異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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8章 勇者の国

82ー1.異世界道中膝栗毛3

 「あーぁ、やっぱ面白ぇよ....プクク...」

 なにやら目の前の男は笑いが止まらないようである。笑いの沸点低すぎだろ。
 まあそんなことは置いといて、

 「で、お前は誰だ?」

 俺はいつもの冷静沈着な自分を取り戻していた。いや冷静沈着かは知らんけど。

 「俺か?俺は.....そうだな、通りすがりの商人と言ったところだ」
 「あ、そう。じゃあそこの剣士は?」
 「おっ?まさかのスルー?」
 ツッコミ待ちか知らないが、俺にスルーされて狼狽えるバーニング男はほっといて、

 「・・・俺はーーー」
 一瞬、剣士はチラリとバーニング男を見やる。
 「"東の勇者"トールストンだ」
 おうおう、変な答えが返ってきたぞ。
 東の勇者?なんだねそれは。

 「・・・驚かないんだな」
 「まぁな」
 剣士はいかにも意外という風に反応する。
 驚くもなにも知らないのだから仕方がないんだがな。ともあれ高評価でラッキー。

 あの謎のバーニング野郎は大したことないが、この剣士は中々に強い。強い奴は雰囲気でわかるのだ。中にはアンのように雰囲気バカもいるけど。

 「君は?こんなところで何を?通りすがりの旅人というわけでもなさそうだ」
 「いや、通りすがりの旅人だ」
 「えっ」
 「たまたま通りすがってたまたま目に入ったからたまたま助けただけだ。もちろんお礼はしてもらうぜ?」
 「ええっ」
 「まさかただで助けただなんて思ってないだろうな?世の中そんな甘くないぜ勇者サンよ」
 「えええっ」
 THE外道である。
 いかにも良心の塊で困っている人は躊躇なく助けそうな勇者は俺の言葉にたじろいでいた。

 「い、一体君は何者なんだ!」
 何者、だと?

 「ふふふ、俺か?俺はなぁ!見た目は子供!頭脳は大人!その名も!名探偵コーーー」
 「レイ。そいつの名はレイ・スペルガーじゃよ」
 丁度いいところでハクリ登場。人の見せ場をなくし、自分の登場数を多くする。さすがはブラック企業だ。なんたって自給自足に加えて人間タクシーまでさせるんだからなっ!

 「おーおー、随分と引き連れてきたもんだなぁ!しかも全員.....、勝てるか?トールストン?」
 「ははは、ご冗談を」

 ん?今のはどっちの意味だ?
 まあいい。どっちみち負ける気はせんからな。さっきの剣筋を見るに、この勇者はエーミールクラスって感じだろう。まだ若いのにあのお爺に並ぶとはさすが勇者である。
 ま、俺の方が強いし若いんだけどな(体は)。

 「にしても.....随分と羨ましいご身分なことで」
 バーニング野郎は歩いてきたハクリらをまじまじと見てため息をついた。
 それもそうだ。なんたって中身は300歳の美女と、中身は100歳の美少女と、中身は12歳の美幼女がいるんだからな。
 極端すぎだろぉぉぉぉぉおおおお!!!!

 「どうした?そんな顔して?」
 「い、いや現実に打ちひしがれてるだけだ....」
 「現実て....」

 バーニングは呆れ顔で苦笑いをした。剣士の方はまだ動揺している。そういえば馬車の美女さんはどうしたのだろう。馬車のカーテンは閉められ、微動だにもしないところを見ると、どうやら"いない"として通したいのかもしれない。

 「さて、自己紹介もここまでだ。
 礼の交渉といこうじゃないか」
 「礼?」
 バーニングはいとも不思議な顔をする。
 「ああ、助けたんだから当たり前だろう?」
 「なるほどねぇ.....」
 バーニングは苦笑いしながら俺を見る。いや、俺の後ろ・・・・を見た。
 あ、嫌な予感が....

 「なにを要求しとるんじゃ馬鹿者」
 ゴチン、と頭への衝撃。そこにはお怒りのハクリさんがいた。
 「なんだよー。別にいいだろ?これじゃあ、ただ働きじゃないか」
 「ただ働きさせたからのぅ」
 「えっ?」
 「ちょっと来い」
 ハクリは俺の手を取り端っこへも引きずっていく。

 「良いか?あの暑苦しい男はともかくもう1人の男は勇者じゃ。なにかと役に立つじゃろう?」
 「・・・なるほどね」
 勇者といえば地位も名誉もある。今、礼をさせて関係がなくなるのと、今後ずっと俺たちに礼の意識を持たせるのとどちらが得か、という話だ。
 中々ハクリも腹黒い。
 だがそうと決まれば態度も変わってくる。

 「いやはやお待たせしましたね~!もう礼なんかいいっすよほんと!厚意で助けただけなんすので~!ほんと、大丈夫っすよ?」
 「えええええ」
 急に態度を翻した俺に剣士は唖然としていた。
 若者よ。社会とはこういうものなのだ。

 「本当にいいのか?」
 突然の態度転換にバーニングは疑問視しているようだ。
 「ああ、俺たちの信条に反するからな」
 「プクッ...さっきまで要求してたのにか?」
 ギクリ。
 「あああああああああれはだなぁ!あのーそのーーまあーいろいろあったんだヨ」
 我ながらひどい誤魔化し方だ。社畜として働いていた俺の誤魔化しスキルどこいった。 
 「クハハハハ!お前ほんと面白すぎる.....クククク....」
 しかしバーニングはそんなものでも意に止めず、ただ腹を抱えて笑うだけだ。アホでよかった。

 「クククク.....。んじゃあまあそれはわかったけどよぉ、次はこっちの番だぜ?」
 「こっちの番?」
 「ああ、アレ・・どうすんだ?」
 バーニングはあるものを指し示す。

 ーーーそれは凍り破壊されギタギタになっている荷馬車だった。当然中の荷物もギタギタである。
 十中八九俺の流れ弾だ。うむむむ。

 「あ.........アハハハハハハハハハハ!盗賊の仕業じゃないかなぁ?」

 ・・・よし!誤魔化せたんじゃね?我ながらナイス誤魔化し!

 ーーーが、やはり空気を読まない奴がいるもんで、無邪気な声が俺の誤魔化しを粉砕する。

 「なにを言っているのだ!あの氷はレイの魔法なのではないのか?」
 「アンなにを言って」
 「レイこそなにを言っているのだ?」
 嘘や誇張など一切ない純粋な瞳。
 うっ.....卑怯だ.....。

 「お......俺がやりましたぁぁぁああ!」
 アンは尋問官としてやっていけると思うぜまったく....。
 「そうかぁ~お前がやったのかぁ。あの荷馬車は俺達の総財産なのになぁ」
 ニタニタしてくるバーニング野郎。
 そのまま燃え尽きてしまえ。
 「いくら"厚意"で助けてくれたとはいえ全財産を破壊されたんじゃあ商人として死んだも終わりだしなぁ?」
 じゃあ死ねやぁぁぁぁ!とはいえない。
 「・・・てことでちと交渉しようぜ?」
 「ど、どうすればいい?」
 俺が狼狽えるとバーニングはニヤリと笑う。
 なんか嫌な気がする.....!

 「・・・てことで示談条件だ。俺達を近くの都市まで守れ!以上!」
 「・・・え?」
 「要は護衛だ。ただのな」
 「・・・・・・・ん?それだけ?」
 「ああ、それだけだ」
 は、はぁ....。なんだその拍子抜け感。久しぶりにドキドキした俺の高鳴り返せ。

 「クハハハハ!流石に恩人にそんないじめみたいなことしねぇよ!ただお前の表情が面白くてなぁ、ついからかっちまっただけだ!」
 バーニングは豪快に笑うと俺に対して親指を突き出した。

 ・・・なんなんだろう、この殴りたい気持ち。
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