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第14章 サクラ、がんばる!
DEEP DARK BLUE
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ドラゴンが私の上へと落ちてくる。
獣らしくなりふり構わない、巨体による不格好な体当たりだ。牙を突き立てる意志はあるのか、こちらを向いて必死の威嚇を繰り返す。
私は体中にありったけのマナを巡らせると、愛刀モモフクを構えた。
真正面から、ドラゴンを受け止める。
「ぐっ、――はあああっ!」
気合とともに、モモフクを強引に振りぬいた。
ドラゴンはうめき声も立てず、そのままぐったりと横たわる。上下する腹の肉が、かろうじて息があることを示していた。
「はあ、はあ、…くそったれですね、まったく。さすがに疲れました……」
深呼吸して息を整える。
まったく、暑い。川でもあればいいのに。
そのとき、ぶろろろーという聞きなれない音がした。
風邪を引いた馬のいななきかと思ったが、近づいてくるのは妙な車のみ。馬に引かれていないということは、何か特殊な魔道具なのだろう。
道が途切れているところで車は止まり、中から一人の男が降りてきた。こちらへと無造作に歩いてくる。
おそらくはここらの住人なのだろうが、敵の可能性もある。魔力は感じなかったが、最低限の警戒はしておく。
「あー、お前は、誰だ? 言葉はわかるか?」
ぼさぼさの金髪をかきあげると、それに似合わぬ鮮やかな青の瞳が見えた。
汚れたシャツから伸びる太い腕。粗野な話し方。田舎者だと感じた。
私は少しだけ警戒度を下げる。どうやら、本当にただの住人のようだ。
「……ええ、あなたは誰ですか?」
「イングウェイだ。イングウェイ・リヒテンシュタイン。お前は?」
「……チュルージョと言います。この竜を追ってやってきたのですが、帰り道が分からなくなって。ここはどこです?」
そうだ、それこそが重要なのだ。
とりあえず休めるところは。町はどこにある? なんでもいいから、情報が欲しかった。
ところが、丁寧に交渉しようとした私に向かって、この男は横面をはたくように言った。
「何様のつもりだ? 同じ名前のくせに、あいつとは大違いだな」
男は顔をしかめる。
切り捨ててやろうかという衝動を抑えるのに苦労しつつ、聞き返す。
「あいつ? 誰ですか、それは」
「あいつ? そうだ、俺は誰の事をいっている――」
男は私の質問には答えず、頭を押さえたままぶつぶつとつぶやき始めた。瞳の青がたちまち深く暗く沈んでゆく。
困惑する。なんだこいつは、電脳の妄想にでも囚われているのだろうか。
それとも、転生者の一人だというのだろうか。
「もしかして、私の名に心当たりが?」
男は焦点の定まらぬ瞳で宙を見つめながら、ふらふらと頭を振る。
「そうだ、俺は5人の仲間と冒険をしていた。サクラ、マリア、レイチェル――」
――!!
男の口にした数人の名前。その中には、私の、サクラの名前が含まれていた。
獣らしくなりふり構わない、巨体による不格好な体当たりだ。牙を突き立てる意志はあるのか、こちらを向いて必死の威嚇を繰り返す。
私は体中にありったけのマナを巡らせると、愛刀モモフクを構えた。
真正面から、ドラゴンを受け止める。
「ぐっ、――はあああっ!」
気合とともに、モモフクを強引に振りぬいた。
ドラゴンはうめき声も立てず、そのままぐったりと横たわる。上下する腹の肉が、かろうじて息があることを示していた。
「はあ、はあ、…くそったれですね、まったく。さすがに疲れました……」
深呼吸して息を整える。
まったく、暑い。川でもあればいいのに。
そのとき、ぶろろろーという聞きなれない音がした。
風邪を引いた馬のいななきかと思ったが、近づいてくるのは妙な車のみ。馬に引かれていないということは、何か特殊な魔道具なのだろう。
道が途切れているところで車は止まり、中から一人の男が降りてきた。こちらへと無造作に歩いてくる。
おそらくはここらの住人なのだろうが、敵の可能性もある。魔力は感じなかったが、最低限の警戒はしておく。
「あー、お前は、誰だ? 言葉はわかるか?」
ぼさぼさの金髪をかきあげると、それに似合わぬ鮮やかな青の瞳が見えた。
汚れたシャツから伸びる太い腕。粗野な話し方。田舎者だと感じた。
私は少しだけ警戒度を下げる。どうやら、本当にただの住人のようだ。
「……ええ、あなたは誰ですか?」
「イングウェイだ。イングウェイ・リヒテンシュタイン。お前は?」
「……チュルージョと言います。この竜を追ってやってきたのですが、帰り道が分からなくなって。ここはどこです?」
そうだ、それこそが重要なのだ。
とりあえず休めるところは。町はどこにある? なんでもいいから、情報が欲しかった。
ところが、丁寧に交渉しようとした私に向かって、この男は横面をはたくように言った。
「何様のつもりだ? 同じ名前のくせに、あいつとは大違いだな」
男は顔をしかめる。
切り捨ててやろうかという衝動を抑えるのに苦労しつつ、聞き返す。
「あいつ? 誰ですか、それは」
「あいつ? そうだ、俺は誰の事をいっている――」
男は私の質問には答えず、頭を押さえたままぶつぶつとつぶやき始めた。瞳の青がたちまち深く暗く沈んでゆく。
困惑する。なんだこいつは、電脳の妄想にでも囚われているのだろうか。
それとも、転生者の一人だというのだろうか。
「もしかして、私の名に心当たりが?」
男は焦点の定まらぬ瞳で宙を見つめながら、ふらふらと頭を振る。
「そうだ、俺は5人の仲間と冒険をしていた。サクラ、マリア、レイチェル――」
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