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第14章 サクラ、がんばる!
It's better to grope than to research
しおりを挟む「サクラ、マリア、レイチェル――」
男の言葉に、私は耳を疑った。が、問いただす暇はなかった。
男がすぐにうめきながら倒れこんだからだ。
思わずかけより、抱きとめるようにその体を支える。酒臭い息の不快さを脳みその奥に蹴り飛ばす。
心配する私に、男はとんでもないことをしでかした。
布の上から感じる、乱暴だがたくましい手の感触。
骨どころか筋肉すらない私のそれは、無抵抗のままに、彼の手の中で形を変える。
布越しなのがまずかった。ごつごつした指を上書きされ、全体を優しく包まれる感触がやってくる。余計な部分までがこすれてしまい、思わず体の芯が熱くなる。
彼の手はよろける体の動きのままに、上から下までなぞるように円を描く。痛みを感じるギリギリまで強くすぼまったかと思えば、その後ゆっくりと弱められる。
「ひゃあっ、ああんっ」
漏れる吐息をなんとかごまかすと、私は男を軽く突き飛ばし――本当に軽くだよ。だって、わざとじゃないってわかっていたから。
そして、胸元を急いで両手で抑えると、息を整えようと頑張る。
はあ、はあ。
「……ラ。君は、サクラ・チュルージョかい?」
へ? その名前って……。
彼は、今度こそはっきりと私の名前を言った。サクラ・チュルージョと。
「そうですよ。確かに私は美人の女サムライ、サクラ・チュルージョです。あなた、どうしてその名前を知っているんですか?」
私は彼の目をじっと見つめながら聞いた。スカイブルーの瞳がぐりぐりとこちらをにらみ返してきて、少しだけたじろいだ。
彼は言った。
「ダイヴしたときに、パーティーを組んでいた」
私は聞き返す。
「ダイヴ? ですか。……聞いたことあるような、ないような。それはどんな魔法なんです?」
彼は説明に困っているようで、眉間にしわを寄せ、怖い顔で首を振った。
少しばかり黙りこくった後、今度は彼から聞いてきた。
「こちらからも聞きたいことがある。このドラゴンはなんなんだ? それと、お前が使っていた魔法も」
なんだと言われても困ってしまう。
「ドラゴンはドラゴンでしょう。確かに昔と比べてずいぶん減っちゃったって聞きますけど、カルポス山脈にはまだ生息しています。ちょっと前に、村だって襲われたんですよ。見たことないんですか?」
「ああ、ないね。……少なくとも現実では」
「魔法も?」
「それは見たことがある。≪電撃≫だろう? 俺もよく使っていた」
「やっぱり、知っているんじゃないですか」
なんだろう、この人は。
もしかして王宮とかでずっと何かの研究を続けていたのかもしれない。本で色々読んだことはあるけど、実際には見たことがないとか?
私が不思議そうな顔をしていると、彼はイラつきが限界に来たのか、急に激しい口調で怒鳴るようにまくしたてた。
「だから! それはダイヴ内での話だろ? 俺は現実の話をしているんだ! このクソでかい化け物はどこから来た? お前のライトニングは魔法か? それとも、どんな武器を使った? 俺はまだダイヴ中なのか、夢でも見てんのか? こんなクソみたいな虚構の夢を!」
うう、そんなに怒らないでくださいよ。私だって状況がよくわかんないんですからー。
もう泣き出してしまいそうだ。
「クソが」
彼は吐き捨てるように言うと、また変な車に乗ってどこかへ行ってしまった。
いいな、あの馬車。便利そうだなー。
それにしても、彼は誰なんだろう。 イングウェイさんと名乗っていたけれど、あの人とはあまり似ていない――。
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