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フェーズ2
18.第4王女隊
しおりを挟む「へへ、剣を置きな。冒険者ならわかるだろう? この数に対抗するのは無理ってことはよ?」
無精髭の言う通り、戦場で数は絶対だ。量より質、なんて言うが結局は量なのである。
つまりこの圧倒的無勢の中で闘う価値はない。
まあ、降参したところで殺されるのは目に見えてるからあらがうけどな。
「ユリエ、ライラ、後ろ下がっとけ。俺がやる」
「で、でもゆうまくん.....」
「大丈夫だ、俺を信じろ」
キラリと光る俺の歯。この瞬間であれば誰もが俺に惚れるだろう。
まあ死なないから無茶振り特攻が出来るだけの話だがな。
「ほう、男気があるじゃねえか。だがな、何も俺たちは略奪だけが取り柄じゃねえ。ここはひとつ取引をしようじゃねえか」
無精髭からのいきなりの提案。脳筋と思っていただけに少し動揺するも、取り繕う。
「取引?」
「ああ、俺たちは無差別に襲ってる訳じゃねえ。理由があるんだよ」
「理由?俺たちにか?」
「ああ、わかってるだろうなあ?己のせいで仲間に危険が迫ってることぐらい」
無精髭の言葉に、背後でビクッと反応するのを感じた。
まさか......いやまさかな....。
「何も言わねえのか? けっ、仲間を盾にして守ってもらおうってか。じゃあそこで見ているんだな、仲間がお前のせいで殺されるところをよお?」
「何か知らんが交渉は決裂ってわけだな.....?」
無精髭は返事の代わりに気味の悪い笑みを浮かべる。そして鮮やかに剣を抜いた。
コイツ、相当の手練れだ。
「へっ、悪いな兄ちゃん、死んでくれや?」
その言葉が引き金となって、俺と無精髭は同時に地面を蹴ったーーーー
「待ちなさいよっ!!!!!!」
「ーーーー!?」
2人の動きがピタリと止まる。声の主は間違いなくライラだった。
「アンタらの目的は私でしょ!? いいわ、血なんてみたくないもの。何処ぞへでも連れていきなさいよ!」
「ラ、ライラちゃん....?」
戸惑うユリエを押しのけ、ライラは無精髭の前へと出る。俺とは目も合わさなかった。
「どういうことだ?」
ライラの背中に問う。
「・・・」
が、ライラは答えなかった。
なんなんだ?一体?
「はっ、話がついて助かる。無益な殺生はあまりしたくないもんでね」
無精髭はニヤリと笑うとサッと手を挙げた。
子分らしき男が2人、縄を持って近づいてくる。
「縛って連れて行け」
「はっ、親分」
成されるがままに事が進んでいく。いいのか? 何が何だかわからないが、このままライラは連れていかれていいのか?
いや、良いわけないだろう?
ここが、仲間として仲間を守る時ではないか。何をボケーっとしている俺!ライラを守れるのは俺しかいないだろう!
「ちょっと待....」
「ちょっと待ってくれるかしら?」
「んぇ!?」
俺の出番はなくなった。
「あぁん?誰だよテメェ?」
「私は第4王女のペペロンチーナですわ」
「第4王女ぉ?」
無精髭が怪訝そうに王女を見つめる。
「その取引、この私が許せませんわ。そもそも盗賊などこの国には無用! 即行立ち退きいたしなさい!」
「・・・お、おぉ!」
盗賊相手にも物怖じしない物言い。流石の無精髭も少したじろいでいる。
「どうしても盗賊行為がしたいのであればお好きに。ただし....」
王女の言葉に合わせて騎士が剣を抜く。不敵に笑っている騎士はいかにも強そうだ。
「・・・・けっ、わかったよ」
唾を吐き、無精髭はしぶしぶという形で下がっていく。
やけに物分かりの良いやつだ。
「・・・だがなあ、大司教様はお前を欲しがっているということを忘れるなよ?」
途中で無精髭は振り返り、そんなことをライラに向かっていう。またライラは体をふるわした。
大司教様? 欲しがっている? 何も知らない俺にはさっぱり理解できない。
だが、取り敢えず解決したのも事実。
盗賊団はすぐに気配を消し、あれだけ大人数だったのにも関わらず一瞬で姿が見えなくなった。
それだけの連携と強さ。まともに戦っていれば負けていたのはコチラだっただろう。
「助かりました。助けてくれてありがとうございました、王女様」
「これぐらい王女として当然の責務ですわ」
それをシュペトロナンチャラに言い聞かせてやりたいよ.....。
☆☆☆
当然、盗賊が出たことで俺たちの時間はロス。特にギルドからの補償もなく、入賞することなくイベントは幕を閉じた。
あれだけ楽しみにしていたのに残念な幕引きである。
が、今はライラの疑念の方が大切だ。
「ライラ、説明してくれ」
夕方、街並みが赤色に染まる頃、少し路地に入ったところで俺とユリエがライラを挟む。王女一行は少し離れたところで休息していた。
ちなみに王女一行は時間ロスしたのにも関わらず3位入賞。俺たちの倍以上狩っていた。強さは本物のようだ。
「そう、よね......」
ライラは肩を落としながら溜息を吐く。言いたくないのだろう。しかし、仲間として秘密は極力無くさないと信頼に関わる。疑念を抱きながらのパーティなどすぐに壊滅してしまう。
「私は今までずっとユウマたちを騙してきたわ。それどころか武器屋の師匠も。悪いとは思ってる。でも、仕方なかったの....」
いつもは気高いライラ。しかし、そんな影は微塵も感じられないほど、意気消沈している。
そんなライラは衝撃の事実をボソリと言った。
「私は人間じゃないわ」
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本編は主人公が面白くて続きが楽しみです!
ご指摘ありがとうございます。本当に何で自分でも気付かなかったのか.....。修正を加えておきます!
感想もありがとうございました、励みになります!
いつも楽しく読ませていただいております。今回は番外編がお気に入りから読むときに不便と思い報告させていただきました。最新話を読み、しおりを挟んだ後見るとしおりが19話最新が20話と紛らわしいので番外編をプロローグの上か、下あたりにおいていただけるとありがたいです。これからも頑張ってください。応援しています。
それは大変失礼しました汗 すぐに変更させていただきます!
感想と報告、とても励みになります!ありがとうございます!
祝!PTメンバー追加
しかしユリエの愛が重いですな。自分が呪霊に拘束プレイやられるんなら大歓迎だったりするんでしょうけど