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第三章 王都炎上
イン・ザ・ダーケスト・アワー
しおりを挟む「逃がしたか」
勇者パーティーが乱入しなければ違ったかもしれやいが、仕方ない。
俺は王に駆け寄る。横の兵士は鎧のおかげか、見た目よりもケガは軽かった。王も重症ではあるものの、命に別状はないだろう。
俺は女僧侶に声をかける。
「大丈夫か? この程度なら回復魔法でなんとかなるだろう?」
「それか、今やってますけど、王様の体力が落ちているせいか効きが悪くて」
確かに王は苦しそうに顔をしかめており、楽になったようには見えない。
妙だな、確かに高齢ではあるが、この傷はそれほど――。
ああ、なるほど。
「おい、ここだ」
俺は腹部のある個所を指さしてやった。
「え? そこはそんなに外傷は……」
「いいからやるんだ、体の内部の臓器が損傷している」
「え、内部、ですか?」
女僧侶は半信半疑ながら、俺の指示通りに回復呪文をかける。
俺はその間、王の頭に手を乗せ、≪鎮痛≫をかけてやる。
打撲などの場合、体の表面はなんともなくとも、内部が傷ついていることがある。知らないと、外からはわかりにくいからな。
俺は日本で過ごしていたこともあり、臓器というものがあるということも知っているが、魔法で傷を治すことになれてしまうと、よくやりやすい失敗だ。
「すごい、王様の顔に血色が戻ってきました!」
俺の指示通りやると、すぐに王は回復した。なるほど、勇者パーティーの一員だけあって、腕自体はなかなかのものだ。
そうこうしていると、部屋に兵士たちがなだれ込んできた。
「王様、大丈夫ですかっ!!」
「ああ、なんとか魔族は追い返した。早く治療を!」
勇者の指示で、テキパキと兵士たちが動いていく。
隊長らしき兵士が、勇者に聞いた。
「ところでそのー、あちらの方たちは?」
「ああ、こいつらは街の冒険者だ。色々聞きたいことがあるからな、ゆっくり話を聞かせてもらおうか? まさか、逃げないよな?」
勇者はこちらを見て、にんまり笑った。まるで魔族だな、その笑い方は。
「サクラ、逃げるぞ」
「え、ちょっと待ってくださいー、なんで私たちが逃げなきゃいけないんですか? 誤解はといたでしょー?」
敵という誤解はとけたとしても、俺の正体がバレるのはよろしくない。こういう輩にはなにを言っても無駄だからな
俺はサクラの横へ走り寄ると、じりじりとせまる勇者に追い込まれるように、窓へと後退する。キョニーが逃げた、あの窓だ。
俺はサクラをひょいと小脇に抱えると、ばっと外へ飛び降りた
「え? ほえ? わああああーーーーっ!! イングウェイさん、落ちてる! 助けて、たすけてぇぇー!」
「落ち着け! そしてうるさい。ほら、≪飛行≫だ」
呪文を唱えると、俺たち二人を淡い魔力が包み、ゆっくりと降下していく。
「だだだ、だめですうっ! 高い、怖い、うっひゃー!」
どちらにしてもうるさいじゃないか。
あたりはすっかり暗くなっていた。この暗闇に紛れて、そのまま逃げるつもりだ。
いくらなんでも、この混乱の中で夜中に兵士を動かす余裕があるとも思えない。
王城は高い位置にある。降りていく中で俺は眼下に広がる街並みをしっかりと目に焼き付けておいた。
派手な混乱はすでになく、モンスターの姿も見えない。しかしところどころでまだ火の手がくすぶっているのがわかった。
短い付き合いではあるが、大切な仲間の住む、第二の故郷だ。
ずいぶん好き勝手をしてくれたじゃないか。
この代償は高くつくぞ。
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