持ってきた。
イノシシに似た大型の魔物だ。
その魔物をハクリは素手で分解しながら魔法を駆使して肉を捌いていく。
俺はその間に魔法で鍋を作ると、ちょっとしたかまどを用意し、さらに炎を焚いて鍋をその上に乗せる。即席の鍋パーティーである。
「て、手慣れている.....」
そんな風景を見てカルナが愕然とした表情を浮かべていたのは見なかったことにした。
俺たちが迷宮内でやっていたことが必ずしも受け入れられるとは限らないからな。
少なくとも王都やウルスア領では魔物は食わなかったし。
「さあ、食うのじゃ!」
ハクリは捌き終わったらしく、大量の肉を鍋に投入した。俺は火の火力を強くし、肉を焼く。
鍋の意味?ただでかいからだ。
「うーん、それにしても中々焼けないな」
肉が分厚いのか鍋の熱伝導が悪いのか....。
「めんどくせぇ。直接火ぃつけるか」
とりあえず火魔法で鍋ごと燃やしておいた。
鍋の意味?なんですかそれは。
しかし少し女の子には過激すぎたかもしれない。まあ婆さんと怪物なんだけどな。
なんとなくちらりとアンを見やると案の定目を輝かせて鍋の周りで踊っていた。
「肉肉肉肉!!!肉~肉~肉肉っ!」
うん、1人は大丈夫そうだ。馬鹿だから。
さてもう1人はーーー
「ちょっと、ここが火力弱いです。えいっ」
なんて言ってばんばん燃やしてた。俺の心配返せ。
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