暗殺チート集団がMMOオンラインゲームをクリアするのは不可能なのか

卯月 隆輝

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1話不幸を運ぶ少年

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夜中、誰もが寝静まっている時間帯。 俺は目が覚めた。 俺は寝つきが良く一度眠るとちょっとしたことでは起きないと親を悩ませていた。 でも今は何かを感じ取ったらしく目が覚めた。 嫌な予感がする。

窓の外は夜中にも関わらず、太陽が世界に落ちてきたんじゃないかと勘違いするかのよう赤く燃え上がっている。 人々の悲鳴が重なり合い断末魔の叫びとなって俺の耳に入ってくる。
勢いのままに剣を準備し俺は宿から飛び出した。

「なんで……だよ。 どうしていつも……こうなるんだよ」

目の前に広がる情景。 村人が何人もバタバタと倒れている。 俺は近くに倒れていた男に駆け寄る。 息はもうない、身体中血まみれで触れた手にもびっちゃりと付着する。 
窓から見えた赤く燃え上がっていたのは家が火事になっていたからだ。 どこの家にも火が昇っており、木材特有のパチパチといった音を鳴らし崩れていく。 一瞬にして美しかった草原は焼け野原になり、まるで地獄絵図を見ているかのようだ。 唖然としていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「お前らなんかアユにいが来たら一瞬で終わりなんだよ!」

力強い声、俺の名前を吐く声、聞き覚えのある少年の声に俺は一目散に走り出す。 少年の家も他と同様酷い有様だ、近くにはおばさんが倒れている。 そして、少年は短い剣を相手に突き立て、ボロボロの身体を一生懸命に奮い立たせていた。 だが男達は不気味な笑みを浮かべる、真ん中に立っていた大男は剣を抜き振りかざす。 刃は月の光を浴び光り輝く。

———嘘だろ……。 やめてくれよ、もうこれ以上俺に関わった奴を殺さないでくれよ……

「やめろぉ!!!!!!!!!」

俺は決死の覚悟で叫んだ、人生でこれ以上ないぐらいの叫び声をあげた。 
少年は俺に気がつくと、口を動かす。

『待ってたよ……アユにい……』

時が一瞬止まる。 正直なところ、少年は知り合いでも友達でもない。 ただの他人で同じプレイヤー。 でも今はそいう壁のある関係でもいつかは俺と一緒に世界を旅しようと、モンスターを倒そうと約束した。 なぁどうして約束ってのはほとんど守れないんだろうな。 
俺が辿り着いたと同時に少年は倒れこむ。 ドサっというクッションにモノが落ちたような音がした。 何度、同じ光景を眺めたのだろうか、俺の前でまた一つ光が失われた。

「なんだ、まだ獲物がいたか」

上半身は鍛えられた筋肉を見せつけるかのようにさらけ出さられており、闇に染まった瞳、頭の毛は丸坊主。 似たような格好をした六人組の男達はベロを出しながらアヒャヒャと笑い出した。

俺はそいつらを一瞬睨みつけると少年の元に寄る。 HPバーは空になっており、ピコーンと機械を音を鳴らしゲームオーバーと文字を表示する。 

どうしてだよ、ゲームオーバーなんだろ、ゲームなんだろ、こいつは元の世界に帰れてるんだろ。 ゲームならそうだよな、なんでこんなとこだけゲームらしくしてんだよ。

少年の表情はやりきったと言わんばかりに男らしかった。 手にはまだ短剣を握っている、最後まで此処を守ろうとしたんだろう。

「お前で今日はプレイヤー三人目だな。 これで九十八人。 百人までもう少しだ」

俺はそっと立ち上がり、剣を抜いた。 相手もそれぞれ釜や剣、槍といった初級武器を握る。 初級武器とはいえ殺傷能力は上級武器と大差ない。

「百人殺すとどうなるんだ?」
「なんだ、知らねぇのかよ。 なら冥土の土産に教えてやるよ。 この世界のクリアの方法はプレイヤーを殺すことなんだよ。 何人かは知らねぇがな。 適当に殺しときゃいつか帰れる、俺達の予想はな百人なんだよ、あと二人見つけて絶対に戻ってやるんだよ元の世界に」
「残念だけど、お前達のやり方は間違ってるよ」

呆れ声を出す俺に、男達は不思議そうに首を傾げる。

「結局プレイヤーを何人殺そうが元の世界なんかに帰れない。 そんな情報を信じ込んでるお前達は可哀想だ」
「はぁん? なんだてメェ。 可能性があるならかけるしかねぇだろ?」
「俺は三百人以上もうヤった。 それぞれの悲しい最後を見届けながらな……。 結局は戻れた奴なんていない」

俺の発言に一瞬、男達は後ろに後ずさる。 すると、一人のひょろっとした男が気がついたように俺の方に指をさし、あわわと口を震わせる。 それに気がついたデカイ男が怒鳴るかのように問いただす。

「なんだよ! お前どうかしたのか」
「ち、ちげぇね。 こいう指名手配者の《無慈悲の狩人》のアユキだ。 上下黒のジャージに首を隠す黒いネックウォーマー。 隊長、ソロ最強のチート野郎です」
「な、なに! ほぉ神出鬼没といわれているアユキとこんなところで会うとはな」
「その厨二病みたいな名前で呼ぶんじゃねぇ。 俺は人を好きに殺したりなんてしない……」

大男以外の男達が少しビビるなか、大男は剣を舐め、猛獣のような目でこちらに狙いを定める。 どうやら口で言っても人の殺した時の快楽といったものを忘れられないでいるのだろうな。 他の奴は慣れていない、ならほとんどはこの大男が人をヤッているのだろう。

「へへへっ。 俺もな指名手配者な一人なんだよ。 名前はバークだ。 これも何かの縁だな、大金がかかっている大物に出会うとはな……。 なぁ俺を幸せにしてくれないか? なぁにタダとは言わねぇ、お前から出た金で墓ぐらいは建ててやるよ」

飢える狼はもう正常な判断というものが出来ない。 目の前に宝があるなら、周りに気を配らず飛びつく冒険家のよう、今のバークは人間じゃない、殺人鬼としてこの世にいる。

「あいにく死んだら元も子もないんだよ。 それに、お前は俺が殺したいと思った相手だ」

両者は向かい合う、他の奴らは少し離れたところから一騎打ちの結末を見守ろうとしているらしい。

「死ねぇ」

ど直球な声と共にバークの鋭い剣が俺に襲いかかる。 でも、遅い。 俺は右にステップを打つと剣は空気のみを切る。

「最後まで見といてくれよ、俺の剣技をお前と約束した技をな」

俺は剣の刃を逆さに向け逆刃刀という感じにバークの溝うちへと打つ。 巨体はよろめきを見せ、ゲホッと咳き込みながら膝をつく。

やられたっと厳しい表情を浮かべながらバークは剣を杖のように扱い立ち上がる。 

「どうなってんだ。 細い剣のくせに重てぇ」
「力を一点に集めて、相手の急所に的確に当ててるんだよ。 普通ならお前あそこで死んでたよ」

ぐっと噛み締め、もう一度吠える。 どうやら相当舐められていたらしい、生きるか死ぬかとなれば俺もニコニコとやるわけにはいかない。 

「なぁ仲間に頼んだりしないのか? 一対一より数で来た方が勝ち目はあるぞ?」
「あいつらにそんなこと……させるかよ。 人殺しは俺だけでいい、あいつらは仕事の部下なんだよ」
「他のやり方を探せばいくらでもあったのにな。 俺もお前もこっちに染まってしまった以上結末は決まってる」

もう一度剣をお互い向け合う、バーク達もなにかを持っているんだ、戻りたい、当たり前のように誰もが思っている。 やり方さえ違えば、もしこのゲーム以外のゲームで知り合っていればこうして命を削る必要はなかった。

「終わりにしよう。 プレイヤー同士の戦闘は長いことする必要はないからな」

バークのHPバーは半分以上消耗している、プレイヤー同士の戦闘に回復アイテムを使うことは時間がかかり逆にやられる可能性があるから使えない。 あと一撃で終わらせる。 俺はあいつが守ったこの場所を守る必要があるからな。

バークは剣を横に振るう、風が髪をなびかせチリチリと数本散っていく。 格段に早くなった一撃に瞬時に反応したがかすり傷を受ける。

「おうりゃ!」

野太い声と共に剣は鋭く、そして月の光のラインを描きながら俺の身体へと近づいてくる。
自動的に身体が反応した、もうなれた。 似たような剣技への対応は身体に染み付いている。 この世界は常識では考えられないほど身体が軽い。 俺は剣の刃を身体をクネらせ交わす。
バークは一瞬の隙を見せた、それがこの世界では致命的。

俺の剣は滑らかに素早く、そして的確にバークの身体をなぞるよう切り刻んだ。
武器は地面に吸い込まれるようバークの手から離れる、本人も巨体を抑えながら何歩か後ろに下がり、最後はバランスを崩すようにその場に倒れ動かなくなった。



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