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インディア~親蜜の香り~その二章 3
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「そんなこと……」
「父はある部分ではとても近代的なヒンドゥー教徒なんです。でも……バガヴァッド・ギーター……聖典に従って生きているのは昔のヒンドゥー教徒と変わりません。ヒンドゥー教徒は、貧しいカーストに生まれることを前世の罰を償っているのだと思っています。だから自分のカーストに合った仕事しかしません。分相応の仕事をしないと、次の世はもっと悪い人生を割り当てられるからです、その平和を守ることが第一原理なんです」
続けて、こうもいった。
「ゾロアスター教徒はカーストがないので、何でも仕事をして出世できるし、しかもそれだけではなく、奉仕の規律があって色々な人に職を与えようとしてくれます。ヒンドゥー教徒は、カーストや輪廻の枠を壊すこういう活動は絶対にしないし、許しません。でも弟が行っている学校も、ゾロアスター教徒が作ってくれたものなんです。学費は実は安いのだけど、ヒンドゥー教徒はカーストに合わない仕事をしないので、中々払えません。でも、私が働いているので、もう弟や父はそういった下で働くしかありません。仏教徒はカーストを尊重していないので敵視されていますが、私は改宗したいと思うこともあるのです。そんなことをしたら、私だけでなく家族が殺されるかも知れないのでできないけれど」
内なる世界、瞑想をいい訳に他の宗教の長所や、目前の不条理を「見ていない」他のヒンドゥー教徒と、アーシャが魂を異にしているのは明白だった。彼女は宇宙の意志に疑いを抱いている。だが、それを口にはせず俯いたまま、リンゼイからも一歩離れ、壁を背にして力を抜く。内的世界に閉じ篭もって、儘ならない人生の苦痛に耐えていた。彼女は、ヒンドゥーの軸と近代的倫理観の二つに引き裂かれている。そして、それが自分をコントロールできていない証拠だと、己を鞭打つのだ。
リンゼイは明るく「そんなことはないよ、君はその考えを誇りに思うべきだ」とはいえなかった。それら「文化」に背筋に寒気すら感じたからだ。彼女はヒンドゥーから派生した人生を生きている。信じているのだ。
手をそっと握ると、アーシャは自分の世界からリンゼイの元に戻り、彼を見て微笑んだ。
「貴方はイスラム教徒がお嫌いですね、テロリストだと……でも私は好きです、サー」
これには一瞬、閉口した。
リンゼイはイスラム教を信奉するアラブ人たちが、実は嫌いなのだ。これは人種差別でも、外国人嫌い故でもない、と彼は信じている。理由があるのだ。何故ならアフリカ人やエジプト人は好きである。
テロリストだ、ということだけではない。国の失策で、英国で外国人が不動産を買い漁ったことがあり、英国人の正直で公平な大家は姿を消した。狡猾な大家の中でも、アラブ、中近東系は最悪なのだ。頭は悪いくせに欲だけは誰より深い。金の奴隷だ。シャイロックよりも酷い。言うことを聞き易い外国人や、老人を選んで法外な金を要求する。
一度、アジアからの語学留学生の家に行った時、賃貸料の他に英国では取られない筈の斡旋料などを不法に請求しており、リンゼイは激怒した。これらは珍しいことではないのだ。ちなみに、エジプト人だけは教育水準が高いお陰で、誇りがある。そしてアフリカからの留学生は勤勉で、飛び抜けて頭が良い男女ばかりなので特別な存在である。
それをアーシャに、遠回しのいい方で愚痴ったことを彼女は覚えているのだ。しかし、インドでもイスラム教徒との摩擦は各地で問題になっているのに、好きだとは……。
彼女はこの指摘に首を振った。
「彼らと争っているというのは、政府に焚きつけられてなのです。イスラムには恩があります、一度、私たちが村にいた時、年頃だった姉がバラモンたちに襲われたことがあって」
「ええ!?」
リンゼイの叫び声に、アーシャは慌てて取り繕った。
「いいえ、いいえ、酷いことにはなりませんでした。でもそれは村の半分に住んでいたアラブ連中のお陰です、彼らも最下層の生活を強いられていて、平時に人間によって助けを加減したりはしません。男は、誰であっても女性を守ります。警察は賄賂に従うので、彼らが自警団を作っていて、騒ぎを聞きつけて一様に鉈を持って駆けつけてくれたから無事だったんです。鉈は、私たちヒンドゥーと殺し合う時にも使うのですが」
そこで彼女は言葉を切る。英国人の繊細さを思い遣って、話題を変えようというのだろう。しかし次の言葉の方が、彼を慌てさせるものなのだが。アーシャが彼の前に膝を着き、リンゼイの右手を取って接吻し、顔を上げる。
「どうしたの?」
男の心臓が早鐘を打った。こういうことをするときは、何かある。黒い瞳が魔性のように、リンゼイを射ていた。
「私のサー、貴方はお優しくてお美しいお方、どうか姉も私と共に娶っては頂けませんか」
「アーシャ……」
インドが一夫多妻制だということは、彼ももう知っている。過去のアジア、現在のインド、またはアラブ世界では今でも姉妹と結婚することもあるらしい、とも知った。近代国家とは正反対に、彼女は愛情から自分の姉を婚約者に売り込もうとする。
「姉は私のように気も強くなく、大人しいので邪魔にはなりません」
彼女だって、欧米の女に比べればずっと大人しくて謎めいている。
「自分の分はきちんと働きますし、私みたいに子供が要らないなんていいません、とても家庭的で気立てが善いんです」
それなのに、妹の私が先に嫁ぐなんて。
アーシャのそれは悲嘆に近い。結婚だけが女の魂の救済であるとそういっていた、妹として姉を救わせたいのだろう。それにインドは何もかもが酷過ぎるから、不幸な恐怖を味合わされた姉を、此処から遁れさせたいのかも知れない。姉の顔は全部見たわけではないが美貌で、アーシャよりも色白で肉感的で蜂の様な体形をしていて、特に尻が見事だった。感情移入は出来ないが、それらに高位の男どもの征服欲はそそられたのだろう。
性格の違う美しい姉妹、これは男にとって僥倖なのか?
家庭的だという女と、社会活動に熱心な女、二人の妻を持つことなどリンゼイは考えたこともない。それに彼は今の所、アーシャの一途な情実に胸を苦しくしている。例え姉妹との結婚が成せたとしても、自分は姉妹に均しい愛を与えることは出来まい。楚々としたもう一人の女に対して優しい気持ちになって気遣っても、この恋焦がれる強い感情は抱けないだろう。もう一人の妻にだけ執着する夫で彼女がそれでも御機嫌、とは思えなかった。
それとも女が非人間扱いされるインドのこと、第一夫人と第二夫人の差別化など誰も気にしないだろうか。いいや、ダメだ、自分はきっと鬱陶しくなる。西欧の男は一人しか愛せないようになっているのだ、肉体的にはともかく少なくとも心は。
こんなに価値観が違う女と、ずっと上手くやって行くことができるのだろうか。しかし、もう感情的にも社会的にも、引き返せないところまで来てしまっていた。
リンゼイは狼狽し立ち尽くして、跪く美しい婚約者から視線を外してしまった。
「――ごめんなさい、いいんです、いってみただけだから。倫理観のない女だと思わないで下さいね」
アーシャが笑い、彼は話が打ち切られて、安堵する。
「大抵の家庭は女の子が産まれると、持参金が必要で貧しくなってしまうので、大変悲しみます。実は、もう私はカーストの外にいる、存在しない女なのです。女が仕事をすると穢れるといわれ、家族が次の輪廻で罰されるので……縁を切ったということにされます。特に海を渡ると、カーストから排除されるという迷信があるのですよ。馬鹿馬鹿しいと思いませんか? でも貴方にしかこんなことはいえません、サー」
正しく愚かな――アーシャの給料で弟が学校に通い、家族の生活が支えられ、生き永らえているといっても過言ではないのに!
「馬鹿馬鹿しいと思うよ」
リンゼイは彼女を立ち上がらせてキスをし、再び断固たる調子で告げた。
「君のお姉さんを娶ることは出来ないが、アーシャ、君がこれからどんな選択をするのであれ、僕は一番身近でそのすべてを支持する」
英国人の男は世界的に見て、整った顔を持ち、女に優しいといわれる。金があろうとなかろうと、どの階層にも共通して、穏やかで心優しく、妻のいうことを良く聞く、と。
アーシャは笑い返すことも忘れ、目の前の、ちぐはぐな恰好をした異邦人を眺める。白人は皆、こんな風に女を愛するのだろうかと疑問に思う。それとも彼に特有の資質なのだろうか。だが、そんなことはどうでもいい。甘い感動とは違う、冷静さが彼女の心を満たす。人生の中でも、大きな賭けの二つに勝ったのだ。処女を捧げる男と、結婚する相手の高貴さ。彼女は自分の持っていた、最初で最後のカードがポーカーでいうところのスペードのエースだったことを知った。
「父はある部分ではとても近代的なヒンドゥー教徒なんです。でも……バガヴァッド・ギーター……聖典に従って生きているのは昔のヒンドゥー教徒と変わりません。ヒンドゥー教徒は、貧しいカーストに生まれることを前世の罰を償っているのだと思っています。だから自分のカーストに合った仕事しかしません。分相応の仕事をしないと、次の世はもっと悪い人生を割り当てられるからです、その平和を守ることが第一原理なんです」
続けて、こうもいった。
「ゾロアスター教徒はカーストがないので、何でも仕事をして出世できるし、しかもそれだけではなく、奉仕の規律があって色々な人に職を与えようとしてくれます。ヒンドゥー教徒は、カーストや輪廻の枠を壊すこういう活動は絶対にしないし、許しません。でも弟が行っている学校も、ゾロアスター教徒が作ってくれたものなんです。学費は実は安いのだけど、ヒンドゥー教徒はカーストに合わない仕事をしないので、中々払えません。でも、私が働いているので、もう弟や父はそういった下で働くしかありません。仏教徒はカーストを尊重していないので敵視されていますが、私は改宗したいと思うこともあるのです。そんなことをしたら、私だけでなく家族が殺されるかも知れないのでできないけれど」
内なる世界、瞑想をいい訳に他の宗教の長所や、目前の不条理を「見ていない」他のヒンドゥー教徒と、アーシャが魂を異にしているのは明白だった。彼女は宇宙の意志に疑いを抱いている。だが、それを口にはせず俯いたまま、リンゼイからも一歩離れ、壁を背にして力を抜く。内的世界に閉じ篭もって、儘ならない人生の苦痛に耐えていた。彼女は、ヒンドゥーの軸と近代的倫理観の二つに引き裂かれている。そして、それが自分をコントロールできていない証拠だと、己を鞭打つのだ。
リンゼイは明るく「そんなことはないよ、君はその考えを誇りに思うべきだ」とはいえなかった。それら「文化」に背筋に寒気すら感じたからだ。彼女はヒンドゥーから派生した人生を生きている。信じているのだ。
手をそっと握ると、アーシャは自分の世界からリンゼイの元に戻り、彼を見て微笑んだ。
「貴方はイスラム教徒がお嫌いですね、テロリストだと……でも私は好きです、サー」
これには一瞬、閉口した。
リンゼイはイスラム教を信奉するアラブ人たちが、実は嫌いなのだ。これは人種差別でも、外国人嫌い故でもない、と彼は信じている。理由があるのだ。何故ならアフリカ人やエジプト人は好きである。
テロリストだ、ということだけではない。国の失策で、英国で外国人が不動産を買い漁ったことがあり、英国人の正直で公平な大家は姿を消した。狡猾な大家の中でも、アラブ、中近東系は最悪なのだ。頭は悪いくせに欲だけは誰より深い。金の奴隷だ。シャイロックよりも酷い。言うことを聞き易い外国人や、老人を選んで法外な金を要求する。
一度、アジアからの語学留学生の家に行った時、賃貸料の他に英国では取られない筈の斡旋料などを不法に請求しており、リンゼイは激怒した。これらは珍しいことではないのだ。ちなみに、エジプト人だけは教育水準が高いお陰で、誇りがある。そしてアフリカからの留学生は勤勉で、飛び抜けて頭が良い男女ばかりなので特別な存在である。
それをアーシャに、遠回しのいい方で愚痴ったことを彼女は覚えているのだ。しかし、インドでもイスラム教徒との摩擦は各地で問題になっているのに、好きだとは……。
彼女はこの指摘に首を振った。
「彼らと争っているというのは、政府に焚きつけられてなのです。イスラムには恩があります、一度、私たちが村にいた時、年頃だった姉がバラモンたちに襲われたことがあって」
「ええ!?」
リンゼイの叫び声に、アーシャは慌てて取り繕った。
「いいえ、いいえ、酷いことにはなりませんでした。でもそれは村の半分に住んでいたアラブ連中のお陰です、彼らも最下層の生活を強いられていて、平時に人間によって助けを加減したりはしません。男は、誰であっても女性を守ります。警察は賄賂に従うので、彼らが自警団を作っていて、騒ぎを聞きつけて一様に鉈を持って駆けつけてくれたから無事だったんです。鉈は、私たちヒンドゥーと殺し合う時にも使うのですが」
そこで彼女は言葉を切る。英国人の繊細さを思い遣って、話題を変えようというのだろう。しかし次の言葉の方が、彼を慌てさせるものなのだが。アーシャが彼の前に膝を着き、リンゼイの右手を取って接吻し、顔を上げる。
「どうしたの?」
男の心臓が早鐘を打った。こういうことをするときは、何かある。黒い瞳が魔性のように、リンゼイを射ていた。
「私のサー、貴方はお優しくてお美しいお方、どうか姉も私と共に娶っては頂けませんか」
「アーシャ……」
インドが一夫多妻制だということは、彼ももう知っている。過去のアジア、現在のインド、またはアラブ世界では今でも姉妹と結婚することもあるらしい、とも知った。近代国家とは正反対に、彼女は愛情から自分の姉を婚約者に売り込もうとする。
「姉は私のように気も強くなく、大人しいので邪魔にはなりません」
彼女だって、欧米の女に比べればずっと大人しくて謎めいている。
「自分の分はきちんと働きますし、私みたいに子供が要らないなんていいません、とても家庭的で気立てが善いんです」
それなのに、妹の私が先に嫁ぐなんて。
アーシャのそれは悲嘆に近い。結婚だけが女の魂の救済であるとそういっていた、妹として姉を救わせたいのだろう。それにインドは何もかもが酷過ぎるから、不幸な恐怖を味合わされた姉を、此処から遁れさせたいのかも知れない。姉の顔は全部見たわけではないが美貌で、アーシャよりも色白で肉感的で蜂の様な体形をしていて、特に尻が見事だった。感情移入は出来ないが、それらに高位の男どもの征服欲はそそられたのだろう。
性格の違う美しい姉妹、これは男にとって僥倖なのか?
家庭的だという女と、社会活動に熱心な女、二人の妻を持つことなどリンゼイは考えたこともない。それに彼は今の所、アーシャの一途な情実に胸を苦しくしている。例え姉妹との結婚が成せたとしても、自分は姉妹に均しい愛を与えることは出来まい。楚々としたもう一人の女に対して優しい気持ちになって気遣っても、この恋焦がれる強い感情は抱けないだろう。もう一人の妻にだけ執着する夫で彼女がそれでも御機嫌、とは思えなかった。
それとも女が非人間扱いされるインドのこと、第一夫人と第二夫人の差別化など誰も気にしないだろうか。いいや、ダメだ、自分はきっと鬱陶しくなる。西欧の男は一人しか愛せないようになっているのだ、肉体的にはともかく少なくとも心は。
こんなに価値観が違う女と、ずっと上手くやって行くことができるのだろうか。しかし、もう感情的にも社会的にも、引き返せないところまで来てしまっていた。
リンゼイは狼狽し立ち尽くして、跪く美しい婚約者から視線を外してしまった。
「――ごめんなさい、いいんです、いってみただけだから。倫理観のない女だと思わないで下さいね」
アーシャが笑い、彼は話が打ち切られて、安堵する。
「大抵の家庭は女の子が産まれると、持参金が必要で貧しくなってしまうので、大変悲しみます。実は、もう私はカーストの外にいる、存在しない女なのです。女が仕事をすると穢れるといわれ、家族が次の輪廻で罰されるので……縁を切ったということにされます。特に海を渡ると、カーストから排除されるという迷信があるのですよ。馬鹿馬鹿しいと思いませんか? でも貴方にしかこんなことはいえません、サー」
正しく愚かな――アーシャの給料で弟が学校に通い、家族の生活が支えられ、生き永らえているといっても過言ではないのに!
「馬鹿馬鹿しいと思うよ」
リンゼイは彼女を立ち上がらせてキスをし、再び断固たる調子で告げた。
「君のお姉さんを娶ることは出来ないが、アーシャ、君がこれからどんな選択をするのであれ、僕は一番身近でそのすべてを支持する」
英国人の男は世界的に見て、整った顔を持ち、女に優しいといわれる。金があろうとなかろうと、どの階層にも共通して、穏やかで心優しく、妻のいうことを良く聞く、と。
アーシャは笑い返すことも忘れ、目の前の、ちぐはぐな恰好をした異邦人を眺める。白人は皆、こんな風に女を愛するのだろうかと疑問に思う。それとも彼に特有の資質なのだろうか。だが、そんなことはどうでもいい。甘い感動とは違う、冷静さが彼女の心を満たす。人生の中でも、大きな賭けの二つに勝ったのだ。処女を捧げる男と、結婚する相手の高貴さ。彼女は自分の持っていた、最初で最後のカードがポーカーでいうところのスペードのエースだったことを知った。
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