暗殺チート集団がMMOオンラインゲームをクリアするのは不可能なのか

卯月 隆輝

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2話不明な少女との出会い

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俺は剣を小さく勢いにのせ振る。 ピチャッと地面に血が付着する音が辺りにこだましていくよう大きく聞こえた。
何回目だろうかこの静かな時間、俺は持っていた剣を背中にかけていた鞘に収める。
人を殺したことになんの感情も湧かない。 バークを俺はためらいもなく切っている。 いや無駄な感情は持つなと、それだけが脳を支配していた。 終わったあと身体から何かがすっと抜けるよう軽くなる。 

俺とバークの一騎打ちを終始見ていた連中は敵討ちに来ることもなく腰を抜かしているのか唖然としていた。 次は自分か、お前がいけよ、そういった感じの視線をお互い顔を見合わせながら無言で会話する。 多分次の標的は俺たちだと思われているのだろう、だが俺だって好きで人を殺すわけじゃない。 なんなら大好きなゲームを汚している自身を殺したいぐらいだ。 だがそんな勇気すらない。

人を殺せば色々と落ち着いて物事を考えることが出来るな。 今自分はどんな表情をしているんだろう、笑ってるのか、泣いているのか、いや無表情だろうな。

俺はゆっくりとバークの仲間達に近づく。 『ヒィッ』と小さな悲鳴をあげながら、子犬ようにガクガク震える彼らはもう逃げることすら出来ないのだろう。

「悪いなリーダー殺してしまって。 お前達はこれからは大人しくこのゲームが終わるのを待っていてくれ」

俺はそう告げると踵を返し、倒れている少年の元に向かう。  その時後ろにいた誰か分からないが声をかけられた。 

「お、俺たちを見逃すのかよ? バークさんの仲間だぞ?」

俺はもう一度身体を向ける、結果的には一回転するという形になってしまった。

「そんな簡単に人を切るような悪魔じゃないから。 俺は殺すと決めたやつしか殺さない。 お前達の目はまだ光があるから」
「な、そ、そうか。 お前は本当に『無慈悲の狩人アユキ』なのか?」

クロ髪を真ん中だけ剃った毒々しい奴が額に汗を流しながら聞いてくる。

「そうだよ。 俺は殺人鬼さ」

俺はキッパリと答えた。 どこかホッとしたような表情を浮かべる彼らを一瞥してから後にする。
リーダーを殺されても結局彼らは反撃すらしない。 バークは本当に可哀想な奴だ。 彼らにとってバークという存在はリーダーと部下であってそれ以上でもそれ以下でもない。 自分の命が助かったと知れば彼らはそれでいいのだ。
俺もそれでいいと思う、結局この世界では自分の身を守るのに精一杯の奴らしかいないんだ。 

「ねぇ? その人達見逃すの? じゃあ、貰ってもいいよね? いいよね!」

どこからか女の子の高い声が響く。 俺は声のした方に視線を移動させる、だが辺りにはバークの部下達の姿しかなく、他にいない。 バークの部下達もそれぞれ違った方向を向き声の主を探す。 辺りはまだ家が燃えている。 その火のおかげで明るいが、人影どころかモンスターの姿すら見当たらない。

一瞬誰もが空耳と思ったに違いない、現に俺ですら聞き間違いかと疑った。

「やっと見つけたよアユキ君! 後、獲物も発見」

すると声の主は静かに、そしてゆっくりと家の影から夜の暗闇を歩いて来る。
ブラウン色の髪は波を描くように肩ぐらいまでのセミロング。 身長は低く、年も俺より一、二才年下ぐらいだろうか、幼さを残すあどけない顔立ち。 火が少女の表情を照らすと、髪と同じブラウンの瞳は笑みを浮かべた。

俺の感が正しければ少女は並のプレイヤーじゃない、もっと何かを背負い、くぐり抜けてきた何かだ。
だが、俺よりも先に動いたのはバークの部下達の方だった。 それぞれ頷くと立ち上がり、先ほどまで恐怖に支配されていた顔はまるで仮面だったかのように、不気味な表情を浮かべ少女に距離を詰めていく。

「あのバカどもが……」

俺はポツリと呟く、実際こうしている間にも彼らに何かを声をかけるべきかと悩むところだ。 
でも俺はそれすら止めることにした。 二度と会うことない彼らに必要性は感じない、自分が蒔いたタネは自らが収穫するべきだ。 俺は少女の存在を知っている、そしてこの後の未来も見えている。

わずか十五メートルぐらいの俺の目先にはこの世界を象徴するかのような光景が広がろうとしている。

「へへへっ! 女の子がこんなところで遊んでたダメだよ?」
「なぁアユキはどうすんだよ?」
「へっ知ったこっちゃねぇ。 情報通り自分に関係ない奴には興味ねぇんだよ」
「獲物だ、バーク様に土産として持っていってやろーぜ」

武器を引き抜いた男達の愉快な会話が耳に届く。 それと同時に俺は低く冷たいため息を吐く。
少女は顔に喜色を浮かべながら腰に手を回す。 その目はもう黒く染まりきっており、光の入る隙間などない真っ暗だった。

「死んじゃいなよ……」

俺は目を見開く、ぽかんと空いた口は閉じることもなくその瞬間を見据えていた。
まるで男達は少女を無視し通り過ぎたかのようにずっと先を走っている。 だがそうじゃない、少女が人並みを超えた速さで夜を切り裂いた。
痛みなんてまず与えない、一瞬にして彼らをゲームオーバーに堕ち入らせる。 すなわち死だ。 男達は痛みから叫び声をあげることもなく、お互い顔を見合すとゆっくりと地面に吸い込まれいった。

やっぱりな、俺の想像と同じことが起きた。 だからといって少女を非難したり、俺が剣を振るうことはない。 またそれを無心で眺めているだけだ。

手に持った先が鋭く尖り少し血が染み付いた鉈(なた)をくるっと回すように腰に戻すと少女は俺の前まで歩み寄ってくる。

間違いない、といった感じに俺の顔をふむふむと頷きながら見る少女。

「な、何か用かな?」

俺はぎこちない笑みをこぼす。 この世界に来て女の子と呼べる人と話したことが少なく、対応に困るのだ。 慣れるとマシにはなるのだが……。

「アユキ君だよね?」
「は、はい」

突然名前を呼ばれ俺は慌てながら返事する、少女は顔を輝かせる。 

「見つかったぁ。 よし! これで隊長にこき使われることないぞ!」

独り言のように呟き、小さなガッツポーズをする少女に俺はだいぶ落ち着くことが出来た。 しかし、この状況を理解することは俺の貧相な頭では到底理解できないだろう。

「な、なぁあいつら殺し……てるのは無視なの……か?」

まず一連の出来事について聞いて見ることにした、なにせこの状況において俺も安全と言えない、むしろ危険だ。 そう考えるやいな身体は一歩後ずさる。

「な、なんで逃げるのっ? 大丈夫! あいつらはやらなきゃいけない人達だったから」
「そ、そうなんですか」

ざわめきは流れるように過ぎ去る、パチパチと木が燃える音だけが耳に届く。 騒がしかったこの場所も今は静寂に包まれていた。

攻略ギルドが制作した指名手配者リストにはランクづけがしてある。 S、A、B、Cと四段階に分かれている。 その中でもSと断定されたプレイヤーは攻略ギルドが最も危険視する人間であり、早急に確保が要求されている。
現に俺もSと断定されている。 自慢することではないが、ある意味この世界でも名を轟かしているプレイヤーの一人だ。 ひたすら攻略ギルドが派遣した、討伐部隊から身を潜め、世界のあちこちを移動しながら今日まで生き延びて来た。

そして、少女を知る理由。 彼女も俺と同じSランクプレイヤーだ。 

「キリ……」

俺は少し疑問混ぜながら少女の名前を呟いた。 指名手配者一覧の時に見た写真よりも本物はずっと幼く、そしてどことなく冷酷な闇を秘めている。

俺が名前を知ってたのに驚いたのか、それとも急に名前を呼ばれて驚いたのかキリは目を丸くする。

「あ、名前知ってたんだ……」

キリは黙り込む、とっさに俺は弁解するつもりで手をブンブン振る。 まさか「知ってるなら殺すね」とか言われたら笑い事じゃ済まない。 だがキリは別に嫌な顔をすることなく逆に嬉しそうに笑い出した。

「よかったぁ! アユキ君が人の名前覚えてるなんて。 それもキリの名前覚えててくれてる!」

なんだか凄い失礼なことを言われた。

「まぁあれだよ。 そ、そうだうん。 なんか知ってたんだよ」

こう見ると普通の女の子だ。 そんな子に『指名手配者に載ってたから』とはとても言い難い。 うまいこと誤魔化せていないのでキリは小首を傾げる。

「で、俺に何か用かな?」
「おっ! そうでした。 アユキ君、キリと一緒に来てもらってもいいですか?」
「ん、あ」

ポンと一つ手を打って答えたキリの一言に俺はあいまいな返事で返した。 その瞬間何かを予感させる風が吹き荒れた。
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