1 / 6
001
しおりを挟む
「シャーロット、ブローチは?」
「…忘れてしまって」
「10歳になってせっかく魔法が使えるようになったというのに、忘れるなんてバラトレ魔法学園生としての自覚が足りませんよ。ブローチがないと魔法が使えないのは分かっているでしょう?取ってきていただけますか?」
「…はい」
シャーロットは有無を言わさないレナータ先生の態度に頷くしかなかった。本当は忘れてなどいない。私のブローチはまず存在しないのだ。シャーロットは自分の情けなさにとっさに嘘をついてしまった。
この世界では魔力を使うためにブローチを使う。貴族ともなれば代々伝わっているような格式高いものを。10歳の誕生日プレゼントとして親から魔法のブローチが与えられ、魔法を使えるようになるのが常識なのだが、シャーロットは貰えなかった。
魔法のブローチを貰えないなんて貴族の娘としてはありえない。
本当はシャーロットも10歳の誕生日にブローチを受け継ぐはずだった。妹のメアリーさえいなければ。
***
「メアリー、誕生日おめでとう。少し早いけどブローチをあげよう。大切にするんだよ。」
「本当に私に?大変光栄ですわ」
お父様がまだ9歳のメアリーにブローチを渡す。
綺麗なジュエリーがたくさん散りばめられた魔法のブローチを嬉しそうに受け取るメアリーと笑顔で見守るお父様とお母様。
ローズマリー家に伝わる由緒正しいブローチは、姉の私ではなく妹のメアリーのものになろうとしていた。
「どうして私にはないのですか?」
「メアリーにあげるのがふさわしいからよ。シャーロットにはもったいないわ」
お母様はメアリーに向ける笑顔とは一転して、険しそうな顔で私に言い放つ。
ずっと昔に私にブローチをあげるのが楽しみだわと仰っていたことはきっと覚えていないのだろう。
今日は私とメアリーの誕生日。
いつからか忘れ去られて、メアリーだけの誕生日になった。
妹のメアリーはいくつもの華やかなドレスとジュエリーをプレゼントされていて、私には本当に最低限のものしか用意されないことが当たり前になっていた。
それでも代々ローズマリー家に伝わる魔法のブローチだけは長女の私が頂けると思っていたのは、とんだ思い上がりだった。本当に恥ずかしくなる。
これまで家のために役に立ちたいとマナーや勉強を頑張ってきた。ローズマリー家として恥じることがないように努力してきたのに全て無駄に思えてきた。
「代わりのブローチもいただけませんか?」
「シャーロットにブローチなんていらないわ。どのみち大した魔力ではないのだから」
私は自分の魔力を確かめることすらさせてもらえなかった。
「…忘れてしまって」
「10歳になってせっかく魔法が使えるようになったというのに、忘れるなんてバラトレ魔法学園生としての自覚が足りませんよ。ブローチがないと魔法が使えないのは分かっているでしょう?取ってきていただけますか?」
「…はい」
シャーロットは有無を言わさないレナータ先生の態度に頷くしかなかった。本当は忘れてなどいない。私のブローチはまず存在しないのだ。シャーロットは自分の情けなさにとっさに嘘をついてしまった。
この世界では魔力を使うためにブローチを使う。貴族ともなれば代々伝わっているような格式高いものを。10歳の誕生日プレゼントとして親から魔法のブローチが与えられ、魔法を使えるようになるのが常識なのだが、シャーロットは貰えなかった。
魔法のブローチを貰えないなんて貴族の娘としてはありえない。
本当はシャーロットも10歳の誕生日にブローチを受け継ぐはずだった。妹のメアリーさえいなければ。
***
「メアリー、誕生日おめでとう。少し早いけどブローチをあげよう。大切にするんだよ。」
「本当に私に?大変光栄ですわ」
お父様がまだ9歳のメアリーにブローチを渡す。
綺麗なジュエリーがたくさん散りばめられた魔法のブローチを嬉しそうに受け取るメアリーと笑顔で見守るお父様とお母様。
ローズマリー家に伝わる由緒正しいブローチは、姉の私ではなく妹のメアリーのものになろうとしていた。
「どうして私にはないのですか?」
「メアリーにあげるのがふさわしいからよ。シャーロットにはもったいないわ」
お母様はメアリーに向ける笑顔とは一転して、険しそうな顔で私に言い放つ。
ずっと昔に私にブローチをあげるのが楽しみだわと仰っていたことはきっと覚えていないのだろう。
今日は私とメアリーの誕生日。
いつからか忘れ去られて、メアリーだけの誕生日になった。
妹のメアリーはいくつもの華やかなドレスとジュエリーをプレゼントされていて、私には本当に最低限のものしか用意されないことが当たり前になっていた。
それでも代々ローズマリー家に伝わる魔法のブローチだけは長女の私が頂けると思っていたのは、とんだ思い上がりだった。本当に恥ずかしくなる。
これまで家のために役に立ちたいとマナーや勉強を頑張ってきた。ローズマリー家として恥じることがないように努力してきたのに全て無駄に思えてきた。
「代わりのブローチもいただけませんか?」
「シャーロットにブローチなんていらないわ。どのみち大した魔力ではないのだから」
私は自分の魔力を確かめることすらさせてもらえなかった。
174
あなたにおすすめの小説
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
望まない相手と一緒にいたくありませんので
毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。
一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。
私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる