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第12章 魔獣討伐

猫も歩けば棒にジャスティス

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 ホームに帰った俺とキャスリーは、驚く報告を受けた。
 なんと、フィッツがまたもや街中で例の男に出会い、ケンカをふっかけて返り討ちにあったらしい。

「ご、ごめんにゃー、インギー……」
 どうやらしばらく動けそうにない。これでは遠征に連れていくことなどとても無理だろう。
 まったく、だからまずは技を鍛えろと言ったのに。

 男のことは気になるが、探している暇もない。


「で、誰を連れていきますの? わたくしは絶対についていきますわよ!」
 胸を逸らして主張するキャスリー。まあ、キャスリーを連れていくのは決まりだろう。
 心情的なものもあるし、遠征先の土地の知識があるのは、この中で彼女だけだ。

「わかっている。そして、サクラは残ってもらおう。フィッツが欠けた今、サクラまでここを離れるのはさすがにまずいだろう」
「はい、わかりました。こっちのことはどーんと! 任せてくださいねー」
「サクラー、よろしくにゃん」
 やれやれ。こっちの心配を知ってか知らずか、笑顔で留守番を引き受けるサクラ。

 でもさ、とマリアが口をはさんでくる。
「ボクは当然、工房アトリエから離れられないから留守番として、残るはレイチェルしかいないよ?」

「いや、もう一人いるだろう?」
「へ?」

 俺は部屋の隅に立てかけてあった剣を手に取る。
「メタ梨花リカ、お前の出番だ」

 そういうと剣は溶けるように床に落ち、しゅるんと人形の姿を取った。
「メタ梨花リカです、よろしく」
 遺跡で拾った謎の魔法生物、メタ梨花リカ。得意技はコピーだ。

「遠征には、キャスリー、レイチェル、そして俺の三人で行くつもりだ。そして武器として、メタ梨花を隠し持っていく」

「なるほど、それなら隠密行動もとりやすいし、いざとなったら身代わりにもなる。適任だね」
「ああ、そういうことだ。……ところでレイチェルはどこだ?」

「ああ、裏庭で修行してましたけど」
 珍しいな、どういう風の吹き回しだ?


 裏庭に行くと、確かにレイチェルが修行をしていた。
 それも、驚くことに、瞑想をしているのだ。心なしか背も伸びている。まるで以前の姿に戻ったようだ。

「レイチェル、ここで修行をしていると聞いたんだが。一体どうしたんだ、その姿は?」
 レイチェルはゆっくりと目を開けた。長いまつげが妙に艶っぽい。

「あら、イングウェイさん。実は魔力を循環させる修行をしていたところ、このように以前の姿に戻ったんです」
 なるほど、以前の姿は魔力の流れが変に乱れていたせいだったのか。マッシュルームドラゴンの胞子の効果も、そろそろ薄まってきたのだろう。

「酔っぱらっているだけでは、皆さんのお役に立てませんからね」
 優しそうに、そしてすこし恥ずかしそうに微笑むレイチェル。

 俺はレイチェルに今回の遠征の話をすると、彼女は真剣な顔で聞いてくれた。
「わかりました。どこまでお役に立てるかわかりませんけど、がんばります。それに、キャスリーさんが困っているときに、一人だけ飲んだくれているわけにはいきませんもの」
「ああ、キャスリーのためにも頑張ろう」

 さて、こちらの話はまとまった。
 アリサ嬢に報告すると、すぐに第一次遠征の準備を済ませてくれた。ギルド長にも話が行っているようで、すんなりと決まってしまった。
 ギルド長も元は冒険者だ。ギルドを守りたい気持ちや軍への反発など、内心いろいろあるのだろう。

 出発は二日後に決まった。特に用意するものがあるわけではないので、酒を飲んで心の準備をする。
 今回の旅は危険も多く、長旅になるかもしれない。油断はできないのだ。
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