賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

文字の大きさ
110 / 200
第12章 魔獣討伐

猫も歩けば棒にジャスティス

しおりを挟む

 ホームに帰った俺とキャスリーは、驚く報告を受けた。
 なんと、フィッツがまたもや街中で例の男に出会い、ケンカをふっかけて返り討ちにあったらしい。

「ご、ごめんにゃー、インギー……」
 どうやらしばらく動けそうにない。これでは遠征に連れていくことなどとても無理だろう。
 まったく、だからまずは技を鍛えろと言ったのに。

 男のことは気になるが、探している暇もない。


「で、誰を連れていきますの? わたくしは絶対についていきますわよ!」
 胸を逸らして主張するキャスリー。まあ、キャスリーを連れていくのは決まりだろう。
 心情的なものもあるし、遠征先の土地の知識があるのは、この中で彼女だけだ。

「わかっている。そして、サクラは残ってもらおう。フィッツが欠けた今、サクラまでここを離れるのはさすがにまずいだろう」
「はい、わかりました。こっちのことはどーんと! 任せてくださいねー」
「サクラー、よろしくにゃん」
 やれやれ。こっちの心配を知ってか知らずか、笑顔で留守番を引き受けるサクラ。

 でもさ、とマリアが口をはさんでくる。
「ボクは当然、工房アトリエから離れられないから留守番として、残るはレイチェルしかいないよ?」

「いや、もう一人いるだろう?」
「へ?」

 俺は部屋の隅に立てかけてあった剣を手に取る。
「メタ梨花リカ、お前の出番だ」

 そういうと剣は溶けるように床に落ち、しゅるんと人形の姿を取った。
「メタ梨花リカです、よろしく」
 遺跡で拾った謎の魔法生物、メタ梨花リカ。得意技はコピーだ。

「遠征には、キャスリー、レイチェル、そして俺の三人で行くつもりだ。そして武器として、メタ梨花を隠し持っていく」

「なるほど、それなら隠密行動もとりやすいし、いざとなったら身代わりにもなる。適任だね」
「ああ、そういうことだ。……ところでレイチェルはどこだ?」

「ああ、裏庭で修行してましたけど」
 珍しいな、どういう風の吹き回しだ?


 裏庭に行くと、確かにレイチェルが修行をしていた。
 それも、驚くことに、瞑想をしているのだ。心なしか背も伸びている。まるで以前の姿に戻ったようだ。

「レイチェル、ここで修行をしていると聞いたんだが。一体どうしたんだ、その姿は?」
 レイチェルはゆっくりと目を開けた。長いまつげが妙に艶っぽい。

「あら、イングウェイさん。実は魔力を循環させる修行をしていたところ、このように以前の姿に戻ったんです」
 なるほど、以前の姿は魔力の流れが変に乱れていたせいだったのか。マッシュルームドラゴンの胞子の効果も、そろそろ薄まってきたのだろう。

「酔っぱらっているだけでは、皆さんのお役に立てませんからね」
 優しそうに、そしてすこし恥ずかしそうに微笑むレイチェル。

 俺はレイチェルに今回の遠征の話をすると、彼女は真剣な顔で聞いてくれた。
「わかりました。どこまでお役に立てるかわかりませんけど、がんばります。それに、キャスリーさんが困っているときに、一人だけ飲んだくれているわけにはいきませんもの」
「ああ、キャスリーのためにも頑張ろう」

 さて、こちらの話はまとまった。
 アリサ嬢に報告すると、すぐに第一次遠征の準備を済ませてくれた。ギルド長にも話が行っているようで、すんなりと決まってしまった。
 ギルド長も元は冒険者だ。ギルドを守りたい気持ちや軍への反発など、内心いろいろあるのだろう。

 出発は二日後に決まった。特に用意するものがあるわけではないので、酒を飲んで心の準備をする。
 今回の旅は危険も多く、長旅になるかもしれない。油断はできないのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...