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第三章 王都炎上
嘘つき
しおりを挟む俺たちはレイチェルの家へと戻ってきた。
「レイチェルー、もどりましたよー?」
サクラが警戒しながら、ゆっくりと歩みを進める。モンスターもだが、混乱の中で暴漢が入り込んでいないとも限らない。なかなかいい心がけだ。
まあ、魔力で探知する限りは大丈夫なんだけどな。油断するよりはずっといい。
地下室へと降りていく。
がちゃりとドアを開ける。
カタカタと俺たちを出迎える骸骨の奥で、ベッドに寝かされているマリア。
俺が近づくと、なんと死んだはずのマリアが、のそりと起き上がった!
マリアはこちらを見て、言った。
「ア、いんぐうぇい・サン、オカエリナサイ。ボク、イキカエッタヨ!」
どことなくぎこちない動作で立ち上がるマリア。艶のある青い髪こそそのままだが、顔は青白く、ところどころに荒い縫い目が見える。
こちらを見てはいるものの、その目からは感情が読み取れなかった。
前の世界にはフランケンシュタインズ・モンスターという怪物がいたが、彼の花嫁にぴったりだろう。
レイチェルはぐったりと壁にもたれかかり、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立てていた。
おそらく魔力を限界まで使ったのだろう。
俺は笑顔でマリアを受け入れた。
「良かったよ、死ななくて。いや、死んだのか。とりあえず、無事生き返ってくれて、良かった」
「よくないですよー! マリアさん、まりあさぁんっ。ぐずん、へぶしっ、ずびー」
泣くな、鼻をかめ。
「ぞ、ゾンビ―になっちゃって、かわいそう。うええーん」
泣きじゃくるサクラに、俺は言った。
「受け入れてやれ。マリアだけではなく、頑張ってくれたレイチェルにも悪いぞ?」
あっ、とサクラは気付いた。そして下を向き、小さく言った。
「ごめんなさい、でも、でも……」
床にぽたぽたと涙の染みが広がる。
あー、しまった。やりすぎたか。
「おいマリア、やりすぎだ、普通に話せ」
「さくら・サン、ナカナイデ。 ……って、バレてたのかー」
当たり前だ。まったく、いつまで遊んでいるのだ。
「大丈夫だよ、サクラ。ボクの体はゾンビーになっちゃったけど、頭まで腐ってはいないから! これも迅速に死療術を使ってくれたレイチェルのおかげさ!」
「すまない、間に合わなくて」
そうだ、体は死亡してしまったことに変わりはない。まずは謝らなければ。俺はマリアにぶたれるのも覚悟していた。
が、マリアが口にしたのは、感謝の言葉だった。
「大丈夫だよ、気にしてない。レイチェルから聞いてる。他の人を助けてたんでしょ? 死んじゃったのは悲しいけど、途中でみんなが子供たちとかを見捨ててたら、それも悲しいもの」
おそらく、師匠に先立たれた自分と、その子供たちを重ね合わせているのだろう。
「そんなことより、ゾンビになっちゃったけど、変わらずに接してくれる?」
「もちろんだ」
「でも、言葉だけじゃ信じられないよ」
まったく、どうしろってんだ。俺が困っていると、マリアは言った。
「ボクの体、気持ち悪くない? 大丈夫なら、その、……抱きしめられる?」
なんだ、そんなことでいいのか。
「簡単だ」
「え? っひゃっ、そんないきなり」
俺はマリアの手を引き、そのまま優しく抱きしめた。
ひんやりとしているが、女性らしい柔らかい感触は、しっかりとある。
「あ、ちょっと、ずるい! 私だってがんばったのにー」
後ろでサクラがふんすかと鼻息を荒くしていた。めんどくさいのでぽんぽんと頭をなでてやると、でへへーとだらしない声をあげ、後ろから抱き着いてきた。
おい、同時にくっつくな、動けないじゃないか。
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