【TS】社畜のオッサン、前世で死ぬほどプレイしていたVRMMOへ転生し最強のヒーラーになって無双する!

カミトイチ

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青いクリスタルに照らされ坑道のような道を歩く。先を行くにつれ、岩壁からクリスタルが突き出して明るくなってくる。さらにその隙間から青い草や蔦が伸び、岩肌をところどころ青く光らせていた。



(植物がクリスタルと同じく青く光っているのは魔素を吸い上げ魔力で発光しているからか……?改めて見るとすごい光景だな)



ダンジョンを進みながら記憶の糸を手繰る。



俺はこのダンジョンのある村で生まれた村娘で、10歳の選定の儀でヒーラーとしての才能を見出され、白魔道士となった。

そして今日、14歳となった俺は仲間であり幼馴染である3人と共にこのダンジョンに生成されている鉱石等の物資を収集するという仕事を与えられ来ていた。

そしてダンジョンに入ったところで魔物と出くわし、突然襲ってきたそいつから仲間を庇って俺は転落し今に至る。



14年か。プレイヤーとして存在するのと、こうしてリアルタイムでここで産まれ生きてきたのではやっぱり感じ方が違うな。



父を亡くし母親一人で育ててくれた主人公の母、アルウィナ。ここがゲームの世界だと気が付いた今でも、あの苦労して育ててくれた姿を想うと、ただのNPCだとはもう思えない。



上で待っている幼馴染の3人もそうだ。プレイしていた頃は要約された簡単な紹介があっただけだけど、今の俺は彼らと共にした思い出がある。



(さっさと【魔眼】を試して帰ろう……)



獣臭が漂い始めた。魔物が近くにいる、そう思った瞬間後ろに気配を感じた。



「!!」



殺気を感じ前方へと飛びのく。すると俺のいた場所に棍棒が振り下ろされ、当たった床が砕けた。バックアタック。奇襲だ。



「あっぶねえ」



ここにいる魔獣、リトルオークやゴブリン、角ウサギは低レベル。だから攻撃が当たったとしてもダメージとしてはそこまで痛く無い。回復魔法もあるし。

けど肉体的には痛いはず……それはちょっと嫌だ。俺はリトルオークへ杖を向け『エアマジック』を詠唱した。



ボッ!!と脚に当たり転ぶ魔獣。その為距離をとることができなかった。だが、それは狙い通り。瞬時に【魔眼】を発動させる。

俺の瞳が赤く染まり、対象のリトルオークの胸部と腋の中間あたりに小さい光が立ち昇った。あれこそが【魔眼】を持つ者だけが視える死に直結する点、【死門】。



(的確にあの点を攻撃する)



前職であるシーフでこれをモノにするのにかなりの時間を要した。この死に直結する点は必ず攻撃の届きにくい場所に発生する。さらに魔獣は動き抵抗するため、【死門】に攻撃を当てるという事は無数にある針の穴を通すような神業に等しい。



だが、この『エアマジック』により動けなくなった相手なら、その難易度は格段に下がる。



「グギャアアア!!」



俺の杖先がずぶり【死門】通じ体内へと深く刺さる。リトルオークが断末魔をあげ、即死した。



「うん、やっぱり『エアマジック』は使えるな。攻撃力は無いけど、ノックバックさせて動きを一瞬奪えるってのが強い」



検証終了。いいね、白魔道士と【魔眼】は俺の睨んだ通り相性がいい。欲を言えば杖じゃなくて前のキャラで使っていたダガーとか使いたいけど……あれじゃ魔法が使えないしな。



(でも確か、先端に刃が付いた杖が北西の海を渡ったとこのダンジョンのボスから落ちた気がする……あれほしいな)



とりあえずみんなの所に戻ろっか。そう思い帰ろうとした時、ふと気になりステータスを開いた。



「もう少しレベル上げたいな……」



実はこのダンジョン、チュートリアルに使われてはいるが、低レベルの魔獣が出るのは上の方だけだったりする。全100層あり、下の階層へと行くことができるが10階層ごとに強力な魔獣が存在し門番の役割をしている。

30階層あたりからエンドコンテンツレベルとなり、かなりのプレイヤースキルを要求される。

好奇心旺盛なプレイヤーは初心者のころ、この先がどこに続いているのかと階層を下りもれなく皆、痛い目にあっていると思う。



「100層クリアは全プレイヤーの一割にも満たない……しかしその分もらえるお宝はSSSレアのジョブに応じた武器。ほしい」



勿論、俺も前のキャラではクリアしたことがあったけど、それでもカンストレベルでAレアクラスの武器がないとキツい。60層を過ぎたあたりから一気に魔獣のレベルが上がってプレイヤースキルだけじゃどうにもならんしな。



(……でも世界ランク2位の奴が低レベル装備で踏破してたよな?なら、俺もできるか?)



チャレンジ精神に火が付きかけたところで俺は首を横へ振る。



いやいや、まてまて。たしか世界ランク2位がクリアしたのだって失敗した回数三桁越えだったはず。

それにもし挑戦して失敗したら、今の俺はどうなる?復活できるのか?

セーブのコマンドがあるメニューは開けないし、最悪死んだらこの人生が終了してしまう可能性がある。……それは、怖すぎる。



(無茶はしないでおくか。せっかくもらった命なんだし)



……でも、別にそこまでいかなくてもいいんだよな。俺の今のレベルでも一つ下の三層くらいでならレベリングできるはず。出てくる魔獣もここと大差ないし、レベルも少し高めの7、8ってところだ。



(少しだけレベリングしてかえろうか。うん、少しだけ、少しだけ……)



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