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第七章 製造と販売
ユーズ・ザ・マシーン
しおりを挟む次の日、俺はフィッツに相談した。
「――というわけなんだ、フィッツ。君はサクラの気持ちがわかるかい?」
フィッツはあきれたようにため息を吐き、言った。
「まったく、女心がちっともわかってないにゃー、インギーは。いいかにゃ? 女の子は金にゃ。アクセサリとか宝石、札束でほっぺた叩けば一発にゃん」
なるほど、やはりそうだったか。
「ああ、わかるぞ。俺も同意見だ」
しかし問題が一つ。俺には、金が無かった。
別段生活に困っているわけではないが、自由に使えるまとまった現金というものはない。
しかし簡単なことだ、無ければ作ればいいだけなのだから。
「――というわけなんだ、マリア」
「なにが”というわけなんだ~”だよ、ばっかじゃないの?」
「辛辣だな、しかし君だって金は欲しいんだろう?」
そりゃまあ、とマリアは言った。お金はあって困るものではない。
特に彼女は鍛冶屋だ。素材や道具、燃料費など、ミスフィッツ内で一番の金食い部署でもある。
マリアに話を持ってきたのは、そういう面でも簡単に協力が見込めそうだという打算もあった。
「マリア、これを見てくれ。作ってもらいたいものがある」
「ん、なに? これ、機械の図面かな」
俺は簡単に書いた設計図を見せ、説明する。
「ここをこうして、ここは回転するようになっている。水はこちらから入れる」
「はー、よく考えたねえ、こんなの。でも、本当にうまくいくのかな?」
「うまくいくさ。ちなみにここはこういう仕組みだ」
「ほー、すごいな、面白いね、これ」
俺の説明を聞きながら、マリアは感心しきりだった。
作ろうとしている機械は、洗濯機だ。先日のキャンポテルーの件で、この世界に洗濯機が無いことは調査済みである。
金を集めるのに必要なのは、汗や努力ではない。機会と、運だ。
幸いこの世界にも生活魔法というやつは浸透している。水の心配はない。電源の問題は、充電式の魔石を使った。
俺は何も、金を稼ぐ目的だけで、洗濯機を作ろうとしているわけではないのだ。
忘れかけていたわけではないが、王からの依頼を思い出す。
キャンポテーラ教の力をゆっくり、そして確実に削ぐには、信者を減らすのが一番だ。普通ならそれは時間がかかる道だし、あまりにも非効率だ。
だが、洗濯板より優れた家電製品があったらどうだ? 便利さの誘惑に勝てる人間は、そうはいない。
なにも信者を全滅させる必要はないのだ。キャポテラー教の力を弱めることができれば、それでいい。
それに、あれだけ大きい組織だ、つぶして終わりなどもったいない。
「俺はこの道具を使い、キャンポテーン教を乗っ取ろうと思う」
「おお、それはとてつもなくでっかい目標だ」
俺は計画をマリアに説明する。
新たに別の宗教、そうだな、仮にウォッシャブル教とでも名付ける。その神様の名は、ガスロンコなのだ。ガスロンコ様は世に洗濯機を授け、それは家事を劇的に有利にする。
「つまり、胸が洗濯板である必要もなくなる、と?」
「察しがいいな、マリア」
乗っ取りさえすれば、権力も金も思いのまま。札束風呂でも用意すれば、きっとサクラの機嫌も直るはずだ。
「ねえねえっ、札束風呂に入れば、ボクの胸も大きくなるかなっ?」
「ああ、もちろんだ。札束風呂は背が伸びる効果もあるからな。きっと胸も大きくなるぞ」
「決まりだね、イングウェイ。やっちゃおう!」
マリアと俺はにんまりとあくどい笑みを浮かべると、互いの腕をぐっと握りしめた。
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