怪談居酒屋~幽へようこそ~

文字の大きさ
5 / 12

下にいる②

しおりを挟む


 あの、私、藤田といいます。こちらの連れは会田さん、同じ大学に通っている友人です。

 その……奇妙なことが起こったのは一月くらい前のことで、引っ越したばかりの私のアパートで起こりました。

 そろそろ寒くなってきたかな? って時分の初冬のことで、空は透き通るように晴れた、でも気温の低い日でした。

 以前住んでいた格安の古いアパートが改築で取り壊すことになって、同じ大家さんが持っている別のアパートへ引っ越すことになったんです。
 新しいアパートの方が大学に近いし、設備も新しいし、家賃も幾分かまけてもらったので、私はその新居に喜んで入りました。
 単身のそれも学生の身分には過ぎたるような物件で、キッチンもお風呂もしっかりした物件で、しかも仕送りとバイト代で十分住める家賃だったので私は大満足でした。

 引っ越しの日のことです。私、物はそんなに持たない質なので、会田さんに手伝ってもらって引っ越しはすぐに終わったんです。
 荷物を梱包していた段ボールなんかは脇へ置いて、宅飲みでお祝いをしたんです。ええ、二人で。

 普段は私たち二人ともそんなに飲まない方なんですが、その日は美味しくスルスルと飲めちゃって、二人とも真っ赤になって、わいわいと騒いでしまいました。
 
 そんな感じで会田さんの終電も過ぎちゃって、会田さん、私の部屋に泊まっていくことにしたんです。

 私がベッドを使って、会田さんはベッドの脇に布団を敷いて横になりました。豆電球の明かりで部屋の中は一応見えるくらいの暗さにして、横になってすぐ、私はウトウトと眠りにおちるところでした。

 すると、突然起き上がった会田さんが私を揺すりました。どうしたの? と訊くと「ねえ、藤田さん。コンビニ行こうか?」と言うんです。

 私、だいぶ眠かったし、引っ越しで疲れてもいたので、会田さん一人で行ったら? というと「お願いだから、一緒に来て」と譲らないんです。

 あまりに会田さんが懇願するものだから、根負けした私は会田さんとコンビニに行くことを承諾しました。
 
 寝巻姿にダウンだけまとって、アパートの外に出ると身を切るような寒さで、私はやっぱ止めない? と言いました。

 会田さんはそんな私の手を取ると、ぐいぐいと引っ張りました。コンビニとは逆方向に。
 ねえ? どうしたの? 会田さんちょっと変だよ。と私が言うと。
「いいから、今から交番へ行くわよ」とすごい剣幕でいうので、私ははっとして、何があったの? と訊きました。

「いたの……貴方のベッドの下に……男が」と、私は青くなりました。えっ? 本当に? と再度尋ねると。血走った目がギラギラとしていて目が合った瞬間ぞっとしたと会田さんが言うんです。

 交番に着いて、お巡りさんに事情を話すと、あまりまともに取り合ってはくれなかったんですが、一応私のアパートまで来て、中の様子を確かめてくれました。
 結論から言ってしまうとそこに男は居ませんでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

隣人意識調査の結果について

三嶋トウカ
ホラー
「隣人意識調査を行います。ご協力お願いいたします」 隣人意識調査の結果が出ましたので、担当者はご確認ください。 一部、確認の必要な点がございます。 今後も引き続き、調査をお願いいたします。 伊佐鷺裏市役所 防犯推進課 ※ ・モキュメンタリー調を意識しています。  書体や口調が話によって異なる場合があります。 ・この話は、別サイトでも公開しています。 ※ 【更新について】 既に完結済みのお話を、 ・投稿初日は5話 ・翌日から一週間毎日1話 ・その後は二日に一回1話 の更新予定で進めていきます。

どうしてそこにトリックアートを設置したんですか?

鞠目
ホラー
N県の某ショッピングモールには、エントランスホールやエレベーター付近など、色んなところにトリックアートが設置されている。 先日、そのトリックアートについて設置場所がおかしいものがあると聞いた私は、わかる範囲で調べてみることにした。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

本野汐梨 Honno Siori
ホラー
 あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。 全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。 短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。 たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

処理中です...