魔王を討伐したので年上メイドと辺境でスローライフします!

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薬草探し

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「ここからは、モンスターも出ます。急ぎではありますが慎重に進みましょう」
 アイリさんの言葉に僕は頷く。辺りは背の高い木々で囲まれうす暗い。初夏の新緑の匂いはステキだけれども、それを楽しむのは今することじゃない。

「確かにこの森、ファングラットが多いな」
「子供は山菜採りに山へ入ったらしいです。一応武装をしていたそうですが、油断して噛まれたみたいですね」
 山菜のフライはこの辺りの特産品で、観光客にも人気がある。先ほど訊ねてきた村人は宿を経営しているらしく、お客に出すつもりだったのだろう。

 キキッと小さな鳴き声がした。ファングラットが藪から飛び出してくる。見た目はネズミのようだが、中型の犬くらいのサイズがある。
「はっ!」
 僕は手首のスナップを使いソニックブームをぶつける。吹き飛ばされた魔物の身体は木に激突して、黒い霧を出しながら消滅する。死体が残らないのは魔物の特徴だ。

「妙ですね」
「うん」
 僕にも解った。このファングラットは興奮……いや、何かに怯えていた。
「先に人の入った形跡がありますね。足跡から……子供ではありません」
「うん、多分武装した冒険者だ」

 しばらく僕たちはその冒険者の痕跡を追跡した。やがて姿が見える。
 四人組の冒険者だ。全員男、体格は皆大柄だった。前衛っぽい鎧に大斧の男に魔法使いっぽい男、動きやすい革製の鎧を着た盗賊シーフっぽい男に、いかにも生臭坊主と言った僧侶と一通り面子は揃った冒険者だ。腕は悪そうじゃないが一流とはとても言えない感じだ。

 気配探知は苦手らしく、僕達がかなり接近しても気が付かなかった。
「なんだぁ……冒険者か?」
 僕達を見た第一声がそれだった。

「村の子供がファングラットに噛まれて重体です。薬草探しのクエストで参りました」
 アイリさんが丁寧にそういった。男たちのリーダー格と思われる男がふんと鼻を鳴らして応えた。アイリさんを見ても誰だかわかっていないようで、多分流れの傭兵だろう。
「俺たちは領主さまから直々に珍味のキノコを採るクエストを受けている。ウロチョロして邪魔するなよ」
 僕はちょっとむっと来たが、なにも言い返さなかった。

「人命がかかっています。先に進ませてもらいます」
「いや、そうはいかねえ、俺たちの探しているキノコは、近くに動物の気配を感じると擬態する習性がある。俺たちの後に付いて来いよ」
 男は横柄にそういった。

「叩きのめして先に進みましょうか?」
 アイリさんがちょっと怖い顔をしてそう言った。
「領主直々のクエストとか言ってたから、後がめんどくさそうだな」
 僕はやれやれと首を振るが、やることは決まっている。一刻も早く子供の元に薬草を持っていく。

 さて、叩きのめそうかという時にそれは起った。
 ぶもおおおおおおお!
 鳴き声だけでその巨体さがわかるほどの咆哮がとどろく。
「まずい、ファングボアか」

 ファングボアはイノシシのような巨体の動物でモンスターではない、しかし牙を使った突進は、当たり所が悪いと致命傷になる危険な動物だ。
「ちっ! ちょっと前に騎士団がモンスターの山狩りをしたって言うから来たのに、こんな大物を見逃してたのか、無能がっ!」
 男の一人が悪態をつく。とは言ってもファングボアはモンスターではないので見逃されたんだろう。

「かまうこたぁねえ、ここら一体を焼けば倒せるだろう」
「まっ! 待ちなさいっ!」
 アイリさんは男たちを制止しようとしたが、間に合わなかった。

「燃やし尽くせっ! ファイヤボールッ!」
 巨大な火球がファングボアを襲い、直撃する。火球は爆ぜて辺りに炎を撒き散らす。さすがのファングボアももがいて暴れるが、ほどなくこと切れた。

「何てバカなことを」
 アイリさんが絶句する。炎はみるみるうちに周囲へ広がり、その勢いはかなり激しかった。

「ちっ、思ったより燃えたな。一度退避だ。坊ちゃんたちも引き返しな」
 男は自分たちが山火事の元凶であるにもかかわらず。平然とした様子だった。

「薬草は……この先です。このままでは燃えてしまいます」
 アイリさんが悔しそうに下唇を噛む。男達へ殺意に近い感情を抱いているように見えた。

「大丈夫です。問題ないですアイリさん」
 僕は布でくるまれて、腰に提げられた聖剣ブレイブを取りだし掲げた。

「ブレイブッ! 起動だ!」
 ブンと小さな音が鳴る。
「対魔族用、特級破壊兵器聖剣ブレイブ、正常に起動しました。勇者、ユウキ・グリフィン・ブレイビー、適正認証オーケー。Sクラスまでの聖剣技が使用可能です」
 SSが使えなくなってる……やっぱり勇者の因子も魔王が消えて弱まってるのか。でも、Sまでで問題ない。

「攻城破壊剣技、トールハンマースタンバイ」
「トールハンマースタンバイ……Ⅴ、Ⅳ、Ⅲ、Ⅱ、Ⅰ、リリース可能です」
「いっけぇぇぇっ!」

 僕が剣を振りおろすと、巨大な魔力の塊が、燃えさかる森に向かって突き進んでいく。
「す、すごいっ」
 アイリさんが感嘆の声を上げ、男たちはあまりの出来事に唖然あぜんとしていた。
 目の前に特大の爆発が起きた。炎の塊が散り散りに吹き飛んでいき。爆発が収まったあとは、何もない更地が残っただけだった。

「ゆ、……勇者だったのか?」
 男たちが青ざめた顔で僕らを見た。隣のアイリさんから黒いオーラが隠しきれず漏れている。勇者の護衛といえば恐ろしい手練れと相場が決まっている。男たちはここでやっとアイリさんの恐ろしさに気が付く。

「ひ、ひぃぃっ」
 半ば腰が抜けたようになったまま、男たちは逃げ出した。

「無駄な時間を食いましたね。先に進みましょう」
「ああ……」

 少し先に進むと、清涼な水の流れがあって、そのほとりに青々と茂る草の群生があった。
「おっ……これはもしかして」
「ええ、抗生作用のある薬草、抗魔草です」
「よかった。早速採取しよう」

 アイリさんは持っていた短剣で慎重に薬草を採取した。結構沢山の量を魔法バックに詰めていたが、全部は採らなかった。
「こんなものでしょう。採り過ぎたら来年の収穫に支障が出ますから」
「うん、急いで戻ろう」

 僕らは来た時以上の速度で村へ向かった。結構僕も全速力に近い速度で走ったが、やっぱりアイリさんは平然とついてきた。
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