4 / 119
1章 領主ファクトリア家
3.マリアとリーナ
しおりを挟む目隠しを解かれるとそこには広大な屋敷が広がっていた。
まるで城のような洋風の屋敷が連なって建てられている。庭でさえもちょっとした公園のような大きさだ。
「こっちだ」
ガドはそう言うと大きな庭を歩き始めた。
向かうは他の建物から孤立している赤い屋根の建物だ。
他の建物と比べて少し小さいが、それでもちょっとしたアパート程度はある。
俺の心はすでに興奮していた。
こんな景色初めてだ。
初めて異世界に来たという実感がする。
建物の前に着き、ガドは扉を開く。
そこには思っていた赤いカーペットと豪華な内装が———なかった。
中には質素な受け付けがあるだけだ。
「騎士団長ガド、ただいま帰った。」
ガドは受け付けの金髪の美人な女性にそう言った。
「お帰りなさいませ。早速ですが、領主様から命令を授かっています。帰り次第、執務室に来い、ということです。内容についても執務室でお話になるようです」
機械のようだ。
流れるように話す女性にそんな感想を抱く。
「わかった」
ガドは簡素にそう返すと俺をちらっと見た。
「この子は任務先で拾った子なんだが領主様の意見を聞きたい」
拾ったって。犬か俺は。
「了解しました。ではその子は一旦ここで預かりますね」
彼女は俺をちらっと見ると少しにやける。
ゾクっとする。
もしかしてこの人ショタコン?
「ガド様は先に執務室へとお願いします」
「わかった」
ガドはそう言うとぐるっと回り入ってきた扉から出て行った。
おいおい、一人にしないでくれ。
この人と一緒とか貞操の危機を覚えるんだが。
「ではあなたはこちらへ」
彼女は俺の手を引くと奥の部屋へ入って行った。
俺は高そうな椅子に座らせてもらうと、彼女が自己紹介を始めた。
「私はファクトリア家の受け付け係、マリアと言います」
「わ...ぼくは青山零といいます」
試しに甘い声で自己紹介してみる。
マリアさんの顔がニコニコと崩壊した。
やるんじゃなかったと悟った。
「あなた、どんないきさつで現れたのかは知らないけど敵ではなさそうね。
だって....こんなに可愛いもの!」
突然マリアさんは俺に抱きついてきた。
フワッと花の香りがする。
やはりマリアさんはショタコンだったようだが、しかし俺も美人に抱きつかれてまんざらでもない。
マリアさんも満足、俺も満足。
これぞ理想の関係だな!
なんて思っていたらコンコン、とドアが叩かれた。
するとバッとマリアさんは俺から離れ平静を保っているようなフリをして
「どうぞ」
ショタコンというのは秘密ということですね。
入ってきたのは茶髪の若い女性。これまた美人だ。
流石異世界。レベルが高い。
「あら...?その子は?」
「迷子の子らしいわ。どうすればいいかしら」
マリアさんは俺をちらっと見て言った。
「へぇ。とりあえず領主様の意見待ちかしら?
それにしてもマリア、人の趣味に口出ししたくはないけれど......
ソワソワしすぎよ」
「なっ!!」
マリアさんの顔が一瞬で赤くなった。
バレテーラ。
「隠してるつもり?
結構みんなにバレてるわよ。子供好きってこと」
「なっ!!」
マリアさんに動揺が走る。
実はポンコツだったらしい。
まあただの子供好きならいいんですがね。
「まぁ手を出さないようにね。問題になるから」
もう手を出されかけましたが。
「出さないわよ!!」
出しかけてましたが。
「コホンッ!」
流れを変えるようにマリアさんが咳払いをした。
顔が真っ赤だ。手汗も凄い。
っていつの間にか手を握られているんだが。恐怖。
「えっとこちらの女性は私と同じ受け付け係のリーナよ」
「こんにちは!リーナです!私はマリアと違って抱きついたりしないから安心してね!」
全部バレとるやないか。
そもそも8歳ぐらいの子に言うことではない気がするが。
「ちょっと!リーナやめなさいよ!この子も困ってるでしょ」
「はいはい。
それで領主様の指示次第だけど、それまでこの部屋でゆっくりしてね!」
リーナさんはそう言うとウインクして隣の椅子に座った。ウインクが絵になる美人だ。
まあそれは置いといて質問するとしよう。
何も知らないスラム街のガキとか思われても嫌だしな。
「すみません。ここってどこなんですか?」
できるだけ純情な子供っぽさを出しながら聞いてみたら正面に座っているマリアさんの顔がとろけた。
言ったそばからである。
「ここはねアリア王国ウルスア領よ。
治めているのは我らが領主ボルトン・ファクトリア様!
とっってもいい人よ!」
リーナさんの強調的には領主様はいい人っぽい。
ついでに8歳の子供好きで迷子の子供を養子や客人にしてくれたりする人だったらいいな。
「さっきのガドさんはどういう人なんですか?」
とりあえずガドについても聞いておく。
強そうなのでいざとなれば頼りになりそうだ。
「んーガドさんはね、とっても頼りになる人よ。
少し抜けている部分もあるけど剣の腕前は達人なんだから」
見た目通り強いらしい。
異世界の強さがどの程度なのかは知らないが。
岩とかちょん切るのだろうか。
「ガドさんに会った時異常に警戒されたんですがなぜかわかりますか?」
あの時のガドはとても子供に対する態度じゃなかった。
そしてマリアさんとも会った時"敵ではない"と言われた。
つまり敵がいるということだ。
「うーんと、この国は今ね隣国のシリル公国と戦争しててね。
時々いるんだよ。子供を暗殺者に仕立て上げて油断させて殺す悪い大人が」
なんて物騒な話だ。
確かに歩いていたら突然現れた全裸の少年とか怪しむよな。暗殺者とかは別として。
「それにしてもこんな事みんな知ってるけど、やっぱり記憶喪失なのかしら?」
「かもしれないわね」
心配そうな声色。
マリアさんとリーナさんはお互いにそう思っているようだ。
「僕は...」
バンッッ!
記憶喪失ですと何食わぬ顔で言おうとした瞬間、部屋に1人の男が入ってきた。
84
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる