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インディア~親蜜の香り~その二章 1
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2.
リンゼイはアーシャを連れ去るべく、次の日にはナーラーヤン家の両親に挨拶に行った。インドで必ず喜ばれるというチョコレートケーキ、ブラックフォレストを土産に。
タクシーから降り、整備もされていない土埃が舞う路なりに降り立つ。剥き出しの屋台が幾つか並びんで、土と雑草の上に建った集合住宅の一角に住んでいると聞いていた。女たちは皆色鮮やかなサリーを着ながらも、裸足で行き来している。水道と井戸が共存し、頭に水の壺を載せて歩く貧しさに彼は呆然とした。それより驚いたのは、自分の美しい婚約者が一際汚らしい人々の塊に近寄って行き、幾つもの壺を受け取ると、井戸に行って水を汲んで手渡すのを数回繰り返したことか。
親近感を湧かせる苦肉の策で、彼は更紗の立て襟シャツを身に付け、麻のズボンとサンダルを履いていた。まるでヒッピーである。しかしこの暑さには丁度良く、涼しい。やはり現地の恰好が一番だった。
リンゼイも見ているだけでなく手伝ったので、汗が滝のように流れ落ちていた。周囲に人が集まり始める。彼にはこのホームレスの為に水を汲んで持って行ってやることが、見せしめの辱めのように感じられた。こんな馬鹿げたことを、この自分がしているなんて。
彼女は、未来の夫の忍耐を試してでもいるのか!?
不満そうなリンゼイに、アーシャがいう。
「貴方は手伝わなくても良いのですよ、サー」
「どうして、こんなことをするんだ」
息も絶え絶えのリンゼイに、アーシャは哀愁を含む複雑な微笑みを返す。
「彼らはアウトカースト、つまりアンタッチャブルなんです。彼らはこんなに暑くても、私たち階級の上の者が水を井戸から汲んで手渡さねば、綺麗な水が飲めません。分かりますか? 穢れているから、井戸に触ってはいけないのです、ずっと大昔から、気紛れにこうして誰かが水をくれるのを待たねばなりません、そうでなければ泥水を飲まねばならないのです。掟を破れば……」
彼女は俯き、涙を浮かべる。破れば何か、酷い罰が下るのだろう、と彼を推測する。リンゼイは後ろの黒い塊の人だかりを振り返り、痩せた産まれたばかりの赤ん坊、そしてひたすらに此方を見つめる少女を見た。目下温暖化のせいで暑さは尋常ではない、四十度はあるだろうか。彼らは原住民なので、自分ほどは汗を掻いていない。彼は無意識に自分のナップザックの中にある、買ったボルヴィックを触った。水が飲めないだって? 目の前に井戸がありながら?――人間は水が飲めなかったら死ぬ。咽喉が渇いてひりついていたが、それを出して飲む気は失せた。
リンゼイは婚約者を見て、分かった気がしていた。これは「偉大なる」アーシャの慈善事業の一つなのだ。もしや、仕事から帰った時はいつもこうしていたのだろうか。不意に彼はアーシャが空港で彼を救い出した、初対面の時を脳裏に蘇らせた。彼女が積んだ徳があるから、あの子供たちはいうことを聞いたのではないか? あれは魔法などという安易なものではなかったのだ。
この衝撃的現実の他に、特筆すべきことがあるとするなら、英国人からしてみれば複雑な気分になるほど、彼女の一家全員が容として美しかったことだろう。
家の玄関には幾つもの美しい模様が描かれて、彼を歓待した。新しい家族になる予定の一家は、高くて買えない筈の様々な野菜――ヒンドゥー教徒は菜食主義である為、肉はない――料理の出前と、菫の香で迎えてくれた。
父親は東洋人にありがちな年齢不詳の趣があり、大きな目、白い髭は立派で、知性を感じさせる大きな双眸を持っている。父親の若い頃に生き写しであろう弟は、特にアーシャと似て恐ろしいほどの美形で、大きな瞳、通った鼻筋、薄い唇に褐色の肌を持っていて、中途半端な長さのウェーブがかった髪を後ろに流して額を見せている。
姉は作法通り目だけ出したスカーフをしていて、妹の夫を誘惑しないよう一度も口を聞かず、一度も視線を合わせなかった。母親は思った以上に肥っていたが、往年の美貌を留める程度で、耳、鼻脇、口にした赤い硝子のピアスは彼女を引き立てている。彼らは座ったリンゼイの足に右手で触り、それを己の頭に持っていって挨拶をした。
仕来り通り輪になって座り、地べたに座り不浄の左手を脇に垂らしたまま、バナナの葉の上の米とカレーを手掴みで食べる食事の味は緊張の余り定かではなかったが、この家の温かで知的な雰囲気は、リンゼイに感銘を与えた。彼の隣には一定の空間を置いて父親とアーシャが座り、向こう側には弟、姉、母親が並んで座っている。しかし母親は給仕に専念し、食事に手を付けようとはしない。主婦は家族の奴隷なので、食卓を囲んではいけないのだ。
食後、女たちが別室に去った後、やはり父親は彼の階級を気にする素振りをした。ここが腹の決め時だ、リンゼイが真剣にいう。
「娘さんのジャーティなんか関係ありません、彼女を尊敬し、愛しています」
ジャーティとは生まれのことである。それが同じでないと結婚出来ないのだ。
「持参金も、要りません」
始めは建前だと思ったのか頑として譲る気配もなく、次には「ただ」で持っていった娘を売る気なのではないか、と疑った。しかし新郎を信じた後は、ヒンドゥー人父親は涙を流し、彼の手を取って額に戴き、
「貴方は立派な男だ」
といった。平均寿命を過ぎた中年のこの男は、娘に持参金ではなく教育を与えるような、革新的な男である。娘が選んだ男が持参金ではなく、娘そのものを求めているのだと理解したのだ。
未来の弟が、
「アーシャを殴ったら許さないよ」
といったのも、インドに対して造詣が深くなり、侮辱ではないと知っていたので、義弟の姉に対する心配を快いとすら感じた。
たった一つ、リンゼイの気に障ったことがあるとすれば、風習からの離脱には賢明なな彼らもまたヒンドゥー教徒であり、世界に蔓延る悪に対して全く意識を向けないようにしていたことだった。
女たちが戻って来てから、リンゼイが何の気なしに平均年齢について今の大統領はどんな政策を採っているのか、と質問したがった時にそれが分かった。彼にとって、社会状況について話すのは夕食の作法に則ったものであり、それが無礼なことだとは思いも寄らなかった。いうまでもなく、英国でも労働階級の者と貴族が社会について語る場合、摩擦が起きることもある。しかしリンゼイは始めに、こういっただけなのだ。
「少し前に、工場の弊害について英国の新聞を読んだのですが、益々貧富の差が拡大しているという訴えが載っていました。ここら辺でも大変であったそうですね。英国でもテロの警戒で悲惨な事件が起きましたし、他人事とは思えません。この辺の治安を守っているのはマハラナだということですが、いかがですか」
マハラナとは、マハラジャのヒンドゥー読みである。そこまで気を使っているにも拘らず、話は二転三転する。
「あの方々は料理人でもあるんですよ、素晴らしい料理をお作りになります。宮殿こそ豊かですが、日常の小さな喜びを愉しまれておりますよ」
リンゼイが感じた違和感は、大きい。
「そうですか……ですが、やはり暴力事件の責任は、彼らにもあるのではありませんか? 此方でも餓えて死ぬ人々が多いとお聞きしますが、英国も抱える問題ですが貧富の差が、残酷な事件を――」
「いいえ、いいえ」
父親は首を振って、自分の妻と娘を追い遣ろうとした。何がいけないのか分からない英国人に、弟のが小声で説明した。
「穢れを家に持ち込んじゃダメなんだよ、聞くと魂を汚される」
「その通りです、サー」
父親は大きく頷きながら、いう。
「失礼ながら、では何処で話せばいいのですか?」
新郎はむきになって、女たちの移動を押し留めた。新しい家族が彼を相手にせず、まるで彼自身を愚鈍であるかのように窘めたからだ。確かに、リンゼイにも遅れた世界に住む人々を啓蒙したいという慢心がなかったわけではない。そして、この怒りは自分の方が正しいと思っている「先進的な人間」が、遅れた人々に劣っていると指摘されたことに触発されたものである。
しかし、それを差し引いても彼らの返事は納得がいかない。というよりも、外語大学を出て航空大学校に入った教養溢れるリンゼイには、彼らが何を話しているのか解らなかったのだ。だから次の言葉の弁えなさも、認識していたが止められなかった。
「インドの貧しさはアフリカ以上といわれています、問題は貧富の差ではありませんか。マハラナは責任を感じるべきです、経済大国が福祉を慈善事業に頼るなんて考えられないことだ」
「彼らはその仕事をしているのですよ、誰でもその仕事をしたくないものに押し付けたりすることはできません。誰でもその選択に罪の意識を感じることなどないのです。私は現場監督です、英雄ではない。人を救うのは英雄です、私の仕事ではないのです。そうでしょう」
リンゼイはアーシャを連れ去るべく、次の日にはナーラーヤン家の両親に挨拶に行った。インドで必ず喜ばれるというチョコレートケーキ、ブラックフォレストを土産に。
タクシーから降り、整備もされていない土埃が舞う路なりに降り立つ。剥き出しの屋台が幾つか並びんで、土と雑草の上に建った集合住宅の一角に住んでいると聞いていた。女たちは皆色鮮やかなサリーを着ながらも、裸足で行き来している。水道と井戸が共存し、頭に水の壺を載せて歩く貧しさに彼は呆然とした。それより驚いたのは、自分の美しい婚約者が一際汚らしい人々の塊に近寄って行き、幾つもの壺を受け取ると、井戸に行って水を汲んで手渡すのを数回繰り返したことか。
親近感を湧かせる苦肉の策で、彼は更紗の立て襟シャツを身に付け、麻のズボンとサンダルを履いていた。まるでヒッピーである。しかしこの暑さには丁度良く、涼しい。やはり現地の恰好が一番だった。
リンゼイも見ているだけでなく手伝ったので、汗が滝のように流れ落ちていた。周囲に人が集まり始める。彼にはこのホームレスの為に水を汲んで持って行ってやることが、見せしめの辱めのように感じられた。こんな馬鹿げたことを、この自分がしているなんて。
彼女は、未来の夫の忍耐を試してでもいるのか!?
不満そうなリンゼイに、アーシャがいう。
「貴方は手伝わなくても良いのですよ、サー」
「どうして、こんなことをするんだ」
息も絶え絶えのリンゼイに、アーシャは哀愁を含む複雑な微笑みを返す。
「彼らはアウトカースト、つまりアンタッチャブルなんです。彼らはこんなに暑くても、私たち階級の上の者が水を井戸から汲んで手渡さねば、綺麗な水が飲めません。分かりますか? 穢れているから、井戸に触ってはいけないのです、ずっと大昔から、気紛れにこうして誰かが水をくれるのを待たねばなりません、そうでなければ泥水を飲まねばならないのです。掟を破れば……」
彼女は俯き、涙を浮かべる。破れば何か、酷い罰が下るのだろう、と彼を推測する。リンゼイは後ろの黒い塊の人だかりを振り返り、痩せた産まれたばかりの赤ん坊、そしてひたすらに此方を見つめる少女を見た。目下温暖化のせいで暑さは尋常ではない、四十度はあるだろうか。彼らは原住民なので、自分ほどは汗を掻いていない。彼は無意識に自分のナップザックの中にある、買ったボルヴィックを触った。水が飲めないだって? 目の前に井戸がありながら?――人間は水が飲めなかったら死ぬ。咽喉が渇いてひりついていたが、それを出して飲む気は失せた。
リンゼイは婚約者を見て、分かった気がしていた。これは「偉大なる」アーシャの慈善事業の一つなのだ。もしや、仕事から帰った時はいつもこうしていたのだろうか。不意に彼はアーシャが空港で彼を救い出した、初対面の時を脳裏に蘇らせた。彼女が積んだ徳があるから、あの子供たちはいうことを聞いたのではないか? あれは魔法などという安易なものではなかったのだ。
この衝撃的現実の他に、特筆すべきことがあるとするなら、英国人からしてみれば複雑な気分になるほど、彼女の一家全員が容として美しかったことだろう。
家の玄関には幾つもの美しい模様が描かれて、彼を歓待した。新しい家族になる予定の一家は、高くて買えない筈の様々な野菜――ヒンドゥー教徒は菜食主義である為、肉はない――料理の出前と、菫の香で迎えてくれた。
父親は東洋人にありがちな年齢不詳の趣があり、大きな目、白い髭は立派で、知性を感じさせる大きな双眸を持っている。父親の若い頃に生き写しであろう弟は、特にアーシャと似て恐ろしいほどの美形で、大きな瞳、通った鼻筋、薄い唇に褐色の肌を持っていて、中途半端な長さのウェーブがかった髪を後ろに流して額を見せている。
姉は作法通り目だけ出したスカーフをしていて、妹の夫を誘惑しないよう一度も口を聞かず、一度も視線を合わせなかった。母親は思った以上に肥っていたが、往年の美貌を留める程度で、耳、鼻脇、口にした赤い硝子のピアスは彼女を引き立てている。彼らは座ったリンゼイの足に右手で触り、それを己の頭に持っていって挨拶をした。
仕来り通り輪になって座り、地べたに座り不浄の左手を脇に垂らしたまま、バナナの葉の上の米とカレーを手掴みで食べる食事の味は緊張の余り定かではなかったが、この家の温かで知的な雰囲気は、リンゼイに感銘を与えた。彼の隣には一定の空間を置いて父親とアーシャが座り、向こう側には弟、姉、母親が並んで座っている。しかし母親は給仕に専念し、食事に手を付けようとはしない。主婦は家族の奴隷なので、食卓を囲んではいけないのだ。
食後、女たちが別室に去った後、やはり父親は彼の階級を気にする素振りをした。ここが腹の決め時だ、リンゼイが真剣にいう。
「娘さんのジャーティなんか関係ありません、彼女を尊敬し、愛しています」
ジャーティとは生まれのことである。それが同じでないと結婚出来ないのだ。
「持参金も、要りません」
始めは建前だと思ったのか頑として譲る気配もなく、次には「ただ」で持っていった娘を売る気なのではないか、と疑った。しかし新郎を信じた後は、ヒンドゥー人父親は涙を流し、彼の手を取って額に戴き、
「貴方は立派な男だ」
といった。平均寿命を過ぎた中年のこの男は、娘に持参金ではなく教育を与えるような、革新的な男である。娘が選んだ男が持参金ではなく、娘そのものを求めているのだと理解したのだ。
未来の弟が、
「アーシャを殴ったら許さないよ」
といったのも、インドに対して造詣が深くなり、侮辱ではないと知っていたので、義弟の姉に対する心配を快いとすら感じた。
たった一つ、リンゼイの気に障ったことがあるとすれば、風習からの離脱には賢明なな彼らもまたヒンドゥー教徒であり、世界に蔓延る悪に対して全く意識を向けないようにしていたことだった。
女たちが戻って来てから、リンゼイが何の気なしに平均年齢について今の大統領はどんな政策を採っているのか、と質問したがった時にそれが分かった。彼にとって、社会状況について話すのは夕食の作法に則ったものであり、それが無礼なことだとは思いも寄らなかった。いうまでもなく、英国でも労働階級の者と貴族が社会について語る場合、摩擦が起きることもある。しかしリンゼイは始めに、こういっただけなのだ。
「少し前に、工場の弊害について英国の新聞を読んだのですが、益々貧富の差が拡大しているという訴えが載っていました。ここら辺でも大変であったそうですね。英国でもテロの警戒で悲惨な事件が起きましたし、他人事とは思えません。この辺の治安を守っているのはマハラナだということですが、いかがですか」
マハラナとは、マハラジャのヒンドゥー読みである。そこまで気を使っているにも拘らず、話は二転三転する。
「あの方々は料理人でもあるんですよ、素晴らしい料理をお作りになります。宮殿こそ豊かですが、日常の小さな喜びを愉しまれておりますよ」
リンゼイが感じた違和感は、大きい。
「そうですか……ですが、やはり暴力事件の責任は、彼らにもあるのではありませんか? 此方でも餓えて死ぬ人々が多いとお聞きしますが、英国も抱える問題ですが貧富の差が、残酷な事件を――」
「いいえ、いいえ」
父親は首を振って、自分の妻と娘を追い遣ろうとした。何がいけないのか分からない英国人に、弟のが小声で説明した。
「穢れを家に持ち込んじゃダメなんだよ、聞くと魂を汚される」
「その通りです、サー」
父親は大きく頷きながら、いう。
「失礼ながら、では何処で話せばいいのですか?」
新郎はむきになって、女たちの移動を押し留めた。新しい家族が彼を相手にせず、まるで彼自身を愚鈍であるかのように窘めたからだ。確かに、リンゼイにも遅れた世界に住む人々を啓蒙したいという慢心がなかったわけではない。そして、この怒りは自分の方が正しいと思っている「先進的な人間」が、遅れた人々に劣っていると指摘されたことに触発されたものである。
しかし、それを差し引いても彼らの返事は納得がいかない。というよりも、外語大学を出て航空大学校に入った教養溢れるリンゼイには、彼らが何を話しているのか解らなかったのだ。だから次の言葉の弁えなさも、認識していたが止められなかった。
「インドの貧しさはアフリカ以上といわれています、問題は貧富の差ではありませんか。マハラナは責任を感じるべきです、経済大国が福祉を慈善事業に頼るなんて考えられないことだ」
「彼らはその仕事をしているのですよ、誰でもその仕事をしたくないものに押し付けたりすることはできません。誰でもその選択に罪の意識を感じることなどないのです。私は現場監督です、英雄ではない。人を救うのは英雄です、私の仕事ではないのです。そうでしょう」
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