血濡れは絶景を求める、

出無川 でむこ

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第一章

3ページ目 この世界での現在の歴史

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「さぁ、授業を始めるわよ」

そう言うと、生徒達は鞄からノートを取り出す。
先生は手持ちの本を取り出し、前回の授業の続きの内容を話す。

「さて、前回の復習でもしようか、前回は"3大英雄"の授業したな?では魔王を討伐したときの3大英雄の人物の名前と職業を全部言える生徒はいるかな?」

すると、隣席のエルが勢いよく手を上げた。
エルの元気の良さは、明らかに戦士系なんだが、こう見えて勉強は物凄くできるタイプだ。
話を聞けば、その日に受けた授業は、必ず家で復習すると言っていた。
流石は、優等生だ。

「はいはいはい!!」
「返事は一回で十分だ」
「ハイッ!!」

ミレイ先生は、呆れた様子でエルを指名する。
エルは机に立ち上がって、3大英雄の答えを言う。

「ハイッ!勇者のレイル様、賢者のライラ様、大神官のレイ様ですよね!」
「あぁ、名前は正解だが、職業は間違っているな」
「え!うそ!?」

エルが答えを、珍しく間違えていた。
今回の問題は、引っ掛け問題だったらしい。

「正式にはその職業は魔王討伐後の話だ。魔王討伐前は、勇者のレイル、魔法使いのライラ、神官のレイだ。賢者と大神官になったのは、その後だ。魔王に、破壊された町や村を復興しているうちに、彼らは更に称えらるようになった。ライラ様は、より国を豊かにする為に魔法の勉強して、いつしか賢者になった。レイ様は勇者と共に傷ついた者を多くでも癒す為に、世界を回って大神官になったのだ」

生徒達が、真剣に話を聞いている中、隣のスピカはつまらなさそうにしていた。
そんなスピカは小声で言う。

「3大英雄ねえ・・・」
「どうしたの?スピカさん?」

シャルはぼそりと呟くスピカに気になり話しかけた。
すると、スピカは眠そうな顔でこっちへ顔を向ける。

「なぁに、本当に3大英雄かねえ・・・っと思ってね」
「え?どういうこと?」

スピカの唐突な発言で疑問を抱く、まるで魔王を討伐したのは英雄は3人だけじゃない発言だった。
史実、本にも書かれていた事なのに何故そう思っているのか。
現にその証拠も2000年前の石板とその奥に勇者の活躍なども記載されている。
スピカは畳みかけるようにシャルに質問する。

「ねぇ、シャル?今の歴史は捻じ曲げられたものだとしたらどうする?」

スピカの黄色の眼がシャルを捉えるように見つめる。
しばらく、二人の間に沈黙が続いた。

「(歴史を捻じ曲げられた?どういうだろう?)」

スピカの質問に対して混乱する事しか出来なかった。
シャルは、そのまま思った事を。話す事にした。

「ど、どうする事もできないんじゃないかな・・・?」
「何故、そう思う?」
「それは既に決まったことだし・・・それに・・・」
「それに?」

スピカは、思っていた以上にグイグイと攻めてくるタイプだった。
その行動で、思わず息を詰まらせる。
しかし、スピカはその答えを待ってるかのように、シャルの瞳をずっと見つめる。
待たせてはいけないと、思い話す。

「それに・・・ねじ曲がったことに気づかないんじゃないかな?2000年前のことだし、僕たちはその時代に生まれているわけでもないから、今の歴史を信じる事しかできない。つまり、ずっとねじ曲がった状態かと・・・それこそ、歴史的新発見、新しい証拠がない限りは、どうにもならないと思う・・・」

その答えを聞いた、スピカは手に顎をあて何かを考える仕草をする。
すると、シャルを呼ぶ声が聞こえる。
振り向くと、目の前に何かが飛んできて、ギリギリの所で避ける。
本当に振り向くまで、分からない筈なのに、避けてしまった。
それは、恵まれた反応速度のなのか、凄まじい反射神経なのかは、分からない。
しかし、それに気づいたのは、スピカだけだった。

「ほぉ・・・」
「シャル!授業中によそ見とは良い度胸だな!!」
「せ、先生!?これには訳がありまして・・・」

シャルはスピカの方を見ると、既に背中を真っすぐして、ちゃんと先生の話を聞いていますよとアピールをしていた。
そして、察した

「(裏切りやがったぁあああああ!?)」

そんなスピカは、目だけ動かして、シャルの方をちらりと見る。
その口角が、少し上がっているのを、見逃さなかった。

「(よし、後で仕返ししてやる、覚えておけよ・・・)」

しばらく、シャルはミレイ先生の説教を受ける事になったのは言うまでもなかった。
授業が終わって小休憩を挟んだ。
転校生の噂に聞きつけたのか、他のクラスの人もスピカを一目見ようとドア越しで人が群がっていた。
これじゃ、トイレにも行くのも一苦労しそうだ。

「ねえ!スピカさんは何処から来たの!?」
「綺麗な髪だねー!」
「今は何処に住んでるのー!」

当然の如く、スピカの周りには人でいっぱいだった。
隣にいるシャルにとってはうるさく感じていた。
すると、エルがうつ伏せになっている、シャルの背中をつつく

「なんだ?」
「スピカちゃん人気だねぇー」
「そう・・・だね」

エルは、楽しそうに喋る。だが、シャルは知っている。実はスピカは腹黒なのを、何せさっきまで堂々と裏切りったのだから。
また被害者になるのは嫌だったので、できるだけ関わらないでおこうと決めていたのだった。

「どうしたの?シャル、元気ないね?」

そんなシャルの浮かない表情に気づいたエルは心配をする
しかし、エルには関係ない事だったので気を使わせない程度に話す。

「あぁ、大丈夫だよ?心配させたなら、ごめん」
「ううん、シャルが大丈夫って言うなら良いよ!」

そんな天使ようなエルの笑顔に、癒されるシャルであった。先ほどの、スピカのい悪魔的な笑みを浮かべたと違って、エルの笑顔は元気になれる。
それは、つかぬ間のことだった。
ドスドスと歩いてくる足音が聞こえる。うつ伏せになっているから、なお更にはっきり聞こえていた。
顔を上げると、スピカの机の前にピグレが立っていた。
その迫力に、圧倒されたのか、周りの生徒達が後退していく。
そして、お互いに睨みあう。
何だか、不穏な空気が流れていた。

先に口を開いたのは・・・スピカだった。

「何かしら?」

そう言うと、ピグレは背中を真っすぐにさせる。
何だか、様子がおかしいし、モジモジしていた。
傍からみたら、いつもの傲慢なピグレらしくなく、何だか気持ち悪い。というか、もじもじしないでほしい。
すると、ピグレがスピカに向って言う

「も、もしも良かったら!いいい一緒にお昼たべませんか!!」

それは、お昼のお誘いだった。
シャルは、すぐに察した。顔は赤く、身体をくねらせる。
ピグレはスピカに惚れたんだという事に。
正直、おすすめはしなかった。何せ、人を陥れることを平気でする腹黒女だという事は、俺しか気づいていなかったのだから。

「ふむ・・・」

そう言って、スピカは考え込んだ。
すると、スピカはシャルの方に一瞬だけ目がいく。運が悪く。シャルはスピカと目が合ってしまったのだった。
スピカはニヤリと笑う。それを見たシャルは、とてつもなく嫌な予感がした。
その直後のことだった、スピカは立ち上がりシャルに近づいて、そのまま・・・。

腕に組み付いた。

「「な!?」」

思わずの事で、シャルとピグレは同時に驚いた声を出す。

「ごめんなさい・・・実はシャル君と食べる約束をしていまして・・・」
「いや!僕は・・・モゴッ!!」

スピカはシャルが断るろうとすると、手で口を塞いだ。
そのまま、耳元に囁くように言う。

「良いかいシャルくん?今断れば、後で貴方を燃やすわよ?」
「ムッー!!(そんなの横暴だー!)」

すると、何やら太ももに何か尖った者が当たる。
目線を下に向けると、うまい具合に隠したナイフが見える。
その事に気づいた、シャルは背中を真っすぐになる。

「付き合ってくれるわよね?」

スピカの笑顔は怖かった。傍から見たら天使な笑顔にしか見えないが、シャルにはその笑顔ですら恐怖の対象でしかなかった。
シャルは、生命の危機を僅か10歳で覚えてしまったのだった。
断ることもできず、シャルは首を大きく振る。

「シャルくんは優しいなあ、という事で、ピグレ君だっけ?ごめんね!そういう事なの!」

ピグレは断られ、膝から崩れ落ちた。
そして、次第にピグレはシャルを睨みつけた。

「お、覚えておけよー・・・シャルゥウ・・・!!」

そんなピグレは捨て台詞を言って、自分の席に戻った。
スピカのせいで、シャルは平穏が脆くも崩れ去ってしまった
そして、本人はと言うと外を眺めていた。

「アハハ・・・、大変事になったねぇ・・・」

流石にエルもこの状況はどうフォローすれば良いのか分からなかった。
しかし、エルは知らなかった、その気遣いは返ってシャルの心を抉ってしまうという事を

「俺の平穏を返してくれ・・・」

シャルの苦労がまた一つ増えてしまったのだった。
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