賢者、二度目の転生――女性しか魔術を使えない世界だと? ふん、隠しておけば問題なかろう。(作中に飲酒シーンが含まれます、ご注意ください)

鳴海 酒

文字の大きさ
127 / 200
第13章 闇のとばり

The Gods that Failed

しおりを挟む

「お前は誰だ?」
 イングウェイはつぶやいた。
「なぜ俺の名前を知っている?」
 今度の声は、少し大きい。
 目を閉じたまま、つぶやいている彼は、迫っている敵は、いないものとして扱う。

 魔力による干渉が、私に向かってくる。
 いつからかはわからず、無意識かもしれない。確かなことは、イングウェイはいつの間にか”私”を認識していたということ。
 それでも、私からイングウェイを認識することは許されない。規則を破壊するのは、適切ではない。


「答えろ。そこで喋っているお前に聞いているのだ。今、『規則を破壊するのは適切でない』と言ったな。規則とはなんだ? どこにいて、どうやって俺のことを認識している?」

 イングウェイが私の逃げ場をふさいでいく。私はとうとう観念して、問いに答える決心を固める。

「持って回った話し方は止めろ。ここはどこだ?」
 ここは、お前の世界の外側に位置している。
「世界の、外側だと?」
 そうだ、いつから私の存在に気付いていた?
「わからない。ヒントはあったのかもしれない。少しずつおかしな感覚が積もっていき、気付くことができた」
 何が目的だ。
「それこそ、わからない。俺たちを操る意志のようなものに気付き、俺はお前に声をかけた。どうこうしようというわけではなかったさ」
 この部分の存在に気付くのは危険だと、思わなかったのか?
「さあな、正直そこまで考えてなどいなかった。危険とはどういうことだ? モンスターでも襲ってくるのか?」

 普通ならここでため息の一つでも吐き、独白に入るところなのだろうが、彼が見ている前でそれを行う不適切さを十分に理解しているため、しなかった。
 物語というものを彼がどう捉えているのかを聞いてみたいが、無駄だろう。彼は気付きはしたが、その存在の檻が破られたわけではない。
 人形は人形であり、自分でページをめくることなどできはしない。語り部と共に歩むのが、せいぜいだ。

「なるほど、それがお前の精いっぱいのメッセージか」
 その言葉に地の文を付け加えることは、果たして彼の味方をする行為と同等なのかはわからない。
 転生前にデカルトの言葉を聞いたことがあるのなら、何かのヒントにはなったはずだ。

 一つだけ言えることがある。
 この場所を覗くことができたのなら、きっともう一つの扉も開けることができるだろう。

「待て、お前にはまだ聞きたいことがある」

 私にはない。

 時間切れだ。ここは空間ではあるが、概念でしかない。
 行動が行える場所ではない。行動は、あくまでもページの中にある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...