暗殺チート集団がMMOオンラインゲームをクリアするのは不可能なのか

卯月 隆輝

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9話難易度7でさえも1

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 明るい光に包まれて俺達は瞬間的に移動した。
 三十九区はいよいよ脱出不可能といったぐらいの木々が生い茂る。 人が滅多に立ち寄らないのか、ゴミひとつなく、空気も澄んで美味しい。
 時に吹く風により揺れる木の葉の擦れ合う音は独創的な音色を奏でる一種のメロディーのように耳に心地よい。

 日は丁度一番高いところに登っている。
 しかしこれは困ったことになるかもしれない、基本クエストは朝に受注するものだ。 モンスターを索敵する時間、準備、戦闘、そして帰還この一連の行動をするにあたって朝からクエストを開始しておけば夕方には戻ることが出来る。

 夜になるとアンデット族のモンスターが出現することもある。 アンデット族はプレイヤーに取り憑いたり、不死身だったりとタチの悪いモンスターだ。 しかし夜以外には出現しない為、滅多に出くわすことはない。

 それを踏まえ俺達はかなり遅めのクエストを開始することになる。 なおもこの場所、広い密林だ。 メニューにある転移を使えば区内にあるいくつかの転移結晶に移動することも可能であり、敵も見つけやすいのだが、なにせ転移結晶に触れて起動させる必要がある。 それに回数制限がある以上不用意に使いたくない。 マッピングをする以上転移結晶も見つけたいところだ。 転移結晶からだと回数制限なしで転移が使用出来る。
 俺もさすがに密林は踏み入れたことがない。 現実世界でいうならば富士の樹海みたいなところだ。 なにが出るかわからない昼でも薄暗いのでアンデット族がいるかもしれないか。

 固唾を飲み俺は索敵に励む。 キリとリオンは俺の後をついて来る。 普通なら手分けして探した方が早いのだろうが、女の子二人をこんな密林の中一人にするわけにもいかないか。 ならと俺は索敵スキルをメニューから選択する。
 プレイヤーはそれぞれモンスターを倒した時にポイントを得ることが出来る。 プレイヤーというメニューから開きスキルという欄がある。 そこから一定のポイントを振り分けることによりスキル習得が出来る。

 なにもステータスを上げることは不可能で、基本的には冒険に必要なスキル習得をすることが多い。
 俺も索敵スキルと心眼スキルを主にポイントを振っている。
 索敵スキルは物陰や木陰に潜む、モンスターやプレイヤーを見つけることが出来る。 プレイヤーキラーとして名が広まり始めた頃に付けたスキルだ。

 俺は索敵スキルを発動する。範囲は百メートル×百メートルぐらいか。 サーベルウルフは中型のモンスターであり群れで行動することが多い。 
 それらしき反応があるまでひたすら歩く。

 「まだ見つからないのっ?」
 「あぁ危険種は出くわせば厄介だけどな。 他の通常種よりも生息数が少ないんだよ」
 
 キリが子供のように駄々をこね始める。 鉈を撫で始め、辺りの木をキョロキョロと見始める。 なんでお前はそんなに飢えてるんだよ。 俺は首根っこを掴みリオンの前に連れて行く。

 「何か?」
 「迷子にならないようにこいつ見張っといて」
 「子供扱いやだなぁ……」

 はぁとため息を吐くキリを横目に俺は切れた索敵スキルを再度発動する。 クエストにおいて索敵は一番苦労する作業だ。 モンスターによっては見つからない場合もあるらしく数日間索敵を繰り返すことだって珍しくはないのだ。 
 喉に潤いが欲しくなる時間帯だ、俺もさっきから歩きっぱなしで披露が足を襲う。
 後ろを振り返ると二人も疲れの色が見え始めている。 
 
 「見つからないな。 何か策とかないのかリオン?」

 そうねと人差し指をあごに当て考える様子を見せるリオン。 それから何か思いついたのかメニューを開きアイテムを取り出した。
 手には瓶詰めにされた赤い正体不明の物体がある。

 「それってなんだ? 血……?」
 「そうね半分正解半分不正解よ。 獲物をおびき出すにはやはり好物を使用するのが一番だと思うの。 『ジーチキン』サーベルウルフの大好物のジーメンチョウの生肉よ。 不慣れな密林を私達が歩くより、住処としている彼らに来てもらった方が楽だと思うの」

 なるほどと関心するも、それ以上に先にそれをしてくれと思ってしまった。 俺の考えがリオンに伝わることもなく、リオンは瓶の蓋を簡単に開ける。
 なんともいえない血生臭い匂いが辺りに広がっていく。
 少し行ったところに木々の隙間が広いところがあった。 こんな場所だ木々が重なるように立っていると戦闘には不利すぎる。 なにせ俺達にとって木は一つの障害となるのだ。
 リオンも同じ考えだったのか俺の横を通るとジーメンチョウの肉を中央付近に置いた。

 「この匂い嗅ぐとジーメンチョウ食べれなかなりそぅ」

 キリは片手で鼻をつまみ、もう片手は内輪のようにブンブンと振る。 リオンは慣れているかのように茂みに気を配り戦闘態勢に入った。

 俺は索敵スキルでモンスターの出現を待つ中、先ほど考えていたことをリオンに伝える。

 「その肉もう少し早いうちから出しといてくれたら嬉しかったな」

 するとリオンは嬉しそうにニッコリと微笑む。

 「ごめんなさい。 アユキ君の頑張りを見てたら声がかけづらくて」

 その割にはさっきなんの躊躇もなく、この人ジーメンチョウ取り出したような気もするんだけどな……。

 「きたよっ」

 キリは先ほどとは打って変わって真剣な目つきになる。 俺の索敵スキルはまだ反応がない。

 「俺の索敵スキルには反応がないけど?」
 「アユキ君、比べない方がいいわよ。 キリの索敵スキルはこの世界でも類を見ないほど熟練度が上げられているわよ」
 「あぁ……何と無く分かる気がするわ」

 だってこいつ俺を見つける時も全く苦労してなさそうだったもんな。 普通、どこにいるか分からないプレイヤーを見つけることなんて不可能だ。 それをキリは二日とちょっとで俺を見つけたのだから索敵スキルの熟練度はマックスに近いのだろう。

 「アユキ君、リオン右から二百メートルに複数の中型モンスターの影が接近中。 キリ達の方に向かってきているからサーベルウルフで間違いないと思う。 数にして五匹ぐらいかな?」
 「五匹!? おい、クエストの依頼数よりも三匹ほど余り出るんだけど?」
 
 俺の気持ちが草のようにしおれ始める。 サーベルウルフが群れで行動する以上複数体いるのは当たり前なのだろうが、五匹でも少ない方なのだろうが俺の気分は中々晴れない。

 「五匹もいるんだよっ? もっと喜ぼうよっ」
 「お前と違ってな、俺は現実的なんだよ」

 キリは飢えた狼のよりも高ぶった表情をしている。 どんだけ切りたいんだよ。

 数秒待つと辺りの茂みが騒がしくなり始める。 俺の索敵スキルも反応し始め、獣達の警戒を強める鳴き声が聞こえ始めた。
 どうやら俺達の存在にも気がついたらしい、サーベルウルフは鼻がいい。
 プレイヤーと対戦する時とは違う、圧倒的なグラフィックの中でアイテムやスキルを駆使しモンスターを仲間と協力して狩る。

 オンラインゲームの醍醐味なはずだった。 現実の世界に住んでいた頃は毎日目を輝かせ熱中していたにも関わらず、今の俺といったら、こんな当たり前なことでさえ忘れていた。

 ふと思い出すと心の鼓動も早くなる。 一気に緊張感と興奮が俺を満たしていく。 
 先程まで騒がしかった森は時が止まったかのようにその演奏を辞めた。
 誰かの足が小枝を踏む、乾いた音が爆竹のように感じられるほど森に響き、やがてそれは狩猟の合図になった。

 十五メートルぐらい離れた木々の影から奇襲を狙っていたのか灰色の影が複数体飛びかかってきた。

 だが俺達もそれぐらいは予想できており三人共それぞれ別の方向へ飛び交わす。 俺は右に移動し、剣をゆっくりと抜いた。

 視界に浮かびあがってきたのは牙を剥き出しに、密林に紛れるようなこげ茶色の体毛。 発達した前足の爪は鋭い鎌のように向けられている。 目に傷が入った群れのボスであろう一番大きな奴は仲間を見ながら短く鳴く。 作戦でも伝えたのだろうか、サーベルウルフもそれなりに戦闘慣れしていた。

 危険モンスターの上、この狭く、動きづらい場所だ。 甘く見ているとこちらが餌食にされてしまう。
 俺は二人の方に視線を送ると、キリが興奮してか唇を舌で舐めた。

 
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