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フェーズ2
17.討伐イベント 後編
しおりを挟む「あら?まだ生きていたのかしら。もう死んでいたかと思っていたのに」
ガサガサと揺れる草むら。ゆっくりと分け入って出てきたのは王女様だった。
確か、スパゲティみたいな名前の人だ。
なんだっけ。ぺぺ....ペペロンチーノ? いや、それじゃあただの麺である。
「お前は....ペペ....ペペロン....ぺ....」
「ゆうまくん、ペペロンチーナ様です!」
「お前はペペロンチーナ!・・・様!」
王女様は突然のテイク2にも動じず、扇子で口元を隠しながら冷笑を浮かべている。
さっきの矢からのあの発言。俺たちを狙ったのは彼女で間違いなさそうだ。
「あら、御機嫌よう冒険者の方々」
「ーッ、何が御機嫌ようだ! いきなり命を狙ってきて!」
影から狙うなどと卑怯千万。王族にあるまじき行為に流石に立腹する。
が、王女様は首を傾げた。
「・・・? なんのことかしら?」
「は?スッとぼけるな!"まだ生きていたのかしら?"て言ったのは誰だよ!?」
「・・・なんの話でしょう?」
こいつ、スッとぼける気か。
「いえ?本当に・・・私達はただーーーー」
『グュオオオオオオオオ!!!!』
「「ーーーッ!?」」
完全に虚を突かれた形で巨大なモンスターが背後の茂みから現れた。ダイアウルフより、一回り、いやふた回り以上は大きい狼で、耳からは血が流れている。
「ーーーやっと出てきましたわねオーガウルフ!! 成敗してあげますわ!」
「・・・・ん?」
オーガウルフ? さっきから話が噛み合っていない?
俺たちを置いてけぼりで興奮した王女様は扇子をモンスターへ向け、ブツブツ何かを唱え始めた。
「創造せよ火の神よ! その名において我が手に力を宿し、灼熱の業火を顕現させよ!」
そして突如扇子の先から魔法陣が形成された。禍々しい唐紅で悍ましい模様が描かれている。
その魔法陣から、段々圧迫するような重みが伝わり、空気がジリジリと肌を焦がしてくる。そして魔法陣は光り始めた。
まさか・・・これが魔法?
「死の火槍!!」
王女のその言葉で魔法は完成し、魔法陣から灼熱の火炎が発射される。
そして、その火炎は俺たちに危害を与えることなく通過し、巨大オオカミにぶち当たった。
オオカミは吹っ飛ばされると同時に燃え上がる。
『グュオオオオオオオオ!!!!??』
悲痛な叫び声で戦いは加速する。
・・・がそれと裏腹に、俺はやけに冷静になっていた。ほら、人が興奮しているのを見るとやけに冷めてしまう時があるだろう?そんな感じ。
「・・・犯人は王女らじゃない?」
つまり「まだ生きていたのかしら?」はオーガウルフに向けられたものであって、俺たちでは無い。
つまり、王女様は無罪。犯人は別にいる!!
「もういい。あとは頼んだわ」
「承知! お嬢!」
王女様の方ではどこからともなく現れた騎士によって、オーガウルフは真っ二つにされていた。
☆☆☆
「・・ゴホンッ、王女様たちはライラを狙った犯人ではないのですか?」
「それは・・・どういうことかしら?」
すっかり疑問顔の王女様に含みをもたせながら説明する。
すると、呆れたようにため息をついた。
「私がそんなことするわけないでしょう?」
「そうだ、我らのペペロンチーナ様がそんな事するわけなかろう! 実際、我らはオーガウルフの討伐をしていたわけであるしな!」
「そりゃ・・・そうだな」
「そうです!」
王女様と騎士の2人、さらに後から現れた王女様お付きのメイドっ子は王女様の潔白を主張した。3人PTのようだ。
確かにイケメンぐぬぬの騎士からは誠実そうなオーラが。凛とした王女様からも某第6王子のようなクズオーラは感じられない。
茶髪のメイドっ子も無害そうだ。
「・・・恐らく貴方は『あのゴミ王族だから』と私を疑ったのでしょう?」
「まあ、そうですね」
即決で素直に答えると、騎士の方が遺憾だとばかりに顔を歪めた。
「それは我ら第4王女隊にとっては無関係のことなのだ。確かに国王様や他の王族は噂通りの腐敗した人物。
しかしペペロンチーナ様は違う!」
「そうです! 国民を第一に思い、不正や賄賂を許されず、唯一王女としての責務を全うしているお方なのです!」
「すげえまともだ!!!!」
あの伝説的王家にもそんな人がいたのか!
「私欲にまみれた大臣のせいでペペロンチーナ様の人柄は隠され改ざんされているが、それは間違いなのだ!本当は素晴らしいお方なのだ!」
「そうです!」
「あ、貴方たちは褒めすぎよ・・・・」
若干王女様のほおは照れたように緩んでいる。なんだ、本当に良さそうな人じゃあないか。
すると、ユリエがコソッと耳打ちしてきた。
「あのメイドさん、メイド長から超信頼されている人ですから信用できると思いますよ♪」
うん、俺はメイド長知らないんだけどね?
だがユリエがそんなに言うのなら信用できるんだろう。
そんな王女様のお付き、メイドっ子は茶髪の髪をなびかせる。
「ちなみに貴方たちは召喚されたクスノキ様、そして面識はありませんがメイドさんだったコウサカさん・・・ですよね?それにそちらは3つ星冒険者のライラさんとお見受けします!」
「・・・なんでわかった!?」
メイドっ子ちゃんはふふん、と笑う。
「私にかかれば朝飯前です」
「すげえ子いる!!!」
アレか、データベース的な役割なわけだなこの子は。
後ろでユリエが「負けてられません・・・」とかぐぬぬしちゃってるよ。
「私はペペロンチーナ様の専属メイドをやっています、メイナと申します! 情報分野ならお任せを!」
「よろしくお願いしますメイナさん」
この子もなかなかの美人。
だがしかし、おいおい・・・美人美人イケメン。なんだこの最強PT。反則だ!
いや、待てよ? こっちも天使と女神が・・・あ、ダメだ。1人、足を引っ張ってる奴がいやがる。全く、何やってんだよそいつ。
ちなみに俺である。
「ちなみに俺はペペロンチーナ様の専属騎士!ヤマ・・・」
「あ、聞いてないんでいーです」
「おおう!?」
イケメンオーラ溢れる騎士さんは俺の溢れんばかりのジェラシーに黙っていてくれ。
「・・・しかしじゃあ、一体ライラを狙ったのは誰なんだ?」
結局王女様達ではないなら話はフリダシだ。
すると、王女様たちは心当たりがあるようで、
「イベントに乗じて盗賊行為をする不逞な輩なら・・・メイナ、何かある?」
「そういえば最近『攫い屋』の情報がありますね。人を攫っては奴隷商に売りさばく不埒な連中です」
「攫い屋・・・・」
いつか冒険者ギルドで見せられたアレか。確か無精髭に目つきの悪い目。そして何より隻眼の眼帯男だった記憶がある。典型的な海賊みたいなイメージだ。
取り敢えず犯人が攫い屋だと仮定する。
確かにライラとユリエは控えめに言って女神と天使だ。攫う価値は十分にある。しかし、殺しては元も子もないんじゃあ・・・?
だが攫い屋にしても、
「攫い屋ぐらいならなんとかなりそうだけどな」
「結局はゴロツキですからね。最悪ゆうまくんを楯にすれば何とか・・・」
「俺の存在価値って楯!?」
「え?他に何が?」
「せめて剣だろうよ!」
「すぐ折れるのでダメです」
「手厳しいぃぃい!!」
最近ユリエさんは超毒舌。
しかし俺にはライラという超絶癒しっ子がいるのだ!
って、当のライラはなんだか暗い顔をしている。
「ーーー攫い屋をなめないほうがいいわ」
「「え?」」
「・・・・」
ライラは黙りしてしまった。ほう、黙秘権行使とはなかなかやるじゃないか。
ーーーなどと思っている時だった。
「まずいな」
「そうね。囲まれているわ」
「ーーーーッ!?」
その瞬間、全身に寒気が走る。
いち早く察知した王女らに遅れ、俺もその言葉の意味を理解した。
周囲から俺たちを観察する無数の視線。
いつの間にか周りを固められていたのか、数え切れない程の気配が乱立している。
そしてーーー
「おい、武器を置け。死にたくなきゃな」
隻眼、眼帯をつけた無精髭の逞しい男が鋭い剣を片手に迫ってきた。
俺たちは気付くと攫い屋集団に囲まれてしまっていたのだ。
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更新遅くなってしまい申し訳ありません
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