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第15章 再びアサルセニア
酒
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~イングウェイとレイチェル~
「イングウェイさーん、手を離しちゃだめですよー」
「わかってる、レイチェルこそ、もう少しこっちに寄れ。はぐれたらわからなくなる」
ふよん、と柔らかい感触が腕に当たる。レイチェルだ。俺は安心して進む。
川辺で紫の靄を見つけた俺とレイチェルは、怪しみつつもその中に突っ込んだ。命の保障なんてない。そんなところに自分一人ならともかく、レイチェルを連れて飛び込むなんて、どうかしている。
その靄の中は魔力の流れがめちゃくちゃで、気分が悪くなる。脳ミソを食われるというのも、なかなかに的を得た表現だ.
だが、懐かしい感じもした。
俺は、これを知っている。
次の瞬間、俺は石造りの暗い部屋にいた。
紫の靄は気づけばどこかに消え失せており、その場にいたのは、俺とレイチェル。 そして――、
「イングウェイさんっ、何でここに!?」
ピンクの髪、明るい声、名刀モモフク。間違いようもない、彼女は、
「サクラさんっ!?」
「サクラか? お前こそなぜここに、ホームで待機していたはずでは?」
サクラはバツが悪そうに、頭をぽりぽりかきながら答えた。
「えへへー、ええとーですねー、一緒に行きたくて我慢できなくて、追いかけてきちゃいました。その途中で、成り行きでドラゴン退治をすることになって、なぜかここに迷い込んじゃいました。あはは。なんででしょーねえ?」
追いかけて、か。それはまあいい。それよりも、ドラゴンだって?
「大丈夫か、ケガはないな? ドラゴンはどうした」
「あ、体は大丈夫です。むしろぜっこーちょーですから。 ええと、最初は逃げ回ってたんですが、女の子がさらわれて、謎のお姉さんに助けてもらって、何とか一匹倒したんですけど、その辺の細かいところを、実はあんまりよく覚えてなくて――」
「よかった。お前が無事で」
さて、再会を喜ぶのもほどほどにして、現状把握がまだ済んでいない。
ここはどこだ。
薄暗い石造りの部屋で、魔術器具とともに、わけのわからない機械がいくつも置いてあった。
次の瞬間、天井にあったライトがついた。
「あら、珍しいわね。ここに3人もお客さんが来るなんて、午後から隕石でも降るのかしら?」
誰だお前は。
扉の前に立っていたのは、妙齢の女性。ゆったりとした黒いローブに、腰まである漆黒の髪。そして何よりも――
「かなり強いな」
ゆったりしたローブの上からでもわかる、熟れすぎたかぼちゃのようにたわわでこぼれ落ちそうな魔力は、彼女が相当の力をもつ魔術師であることを示していた。
「とりあえず敵じゃあないわよ。立ち話もなんだし、座ったら?」
ん、どうした? レイチェルがぶんぶんと俺の腕を引っ張ってくる。
「イングウェイさん、ワインですよ、ワイン!」
「ああ、しばらく何も飲んでなかったからな。おい女、少しワインを分けてくれないか」
「そうですよ! 話すにはまじゅ、口を湿らせないと。じゅるり」
女は露骨に嫌な顔をしたあと、しぶしぶグラスにワインをついだ。……ちょっとだけ。
「お前が何者かは知らんが、ケチなのはわかった」
「イングウェイさん、失礼ですよ! あ、ありがとうございます。私はあんまり飲めないから、一口でいいですよー」
「じゃあその分、私に入れてくださーい!」
「おいレイチェル、少し遠慮を覚えろ」
「あんたらは後ででも、好きにのめるでしょうが! 貴重な人の酒を、まったく。ぶつぶつ」
文句を言いつつも注いでくれるので、悪い奴ではなさそうだが。
「ではいただくか。 ――っ、うえっ」
「どしたんですかー、って、しっぶーい」
「失礼な人たちね、本当に」
「イングウェイさーん、手を離しちゃだめですよー」
「わかってる、レイチェルこそ、もう少しこっちに寄れ。はぐれたらわからなくなる」
ふよん、と柔らかい感触が腕に当たる。レイチェルだ。俺は安心して進む。
川辺で紫の靄を見つけた俺とレイチェルは、怪しみつつもその中に突っ込んだ。命の保障なんてない。そんなところに自分一人ならともかく、レイチェルを連れて飛び込むなんて、どうかしている。
その靄の中は魔力の流れがめちゃくちゃで、気分が悪くなる。脳ミソを食われるというのも、なかなかに的を得た表現だ.
だが、懐かしい感じもした。
俺は、これを知っている。
次の瞬間、俺は石造りの暗い部屋にいた。
紫の靄は気づけばどこかに消え失せており、その場にいたのは、俺とレイチェル。 そして――、
「イングウェイさんっ、何でここに!?」
ピンクの髪、明るい声、名刀モモフク。間違いようもない、彼女は、
「サクラさんっ!?」
「サクラか? お前こそなぜここに、ホームで待機していたはずでは?」
サクラはバツが悪そうに、頭をぽりぽりかきながら答えた。
「えへへー、ええとーですねー、一緒に行きたくて我慢できなくて、追いかけてきちゃいました。その途中で、成り行きでドラゴン退治をすることになって、なぜかここに迷い込んじゃいました。あはは。なんででしょーねえ?」
追いかけて、か。それはまあいい。それよりも、ドラゴンだって?
「大丈夫か、ケガはないな? ドラゴンはどうした」
「あ、体は大丈夫です。むしろぜっこーちょーですから。 ええと、最初は逃げ回ってたんですが、女の子がさらわれて、謎のお姉さんに助けてもらって、何とか一匹倒したんですけど、その辺の細かいところを、実はあんまりよく覚えてなくて――」
「よかった。お前が無事で」
さて、再会を喜ぶのもほどほどにして、現状把握がまだ済んでいない。
ここはどこだ。
薄暗い石造りの部屋で、魔術器具とともに、わけのわからない機械がいくつも置いてあった。
次の瞬間、天井にあったライトがついた。
「あら、珍しいわね。ここに3人もお客さんが来るなんて、午後から隕石でも降るのかしら?」
誰だお前は。
扉の前に立っていたのは、妙齢の女性。ゆったりとした黒いローブに、腰まである漆黒の髪。そして何よりも――
「かなり強いな」
ゆったりしたローブの上からでもわかる、熟れすぎたかぼちゃのようにたわわでこぼれ落ちそうな魔力は、彼女が相当の力をもつ魔術師であることを示していた。
「とりあえず敵じゃあないわよ。立ち話もなんだし、座ったら?」
ん、どうした? レイチェルがぶんぶんと俺の腕を引っ張ってくる。
「イングウェイさん、ワインですよ、ワイン!」
「ああ、しばらく何も飲んでなかったからな。おい女、少しワインを分けてくれないか」
「そうですよ! 話すにはまじゅ、口を湿らせないと。じゅるり」
女は露骨に嫌な顔をしたあと、しぶしぶグラスにワインをついだ。……ちょっとだけ。
「お前が何者かは知らんが、ケチなのはわかった」
「イングウェイさん、失礼ですよ! あ、ありがとうございます。私はあんまり飲めないから、一口でいいですよー」
「じゃあその分、私に入れてくださーい!」
「おいレイチェル、少し遠慮を覚えろ」
「あんたらは後ででも、好きにのめるでしょうが! 貴重な人の酒を、まったく。ぶつぶつ」
文句を言いつつも注いでくれるので、悪い奴ではなさそうだが。
「ではいただくか。 ――っ、うえっ」
「どしたんですかー、って、しっぶーい」
「失礼な人たちね、本当に」
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