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1章 領主ファクトリア家
4.領主ボルトン・ファクトリア
しおりを挟む「やぁ!こんにちは!」
入ってきたのは輝く笑顔を見せるスレンダーな若い男だった。
「マリアもリーナも元気そうだね!」
キラリと光る前歯。
どこからか聞こえる真夏のjamboree。
湘南の海にいそうな男である。
「はい、これも領主様のおかげです」
そう返すリーナは若干嬉しそうだ。
強調した紹介といい、リーナは領主様のことが好きなのかもしれない。
まぁどうでもいいが。
「相変わらず硬いなあ、もっと砕けていいんだよ?」
目上からそう言われても困るのが世の常。
マリアも俺と同じことを思っているようでげんなりしていた。
まぁマリアはショタコンだしな。
領主様はイケメンだけど守備範囲外なのかもしれない。
「おっ!君が迷子の少年かい?
私は領主のボルトン・ファクトリアだ!」
彼は基本的に声がデカい。俺はテンション高いやつは嫌いなんだ。疲れるからな。
「ガドから話は聞いてるよ!君、名前は?」
本当に話聞いたのか?
「青山 零です」
「アオヤマレイ?変な名前だね?」
人の名前を変とは失礼な。
俺からしたらお前ら全員変だぞ。
ドンッ
いきなりドア付近で音がしたので自然と目がいく。
そこには壁に頭をぶつけているガドの姿があった。
少し顔がこわばっているように見える。
少し空気がほんわかした。
「失礼」
ガドは低くそう言った。
その声は何か緊張しているような声だった。
領主様がいるので緊張しているのだろうか。
「....うん。そこでアオヤマレムくん!君に一つ提案があるんだ!」
「レイです」
「え?」
「だから、レムじゃなくてレイです!」
俺は青髪のメイドじゃないんだ。
色んな人に怒られそうなのでやめて欲しい。
「あぁすまない!まぁそれで提案なんだけど......君、養子にならないか?」
「!?」
突然すぎて呆然とした。
どう思えばそうなるんだ。
ガドに詐欺師まがいに話をしたからか?
まあしかしそんなことはどうでもいい。
金持ち養子パターンが到来したことに内心ではウハウハする。
しかし、あくまで冷静にだ。
ここで喜ぶと狙い澄ましたスラムのガキになる。
冷静に。何も知らない子供になるんだ。
「養子....ですか?」
完璧だ。
困惑しているがちょっと興味はある子供に見えたに違いない。
「そう養子だよ!記憶も行くあてもないんだろう?」
「そうですね。ではお世話になります」
特にグズる要素もないので二つ返事で答える。
ふふふ、これで金持ち養子だ!
「おお!よかった!よかったねガド!」
「ほぇ?」
思わず変な声が出てしまった。
ガド?ガドが何か関係あるのか?
もしやこれは周到な罠なのか?
「えーっと...養子というのは領主様の養子ではないのですか?」
「アレ?勘違いしてた?言ってなかったっけ?」
ボケーととぼける領主様。
どうやらミイラ取りがミイラになるを地で行ってしまったらしい。
「ガドじゃまずかったかな?」
領主様は鋭い目を向けてきた。
もう「いいです」しか言えない。
「いえ、嬉しいです」
「ガドもいいよね?」
「あ...はい。自分に務まるかは心配ですが自分でいいなら」
「もう!真面目だな~!みんな、ね」
思い描いていたパターンじゃなかった。
が、ガドも騎士団長だ。それなりの権限もあるし金もあるだろう。
突然子供の姿でこんな世界に飛ばされたんだ。
保護者と居場所は必要だ。
「じゃあ私はもう行くよ!」
そう言うと領主様は颯爽とドアから出て行ってしまった。
嵐のようなやつだ。まったく。
「それじゃ、改めて騎士団長のガド・スペルガーだ。よろしく頼む。
その......息子よ」
「よ、よろしくお願いします」
なんか違うが許容範囲だ。
「それでなんだが、養子になるということは名前を変えなければならん。いいか?」
「大丈夫です」
名前ぐらい別にいい。今の名前に愛着もないしな。
「では、お前はいまからレイ・スペルガーだ」
「おお」
「嫌だったか?」
「いえいえ気に入りました」
思ったよりかっこいい。
アオヤマスペルガーとかダサネームになるかと思ったが、全然アリだ。
「とりあえず今日から家族だ。よろしく頼むレイ」
「はい。よろしくお願いします」
こうして俺は青山零からレイ・スペルガーになった。
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