賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

文字の大きさ
20 / 200
第三章 王都炎上

4:2:1

しおりを挟む

 戦いは激しさを増していく。
 キョニーは飛び回りながら、炎系や風系呪文を連打してくる。
 俺の持つ剣で呪文は霧散していくので、避けるまでもない。魔道具による効果で打ち消しているため、魔力操作もいらないし、体力的な消耗も少ない。
 近接戦闘用に作ってもらった剣だが、長期戦にも向いているようだ。
 マリアがこんな腕のいい鍛冶屋だったとは。――レイチェル、頼むぞ。なんとか生き返らせてくれ。

「ちいっ、小癪な!」
 焦れたキョニーが、≪魔力の矢マジックアロー≫を連打してくる。
 剣で打ち消せる範囲は打ち消し、漏らした矢は素手で受け止め、握りつぶした。
 鈍い痛みが走ったが、そんなことよりも、怒りが大きかった。
「こんなものか、魔族の力は」
 この程度のやつに、マリアは殺されたのか。この程度のやつから、俺はマリアを守れなかったのか。
 怒りの矛先は、情けない自分自身へだった。

 唐突に、ばんっと大きな音を立てて、扉が開かれた。
 優男の魔法剣士、斧をもったごつい戦士、そして女魔術師と女僧侶。ごく一般的な構成の四人パーティーだ。

「王様、お怪我はありませんかっ!」
「おお、勇者様だ」
「勇者パーティーが来たぞ、これで助かった!」

 なるほど、あの優男の魔法剣士が勇者か。
 女魔術師がさっと王を庇う位置に移動し、防御呪文を展開していく。僧侶も兵士の治療に入っている。
 迷いのない、よい動きだ。

 勇者だろう男が、俺に駆け寄り、話しかけてくる。
「貴様、ただの冒険者か? いくら緊急時だからといって、城内、しかも王の間に入り込むなど何を考えている? 王を暗殺でもして、どさくさに魔族に取り入るつもりか?」


 不愉快な気分だった俺は、ろくに考えずに答える。
「バカなことを言うな、それよりあの魔族は俺の親友の仇だ。手を出すな」

「なるほど、読めたぞ。他の兵士らが戦っている間に魔族のトップを狙い、手柄を独り占めする気だな」
「そんなつもりはない」
「いいや、信じられないな。だいたい俺たちのパーティーは、城の門から順にモンスターを倒しながら来たんだ。どこで俺たちを出し抜いた? ここにいることこそが、お前たちがズルをした証拠だろう」

 ああ、そういや≪透過シースルー≫を使って、城壁なんかすり抜けたからな。そういう意味では、確かに出し抜いたと言えるだろう。
 しかしこの状況で、魔法で追い抜きましたなんて正直に言うわけにもいかない。

「お前たちに教える義理はない」
「怪しいな、貴様」

 勇者はなぜか俺にむかって切りかかってきた。おい、相手が違うぞ。
 とっさに剣で受け止める。ききんっと固い音がする。
 冷静に考えて、この混乱の中で王の間に武器を持った見知らぬ魔術師がいるのだ。いくら魔族と戦っていたといっても、素直に信じてもらえるわけがない。特に魔族なんて、だましだまされで生きているやつらだ。こいつの行動も無理がないところではあるのだが。
 とはいえ、面倒なことは間違いない。

 適当に勇者をあしらいながらサクラを見ると、あっちは巨漢の戦士に追いかけられていた。

「ちっ、すばしっこい女め。逃げるなっ!」
「だって捕まったら、私のことをぶつじゃないですかー!」

 ぶんぶんと斧を振り回しているが、動きだけ見れば、サクラの敵ではないな。
 実際に彼女はぴょいぴょいと余裕をもって斧を避けている。カタナを抜いていないのは、サクラなりの「敵じゃない」アピールだろう。


 そのときだ、キョニーが黒い≪魔力の矢マジックアロー≫を放つ。闇属性の矢は、毒を付与されていることが多い。
 まずいな。
 俺は勇者をとっさに突き飛ばし、≪魔法盾マジックシールド≫を展開した。虚空に現れた立体魔法陣が矢をはじく。

「くそっ、守るつもりなら、もっとしっかり守れ」
 勇者が毒づいた。
 ふん、こういうときに礼の一言があれば、しこりなく和解できるのだぞ。

 口は悪いが、あいつもだてに勇者と言われているわけではないようだ。
 俺が突き飛ばした勢いを利用し、壁を蹴ると、キョニーにとびかかる。
 一瞬だった。右腕に深手を負ったキョーニーの姿。

「くそっ、6対1ではさすがに分が悪いか」
 キョニーは算数が苦手なようだ。おい、間違えるなよ。俺と勇者は仲間ではない。4対1対1(+1)だ。

 キョニーは、ダラダラと出血している右手をおさえ、ばさりと翼を広げた。窓に足をかけ、捨て台詞を吐いた。
「今日のところはこのくらいにしておいてあげるわ。だが、魔族の力を甘く見ないことね。これからが楽しみだわ」
 そして、そのまま飛び去って行った。

 後には、勇者たちと俺、そして影の薄い王様が残された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...