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告白
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正直、ルシアの口にラーメンは合うだろうか、ちょっと心配だったんだけど、ルシアは上機嫌でスープまで飲み干し喜んで完食した。
でもやっぱりルシアは女の子だから、一番のお気に入りは甘い揚げ饅頭だった。
家へ戻ってくると、ルシアは疲れたと言って、客間でさっさと寝てしまった。
この夜僕とアイリさんは、とても熱心に、お互いの存在を確かめ合うようなセックスをした。
普段だったらことが済むと、アイリさんはそそくさと使用人室へ帰るんだけど、この夜は僕が引き止めた。
「やはり、お話しした方が良いと思います」
「何を?」
「わたくしは罪人なんです」
「えっ?」
ブラック家の姫さまが急に何を言い出すのかと思った。
「ユウキさまは直接民間人を殺害したことはありませんよね?」
「うん、やりたくても出来ないんだ。でも魔軍に手を貸す民間人のふりをした人間は、デッカードやギレンが殺したよ。僕が指示を出したこともある」
「わたくしは民間人を殺したことがあります」
これは重大事だ。連合王国の国際規約に虐殺とはつまり軍人が民間人を殺すことであると明記されている。
「アイリさんは虐殺を?」
「いいえ、殺したのは軍に入る前の子供の時のことです」
「それは……どういう?」
「順を追って話しましょう。まずわたくしはブラック家の生まれではありません」
そんなはずはない、あの暗黒魔法は間違えなく世界最強クラスの魔術だ。ブラック家以外のものがあんな達人になるとは思えない。
「ユウキさまのパーティの回復魔法を担当したのはルシアさまとデッカードさまですね」
「うん、そうだよ。デッカードの生まれは名家じゃないんだけど、素晴らしい魔法の才能と物凄い努力で、賢者になったんだ」
「回復魔法の名家、ヒーラー家はご存知でしょうか?」
「ああ……うん、長女の人は上手く魔力因子を引き継げずに、魔法の才能は凡人なみで、僕達のパーティには参加しなかったんだ」
「彼女は長女ではありません。わたくしがヒーラー家の長女でした」
アイリさんが真剣な表情で僕を見た。すこし眼が潤んでいた。
そこまで話を聞いたところで、うっすらと察しがついた。
「魔力を暴走させて、属性反転を起こしたの?」
「その通りでございます」
「そのきっかけは何だったの?」
僕はできるだけ優しい声でそう訊ねた。
「女子修魔法学園の初等部で十歳のおりでした。わたくしは使い魔にネコを飼っていました。おとなしくて、でも気高いネコでわたくしはそのネコを可愛がっていました」
「うん……」
僕は短く相槌を打つと続きを促した。
「学園のヒーラー科でわたくしは治癒、蘇生魔法、薬学すべてでトップでした。そんなわたくしを気に入らない生徒がいました。賢者の家系の女の子です」
「彼女はわたくしが攻撃魔法を得意でないことをいいことに、わたくしの目の前でそのネコを殺しました」
アイリさんはとても悲しそうな表情をしていた。
「縛られ猿ぐつわをされて、眼の前で可愛いあの子がいたぶり殺されるの見せつけられました」
アイリさんは一回まぶたをきつく締め、涙を止めて続けた。
「その時思ってしまったんです……このクズどもを皆殺しにする力が欲しい……と」
僕はあえて黙っていた。小さく相槌をうつだけで、揺れるアイリさんの心を見守った。
「気が付いたら……わたくしの魔力は真っ黒になっていました。その賢者の家系の女の子とその取り巻きはわたくしの黒い魔力で引き裂かれて、ひき肉になっていました」
「あの時の絶望感は……今でも忘れられないのです」
そこまで言ったところでアイリさんは泣き崩れた。
アイリさんを慰める、いい言葉は僕には思いつけなかった。だから彼女をしっかり抱きしめた。
それからしばらく、アイリさんは僕の胸の中で泣いた。
その告白を聞いても、僕の中でのアイリさんの評価は変わらなかった。いや、むしろいっそう愛おしくなった。
「陛下は……」
僕がそう言うとアイリさんは僕の顔を見た。
「陛下に言われて、僕付きのメイドになったんだよね?」
「はい……はじめは断ろうと思っていました……ただ護衛にわたくし以上の使い手はいませんでしたし……陛下はユウキさまのことを、魔王を倒す旅の道中で捨て猫の里親を探すような人物だ……とおっしゃったんです」
アイリさんは小さくくすっと笑った。
「ああ……いいな……そんな人って……思ったんです」
「で、実物を見てどうだった?」
「予想以上に素敵な方でした。わたくしはとても正妻に成れる身分ではございませんが、お役目御免となる時まで、ユウキさまに全てを捧げます。勇者さまに仇なす全ての愚か者はわたくしの黒い炎が焼き尽くすでしょう」
誇らしげにそういうアイリさん。力強いけど、優しい顔だった。
たまらず僕はアイリさんの唇を奪った。
愛おしくてたまらなかった。
「い、いけません」
「第二ラウンド始まりだね」
「ああ……ユウキさま」
その夜、僕達は深夜まで、お互いの身体をむさぼりあった。
でもやっぱりルシアは女の子だから、一番のお気に入りは甘い揚げ饅頭だった。
家へ戻ってくると、ルシアは疲れたと言って、客間でさっさと寝てしまった。
この夜僕とアイリさんは、とても熱心に、お互いの存在を確かめ合うようなセックスをした。
普段だったらことが済むと、アイリさんはそそくさと使用人室へ帰るんだけど、この夜は僕が引き止めた。
「やはり、お話しした方が良いと思います」
「何を?」
「わたくしは罪人なんです」
「えっ?」
ブラック家の姫さまが急に何を言い出すのかと思った。
「ユウキさまは直接民間人を殺害したことはありませんよね?」
「うん、やりたくても出来ないんだ。でも魔軍に手を貸す民間人のふりをした人間は、デッカードやギレンが殺したよ。僕が指示を出したこともある」
「わたくしは民間人を殺したことがあります」
これは重大事だ。連合王国の国際規約に虐殺とはつまり軍人が民間人を殺すことであると明記されている。
「アイリさんは虐殺を?」
「いいえ、殺したのは軍に入る前の子供の時のことです」
「それは……どういう?」
「順を追って話しましょう。まずわたくしはブラック家の生まれではありません」
そんなはずはない、あの暗黒魔法は間違えなく世界最強クラスの魔術だ。ブラック家以外のものがあんな達人になるとは思えない。
「ユウキさまのパーティの回復魔法を担当したのはルシアさまとデッカードさまですね」
「うん、そうだよ。デッカードの生まれは名家じゃないんだけど、素晴らしい魔法の才能と物凄い努力で、賢者になったんだ」
「回復魔法の名家、ヒーラー家はご存知でしょうか?」
「ああ……うん、長女の人は上手く魔力因子を引き継げずに、魔法の才能は凡人なみで、僕達のパーティには参加しなかったんだ」
「彼女は長女ではありません。わたくしがヒーラー家の長女でした」
アイリさんが真剣な表情で僕を見た。すこし眼が潤んでいた。
そこまで話を聞いたところで、うっすらと察しがついた。
「魔力を暴走させて、属性反転を起こしたの?」
「その通りでございます」
「そのきっかけは何だったの?」
僕はできるだけ優しい声でそう訊ねた。
「女子修魔法学園の初等部で十歳のおりでした。わたくしは使い魔にネコを飼っていました。おとなしくて、でも気高いネコでわたくしはそのネコを可愛がっていました」
「うん……」
僕は短く相槌を打つと続きを促した。
「学園のヒーラー科でわたくしは治癒、蘇生魔法、薬学すべてでトップでした。そんなわたくしを気に入らない生徒がいました。賢者の家系の女の子です」
「彼女はわたくしが攻撃魔法を得意でないことをいいことに、わたくしの目の前でそのネコを殺しました」
アイリさんはとても悲しそうな表情をしていた。
「縛られ猿ぐつわをされて、眼の前で可愛いあの子がいたぶり殺されるの見せつけられました」
アイリさんは一回まぶたをきつく締め、涙を止めて続けた。
「その時思ってしまったんです……このクズどもを皆殺しにする力が欲しい……と」
僕はあえて黙っていた。小さく相槌をうつだけで、揺れるアイリさんの心を見守った。
「気が付いたら……わたくしの魔力は真っ黒になっていました。その賢者の家系の女の子とその取り巻きはわたくしの黒い魔力で引き裂かれて、ひき肉になっていました」
「あの時の絶望感は……今でも忘れられないのです」
そこまで言ったところでアイリさんは泣き崩れた。
アイリさんを慰める、いい言葉は僕には思いつけなかった。だから彼女をしっかり抱きしめた。
それからしばらく、アイリさんは僕の胸の中で泣いた。
その告白を聞いても、僕の中でのアイリさんの評価は変わらなかった。いや、むしろいっそう愛おしくなった。
「陛下は……」
僕がそう言うとアイリさんは僕の顔を見た。
「陛下に言われて、僕付きのメイドになったんだよね?」
「はい……はじめは断ろうと思っていました……ただ護衛にわたくし以上の使い手はいませんでしたし……陛下はユウキさまのことを、魔王を倒す旅の道中で捨て猫の里親を探すような人物だ……とおっしゃったんです」
アイリさんは小さくくすっと笑った。
「ああ……いいな……そんな人って……思ったんです」
「で、実物を見てどうだった?」
「予想以上に素敵な方でした。わたくしはとても正妻に成れる身分ではございませんが、お役目御免となる時まで、ユウキさまに全てを捧げます。勇者さまに仇なす全ての愚か者はわたくしの黒い炎が焼き尽くすでしょう」
誇らしげにそういうアイリさん。力強いけど、優しい顔だった。
たまらず僕はアイリさんの唇を奪った。
愛おしくてたまらなかった。
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「第二ラウンド始まりだね」
「ああ……ユウキさま」
その夜、僕達は深夜まで、お互いの身体をむさぼりあった。
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