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メアリーからブローチを貰った翌日、私はお母様の甲高く怒鳴るような声によって目が覚めた。

「…てこと!メアリーに……なさい!」
お母様はノックもせずに、私の部屋に入ってきた。まだ起きてから時間が経ってないこともあり、お母様が何を言いたいのか理解ができなかった。

「お母様どうされたの?」
また下がりそうなまぶたに抵抗しながら、お母様に尋ねる。今日は特に催しがない日だし、お客様が来られるという話も聞いていないはず。寝坊したというわけでもないし、こんなにもお母様が感情をあらわにされる理由が分からなかった。

「メアリーのブローチを奪い取ったのでしょう!メアリーが泣きながら教えてくれましたよ。返してあげなさい!」

お母様が何を言っているのか理解ができなかった。私がメアリーのブローチを奪う…?昨日メアリーは自分から、私にブローチをあげると申し出てくれた。お母様は何か勘違いされている?

「シャーロットお姉様ひどい…いくらブローチが欲しいからって私のものを奪わないでください」
お母様の後ろにはメアリーが隠れていた。涙を浮かべながら私を責め立ててくる。

「誤解です!私はメアリーからブローチをプレゼントされたのです!決して奪ってなどいません」

「嘘をつかないでください。素直で優しいメアリーをこんなに泣かせるなんて信じられません。ブローチはどこへやったのですか?」
お母様は聞く耳を持ってくれない。私が奪ったと信じ切っている。

「…本当に取っていません。私を信じてください…」
泣きそうになりながら、喉から声を絞り出して訴える。状況を理解すればするほど、メアリーが私を罠にかけたとしか思えない。嘘だと思いたかった。昨日の状況や弁明をたくさん言いたかった。でも泣くのをこらえることだけで精一杯だった。

「お母様!ブローチありましたわ!」
メアリーの嬉々とした声が部屋に響く。勝手にジュエリーボックスを開けて、昨日私にくれたはずのブローチを見つけてお母様に笑顔を向けている。さっきまで泣いていたとは思えない。

「良かったわね、メアリー。」
お母様はブローチが見つかって安心したみたい。結局、私の話は何も聞こうともしてくれなかった。

「このことはお父様にも報告しますからね。」
冷たい目で私に言い放つお母様。メアリーをそんな目で見ることは絶対にないのに。

行きましょと言ってお母様とメアリーは私の部屋から去っていった。

ドアを閉じる直前、メアリーが私の方を向いてバカにした笑いを浮かべていた。
ああ、メアリー。私を最初から罠に掛けるつもりだったのね。
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