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第三章 王都炎上
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しおりを挟む戦いは激しさを増していく。
キョニーは飛び回りながら、炎系や風系呪文を連打してくる。
俺の持つ剣で呪文は霧散していくので、避けるまでもない。魔道具による効果で打ち消しているため、魔力操作もいらないし、体力的な消耗も少ない。
近接戦闘用に作ってもらった剣だが、長期戦にも向いているようだ。
マリアがこんな腕のいい鍛冶屋だったとは。――レイチェル、頼むぞ。なんとか生き返らせてくれ。
「ちいっ、小癪な!」
焦れたキョニーが、≪魔力の矢≫を連打してくる。
剣で打ち消せる範囲は打ち消し、漏らした矢は素手で受け止め、握りつぶした。
鈍い痛みが走ったが、そんなことよりも、怒りが大きかった。
「こんなものか、魔族の力は」
この程度のやつに、マリアは殺されたのか。この程度のやつから、俺はマリアを守れなかったのか。
怒りの矛先は、情けない自分自身へだった。
唐突に、ばんっと大きな音を立てて、扉が開かれた。
優男の魔法剣士、斧をもったごつい戦士、そして女魔術師と女僧侶。ごく一般的な構成の四人パーティーだ。
「王様、お怪我はありませんかっ!」
「おお、勇者様だ」
「勇者パーティーが来たぞ、これで助かった!」
なるほど、あの優男の魔法剣士が勇者か。
女魔術師がさっと王を庇う位置に移動し、防御呪文を展開していく。僧侶も兵士の治療に入っている。
迷いのない、よい動きだ。
勇者だろう男が、俺に駆け寄り、話しかけてくる。
「貴様、ただの冒険者か? いくら緊急時だからといって、城内、しかも王の間に入り込むなど何を考えている? 王を暗殺でもして、どさくさに魔族に取り入るつもりか?」
不愉快な気分だった俺は、ろくに考えずに答える。
「バカなことを言うな、それよりあの魔族は俺の親友の仇だ。手を出すな」
「なるほど、読めたぞ。他の兵士らが戦っている間に魔族の頭を狙い、手柄を独り占めする気だな」
「そんなつもりはない」
「いいや、信じられないな。だいたい俺たちのパーティーは、城の門から順にモンスターを倒しながら来たんだ。どこで俺たちを出し抜いた? ここにいることこそが、お前たちがズルをした証拠だろう」
ああ、そういや≪透過≫を使って、城壁なんかすり抜けたからな。そういう意味では、確かに出し抜いたと言えるだろう。
しかしこの状況で、魔法で追い抜きましたなんて正直に言うわけにもいかない。
「お前たちに教える義理はない」
「怪しいな、貴様」
勇者はなぜか俺にむかって切りかかってきた。おい、相手が違うぞ。
とっさに剣で受け止める。ききんっと固い音がする。
冷静に考えて、この混乱の中で王の間に武器を持った見知らぬ魔術師がいるのだ。いくら魔族と戦っていたといっても、素直に信じてもらえるわけがない。特に魔族なんて、だましだまされで生きているやつらだ。こいつの行動も無理がないところではあるのだが。
とはいえ、面倒なことは間違いない。
適当に勇者をあしらいながらサクラを見ると、あっちは巨漢の戦士に追いかけられていた。
「ちっ、すばしっこい女め。逃げるなっ!」
「だって捕まったら、私のことをぶつじゃないですかー!」
ぶんぶんと斧を振り回しているが、動きだけ見れば、サクラの敵ではないな。
実際に彼女はぴょいぴょいと余裕をもって斧を避けている。カタナを抜いていないのは、サクラなりの「敵じゃない」アピールだろう。
そのときだ、キョニーが黒い≪魔力の矢≫を放つ。闇属性の矢は、毒を付与されていることが多い。
まずいな。
俺は勇者をとっさに突き飛ばし、≪魔法盾≫を展開した。虚空に現れた立体魔法陣が矢をはじく。
「くそっ、守るつもりなら、もっとしっかり守れ」
勇者が毒づいた。
ふん、こういうときに礼の一言があれば、しこりなく和解できるのだぞ。
口は悪いが、あいつもだてに勇者と言われているわけではないようだ。
俺が突き飛ばした勢いを利用し、壁を蹴ると、キョニーにとびかかる。
一瞬だった。右腕に深手を負ったキョーニーの姿。
「くそっ、6対1ではさすがに分が悪いか」
キョニーは算数が苦手なようだ。おい、間違えるなよ。俺と勇者は仲間ではない。4対1対1(+1)だ。
キョニーは、ダラダラと出血している右手をおさえ、ばさりと翼を広げた。窓に足をかけ、捨て台詞を吐いた。
「今日のところはこのくらいにしておいてあげるわ。だが、魔族の力を甘く見ないことね。これからが楽しみだわ」
そして、そのまま飛び去って行った。
後には、勇者たちと俺、そして影の薄い王様が残された。
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