賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

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第七章 製造と販売

信頼

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 マッシュルーム・ダンジョンの死闘から3日、俺たちはしばしの休息をとっていた。
 ダンジョンブレイクの報酬と、奥で見つけたキノコを売り払った金額とで、俺たちの生活は潤いに潤いを重ねつつあった。

 だが、そんな中でも一人ストイックにハンマーをふるい続けるものもいる。ゾンビのマリアだ。



 かーん、かーん、かーん。

「よし、できたよ。イングウェイさん」
「ああ、いいできだ。では魔法文字ルーンを書き込むぞ。」

「にょーん、いんぐうぇいさーん。ごくり、ごくり。ちゅー」

「押さえておくから、ここに順番に、頼むよ」
「任せておけ。すぐ終わる」

「ぐびぐび、ぷはー。ちゅー」

「よし、終わったぞ、すぐに定着させるんだ」
「わかってる、任せて」

「えへへー、汗のにおい、好きー。ごくごく。ぷひー」

 とてかーん、とてかーん。


 工房で汗だくになり剣を打つ、マリア。その横でアシストをする、俺。
 飲みながら俺にべたつき続ける、レイチェル。

 そうだ。俺の腕には、背丈だけ縮んだレイチェルがべったりとしがみついていた。

 ふにふにと柔らかい胸を常に腕に押し付けてくる。おかげでこちらまで変な汗をかいてしまうが、レイチェルは気にしないどころか喜んでいる様子で、俺の胸元や脇へと顔を埋めてくる。

 ダンジョンから戻ってからというもの、ずっとこんな感じだ。さすがにベッドにもぐりこもうとしたときには、強めに言って自分の部屋に戻らせた。だいたい俺のベッドは一人用なのだ、何かの拍子に落ちてケガをしたら危ないからな。

 問題は、もう一つある。サクラだ。
 レイチェルの様子を相談した時のことだ。

「――というわけでレイチェルがべったりくっついてきて困っているんだが、何かいい方法はないか?」
「えーと、それって、イングウェイさんは困ってるんですか? いやなんですか?」
「困っているわけではない、むしろ彼女には勇気を出してほしいんだ」
「ほう、勇気を……出すとは?」

 サクラは焼き鳥を頬張りながら、変な顔で聞き返してきた。

「ああそうだ。レイチェルが俺から離れようとしないのは、あのダンジョンの恐ろしさが頭に残っているからだ。パーティーの中で一番強い俺のそばにいれば安心だ。そう思う気持ちが強く、俺から離れようとしないのだろう。
 しかし、俺はギルド『ミスフィッツ』のリーダーであり、レイチェルだけをひいきするわけにもいかない。そしてこういうことは、本人の勇気で解決するしかないのだ。一人で戦える自信をつけてやれば、少しは変われると思うのだが――」

「……イングウェイさん、それ、本気で言ってます?」

 なんだ? サクラが静かに冷たい気を発している。これはまさか、殺気か?

 選択肢を誤ると、まずい。俺の本能は警戒を発した。
 しかし、俺にはサクラが何を怒っているのか、まるで判断がつかなかった。

「本気、なのだが……。なにかまずかったか?」

「さいってーですね、イングウェイさん。見損ないました」

 サクラは回れ右をすると、そのままどこかへ行ってしまう。

 しまった。サクラは、ダンジョンへ行くのに仲間外れにしたことを怒っているようだ。
 考えてみれば当たり前か、俺たちだけで楽しんでおきつつ、困った時の対処だけ相談するだなんて。

 俺は反省した。
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