初級技能者の執行者~クラスメイトの皆はチート職業だが、俺は初期スキルのみで世界を救う!~

出無川 でむこ

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改稿シリーズ・第一章

第11話 VS黒大蛇(下)と少女と謎の男の話

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「SYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

斬り落とされた、7本の頭が復元する。
相変わらず、とてつもない速度で再生する化け物を、黒杉とアイリスは眺める。
しかし、それよりも存在感があったのは、白髪男と眼帯少女。

あの二人を見ていると、何故か背筋が凍る。
単に、血を流し過ぎただけかもしれない。
本当にそうだろうか?それとは別の悪寒を感じる。
まるで、死神に見られているようだ。敵対だけはしてはいけない。
危険信号が鳴る。
幸いにも、鎌を突きつけられてないだけマシだった。

「よし、シルル行くぞ」
「あいあいさ!!」

合図と同時に、男と少女はその場から一瞬でいなくなる。
次の瞬間、二人の身体は宙を舞っていた。

「速い・・・ッ!?」
「目で追うだけで精いっぱい・・・」

黒杉には瞬間移動にしか見えず、アイリスは何とか目で追えるくらいだが、二人は空へ跳んだけだ。
これだけで、自分たちの力に、天と地の差があると分かる。いや・・・分からされた。
黒杉は自分の弱さを悔い、拳を強く握りしめる。

「さあ、次は再起不能にしてやるさ」

男は空中で刀を構える。
左の二本の頭が涎をたらし、興奮したかのように大きく口を開き、噛みつこうとする。
しかし、その頭は、男の目の前、わずか30cmあたりでピタリと止まった。
蛇の頭はゆっくり目を上を向き、やがて白目になる。
男は"何もしていない"ように見えた。
黒杉たちは、静止したオロチを初めて見て、動揺する。

「な、何があったんだ・・・あの化け物が動かない?」
「よ、ヨウイチ・・・あれ見て・・・ズレてる・・・」

二つの蛇の頭が徐々にズレていく。
そのズレは次第に不自然になり、首が落ちた。

──そう、彼は"刀を抜いていた"。
いつの間にか抜いていたのだ。
その抜刀の速さはアイリスの目すら、捉えることが出来なかった。
オロチが、自らの死に気が付かない程に。

落ちたオロチの首を見ると、その血が、赤い煙・・・いや、赤い"霧"となっていた。
首の断面から噴き出るはずの血が、霧となって分散していた。
その状態のオロチは再生せずに、ただただ蒸発していた。

「うっそーん・・・」

超再生によって、苦戦したオロチがいとも簡単に倒される。
まさに"規格外"その物だった。

オロチの身体の反対側から、ドサァと大きな音が聞こえた。
その音に釣られてみると、少女が荒々しく攻撃してるように見えるが、繊細にオロチを解体していた。

「うりゃりゃりゃりゃ!!!」

先刻まで、大剣の形をしていた武器が、チェインソーのように変形していた。
チェインソーの刃はマグマのように赫く、その周りは揺らめき、灼熱を帯びているのが分かる。
そして、凶悪そうに高速回転している。

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
瀕死のオロチは、もがくように尻尾で猛攻を加える。

「うわわわ!?大人しくしてないと駄目ですよー!」
少女は身軽に避ける。

猫のように軽やかだった。
そのまま、一直線に攻撃してくる尻尾を避けて切り落とし、断面を焼き上げ、再生を食い止めた。

しかし、左右から炎のブレスが襲い、少女は炎に巻き込まれる。
その瞬間、炎から天に向かって光の柱が立つ。

そして、炎を片手で吹き飛ばすように出てきたのが、頭には猫のような鉄耳、お尻には細いしっぽ、全身がシルバーカラーが目立つ、バッタのような目は大きく黄色い眼が光り出す。

あれは完全に・・・〇面ライダーだった。

足を肩よりも少し広げて、左腕を斜めに突き出し、右腕は脇を閉めるように横に腕を曲げて左に胸に拳を持っていき、少女は決めポーズをする。

「変身!!キャットうーにゃん!!呼んだな、銀貨2枚だ!!」

ダサい名前と意味不明な台詞はともかく、決めポーズがカッコいい思ってしまう。
黒杉は何故か、敗北感を感じてしまった。
というか何処か見たことあるポーズだなと思いながら、突っ込まないようにした。

そのまま、腰から一本の筒を取り出し、ボタンを押す。
筒の先端から、淡いピンクの光線が細長く伸びる。
それは、この世界に似つかわしくない、"レーザーソード"だった。

「さあ!貴様の悪行三昧はここで断ち切る!!くらえ!うーにゃんソード!!」

黒杉はツッコミたい気持ちを抑え(吐血しながら)、平静を保つために静かに薬草を飲む。
少女はレーザーソードを構え、襲って来る頭を、残像を残しながら避ける。
そのまま、一本、また一本と頭を斬り落としていく。

「うひゃあ・・・臭いです・・・」

そう言って、光線で断面を焦がし、再生を防いだ。
頭は残り二本。そして、僅か開始10分でオロチは死にかけていた。

「SYAAAAAAAAA!!」
「お、元気なやつは嫌いじゃないぜ、だけどお別れだ」

そう言って再び、抜刀の構えになる。
先ほどよりも、腰を低くし、目を閉じ集中する。

「熾炎流抜刀術・壱ノ型『百々時雨』」

一回の抜刀が、幾百の剣閃を放ちながらオロチを刻む。
音速で断ち切られていく身体の端々から、赤く光る玉がのぞく。
その攻撃に思わず、黒杉は見惚れてしまった。

「シルルやれ!!」
「あい、わかった!!」

少女はチェインソー型の大剣で赤く光る玉を砕き、オロチは動かなくなった。

「うーさん!終わりました!」
「よくやったな」

少女はスーツの状態を解除して、元の姿に戻る。
男に近づき、ハイタッチするかのように構え、それに応えるように男はハイタッチをする。
苦戦したオロチを、一瞬で絶命させたあの二人はいったい何者だろうか、そう考えてると、男は近づいてくる。

「大丈夫か?」

男は手を差し出し、倒れていた黒杉を引っ張りそのまま立ち上がらせる。

「あぁ、大じょ・・・グフゥ!」

無理して、平然を装おうとしたが、失敗した黒杉は吐血する。
それに驚いた、アイリスは薬草を食べさせてくる。

「あ、ありがとう」
「うぇええええええん・・・よかったよぉお」

アイリスは顔をくしゃくしゃにして、抱き着いてくる
身体中に痛みと鼻水がべっとりついて、苦笑いをしたいところだが、色々心配させたことを反省しつつ、頭を撫でる。
そして黒杉は改めて二人にお礼をする。

「ありがとうございます」
「気にするな」

男は静かに笑う。
しかし、それとは正反対に、明るく騒がしい少女は男の周りをぐるぐると回っている。
そして、黒杉は尋ねる。

「ところで貴方たちはいったい・・・?」

謎の男はしばらく目を瞑り、やがて口を開く

「俺は月ノ城 羽咲(つきのぎ うさ)、そして組織「フヴェズルング」のリーダーをやっている」

黒杉たちの命を救った、その男の名前は月ノ城 羽咲と名乗る。

日本人?もしかしこの人も転移者なのか?でも明らかにそんな感じの見た目じゃなかった。
この男はいったい何者なのか、謎の組織フヴェズルングとは何の目的で来たのか?
未だに悪寒は止まらず、黒杉は少し警戒する。

その横から少女が割り込むように出てくる。

改めて、容姿を見る。
左目に眼帯して、肌は色白、黒い猫耳帽子をかぶっていてピクピクと動く。
男と同じ、白い髪の毛だが、こっちは綺麗に整えられている。
首には赤いマフラーがどういう原理なのか、ユラユラと風になびくように浮かんでいる。
服装は男と同じ、黒コートだった。

「初めまして!私はシルクと言います!」

シルクは無邪気な笑顔で挨拶をすると、黒杉の手を握り、大きく振った。
そのおかげか、先ほどまでも悪寒はなく、自分が何故、警戒していたのかが可笑しく思えてしまう。
そのまま、シルクは月ノ城に振り向き言った。

「とりあえず生きてて良かったですね!ねっ、うーさん!」
「そうだな」

二人はフヴェズルングという同じ組織で活動しているらしい。
聞いたことのない組織だ。
何故、普通の人が立ち寄らない場所にいるのかが気になった。

「月ノ城さんたちは、何故、こんな谷底にいるんですか?」
「ふむ・・・」

顎に手を当て、考えるそぶりを見せる。
その時、一瞬だけ、月ノ城がアイリスの方を見る。

アイリスは見られたことにびっくりしたのか、黒杉の後ろに隠れてしまう。
何か、気になる事でもあるのだろうか?
そのまま、俺たちを上から下へ観察するように眺める。

「まあ、少なくとも敵ではなさそうだな・・・本来は見られたのなら、斬り捨てるのだが・・・」
「き、斬り捨て・・・!?」
「ハハ、冗談だよ。まあ、記憶は消させるつもりだけどね」

月ノ城は笑う、彼は冗談だと言っているが、恐怖でしかなかった。
そう言って、咳ばらいをして、話しはじめる。

「俺達は膨大な魔力を観測したんだ。その発生源となったこの場所を調べに来てみたら・・・古代魔法並みの魔力を感知したり、シルルに激しい戦闘音が聞こえると言われ、向かってみたらお前たちがいたんだ」

どうやら、アイリスの魔法のお陰で自分たちの場所を感知できたらしい、というか、本当に古代魔法を使えたのか・・・。
次は月ノ城が静かに質問してくる。

「・・・ところで君たちは、なぜこんな場所にいるんだ?この道通りならスノーガーデンに向かうと予想したんだが、それなら嘆きの洞窟をまっすぐ行けば良い筈だ、何があったんだ?」
「実は・・・・・・」

相手が話してくれた以上は、自分たちもきちんと説明する。
別世界から来たと言うこと、その仲間に裏切られたということ、そして、アイリスのことを・・・。
彼らなら信用しても良いと思えた。
助けてくれたということもあるが、月ノ城の真っすぐ見つめる瞳にはどこか安心させてくれた。

「うーさん・・・どうしましょうか?」
「ふむ、なるほどなぁ・・・・・・まさか膨大の魔力はこの子が?」

シルクという少女は心配した顔で月ノ城を見ながら、袖を引っ張る。
月ノ城はぶつぶつ独り言を言いながらしばらく考えた。
そして、しょうがないという顔で黒杉の目の前に立ち話す。

「なら、俺の組織に来るか?」
「へ・・・?」

急な提案でびっくりする。本当についてきても良いものだろうか?
ましては、初対面の相手だ。
黒杉を見て察したのか、月ノ城は近づいて話す。

「黒杉だっけ?あのフィルネル王国から来たんだろ?」
「あぁ、そうだけど」

一瞬だけ、迷うそぶりを見せるが、月ノ城はハッキリ言う。

「なら、お前はもう死人の扱いになっているだろうな」
「そ、そんな!何故なんだ・・・・・・!」
「あの国は・・・そういう国だからだよ」

フィルネル王国の事を話すと、何故か彼の目が鋭くなったが、それは一瞬の事だった。
すぐに先程と同じように真っすぐな瞳に戻る。
どうやら、これ以上、王国の話はしない方が良いようだ。

「じゃあ・・・これから、どうすれば・・・」

正直、信じられなかった。
でも、あの状況から考えてみると、俺が死んだ扱いになっててもおかしくなかった。
なんせ、胸に剣を刺され、そのままアイツに引きずられて奈落の底に落とされたんだ。
死人扱いされても、おかしくない。
下手したら王国に、何をされるか分からない。

自分は最弱の村人、自分は弱い。
きっと、大丈夫だろうと、オロチの戦いで自分の力を過信してしまった。
その結果、アイリスを危険な目に遭わせてしまった。
あのまま王国に戻って、復讐を実行すれば、きっと返り討ちにされ、また殺されるのは目に見えているし、自分がいる事によって、一樹と美空に危険が及ぶ可能性もある。

どうしらいいか、分からないまま、俯きながら考えていると、月ノ城が肩に触れて言う。

「だから、その為のフヴェズルングなんだ。俺達は、いわゆる、この世にいない存在、生きる『亡霊』的な存在だ」
「・・・どういうことだ?」

月ノ城はそこら辺にある瓦礫を椅子にして座る。その状態で手を組み、そこに顎を乗せ、目を細めながら、周りを見渡す。
そのまま、ゆっくりと口を開き、語り始める。

「・・・・・・過去に魔物のによって村が壊滅したから死亡した扱いになっている者、ある時は人の手によって村を壊滅された者、戦死扱いになった者、無実の人が処刑になる筈だった者、そして、友に裏切られた者・・・俺達はそういう集まりだ。」
「・・・」

先程まで、シルクは騒いでいたが、いつの間にか静かに大人しく、月ノ城の話を聞いていた。
猫耳帽子はぺたりとへこむように前に折曲がっていた。

フヴェズルングは、この世の招かざる来客。
存在しない者としての扱いを、受けた者達が集まる『生者たちの霊園』。
そして・・・月ノ城もその一人だった。

「もう一つ聞かせてくれ」
「なんだ?」
「あんた達は、一体に何が目的で、活動しているんだ?」

死亡した扱いをされた人達が集まっている組織なのはわかった。
しかし、肝心の目的が分からない。
何が目的で、何故、そのような組織を立ち上げたのか、何をしている者なのかが分からない。

月ノ城はやっぱり、その質問かと言わんばかりに軽くため息をする。

「俺達は・・・4大魔獣の討伐の阻止と魔獣王を開放するのが目的だ」
「っな・・・!?」

そんな事をすれば、世界を滅びる筈じゃ、それなら国王と言っていることが矛盾していることになる。
魔獣討伐しに向かっている。一樹や美空、佐野、クラスメイトたちはどうなる?
今まで、やってきた事を覆すような、衝撃的な内容だった。

黒杉は一気に冷や汗を掻き、焦りが出てしまい、月ノ城に問い詰めるように聞く。

「まてまて!?そんなことすれば滅びるじゃないのか!?」
「逆だ、放置すれば滅びるし、開放しなければ滅びる」
「ッハ?ッハア・・・?結局どっちもだめじゃんか!?」
「まあ、落ち着け、ちゃんと話す」

そういって、体勢を変えて、次に足を組んだ。
変わらず、涼しい表情で話はじめる。

「さて、黒杉は、国王に、この世界で今起きていること、魔王のことや4大魔獣のことを、なんて説明されたか、覚えているか?」
「たしか・・・魔王が魔物を放って世界で暴れまわっている。魔王は力を使って、魔獣王を使役している・・・とは聞いたけど・・・」

そう言うと、月ノ城は肩を落として、「やっぱりか」と言う。

「逆だよ・・・全部、奴の嘘だ」
「う、嘘?」
「ああ、4大魔獣はこの世界を守る、いわば、守護神みたいなものだ」

次に立ち上がって、そこら辺に落ちていた、折れた剣を拾い、地面に絵を描き始める。

「いいか?元々、4大魔獣ってのは、この世界を均衡を保つために存在している。だがな、この世界を創造した、クソッたれ十二神が、今の世界がつまらないという理由で、世界を壊して、再構築すると言ってやがる。それも、4大魔獣を殺す事で、世界の秩序と理を崩すことで、クズ十二神どもが召喚され、世界を壊すことになる」
「じゃ、じゃあ・・・俺たちがやっていることって・・・!?」

月ノ城は頷き、言う。

「ただの世界を壊す為の、手助けだ・・・」
「そ、そんな・・・」
「ああ、だから、魔王がこの世界の4大魔獣を殺さないように、守っている。だけど、その事がきっかけで、4大魔獣を使役していると、勘違いしてる奴が多い」

話の規模が大きくなる、一方で、黒杉の思考が追い付かずに、パンク寸前になる。
同時に、自分たちは世界を壊すために召喚されていると、思うと、身体が震えあがる。
アイリスは震える手を握り、安心させる。

「アイリス・・・」
「大丈夫・・・知らないのは罪じゃない・・・ヨウイチのこと、責めないよ?」
「ああ、甘い雰囲気を出すのはいいが・・・続き、いいか?」
「あ、ああ・・・すまん」

なんとも、気まずい空気になってしまったが
そう言って、月ノ城は咳ばらいをして、続きを話し始める。

「しかし、守ったら守ったで、厄介なんだ」
「厄介とは?」
「4大魔獣は、魔王に操られているわけでもなく、バカ十二神によって操られている。そのせいで、膨大な魔力と魔素の毒を発して、魔物が活発になり、狂暴化している。その為、4大魔獣を正気取り戻し、開放させる旅をしている」
「なるほど・・・」
「その事情を知っている上で、活動してるのが、俺たち『フヴェズルング』と言う組織だ」

そして、月ノ城は言う。

「そして、最終目的はこの世界の12人の神を殺す」

───神を殺す。

月ノ城はそう言った。
日本なら、罰当たりでしかない、その行為は、この世界ではしなければならない。
しかし、本当にしても良い事なのだろうか?

不確定な情報の中で、黒杉は頭を悩ませる。

「話は以上だ」
「なるほどな・・・」
「信じてくれるか?」
「うーん・・・・」

正直、急展開過ぎて受け入れられないって感じだった。
国王との話が、対象過ぎて、何が何だか分からなくなってしまう。
どちらを信じたらいいのか?

「ヨウイチ・・・」
「ん?どうした?」

アイリスが服を引っ張る。

「ヨウイチ・・・この人達は大丈夫だと思う」

アイリスは信用しても良いと言う。
その顔は、迷いはなく、紅い瞳が黒杉を見つめる。

「どうしてだ?」
「分からない・・・でも、この人たちなら、信じても良いと思う」

黒杉は、しばらく考える。

「(アイリスの直感だろうか?もし、選択を間違った時は・・・)」

再び、アイリスと目が合う。
あの時、守ってくれた。
あの背中と笑顔を思い出し、黒杉にもう一つの気持ちが芽生える。

月ノ城と同じぐらいに、いやそれ以上に強くなりたい、今度はアイリスを守る為に・・・。
フヴェズルングに入れば、強くなれるだろうか?
もし、なれなくても、何かあった時は、どんな手を使ってもでもアイリスと一緒に逃げ出す。
考えがまとまったところで、覚悟を決めて、アイリスのその「大丈夫」という言葉を信じることにした。

「分かった、俺はアイリスを信じるよ」
「・・・!ヨウイチ・・・ありがとう!」
「そうか、来てくれる事でいいのか?」

その言葉を言われて黒杉達は頷いた。
月ノ城は安心したようで、悪かった目つきが、優しくなる。

「わあい!うーさん!新しい仲間ですね!!」
「そうだな」
「じゃあ、今回はお祝いしないとですね!」

シルクは子供の様に、はしゃいだ。
月ノ城ははしゃぐシルルの頭を撫で「ウヒャアアア」と叫びながら、喜ぶ。
それは、何かの癖なんだろうかと思いながら、二人の様子を見ていた。

「(そういや、この子は自分のよりも大きい大剣を振り回してたな・・・)」

シルクは見た目でも、あの戦いを見た後、相当の実力者なのが分かる。
名前やライダースーツとか、ツッコミたい所はあるが・・・。

黒杉の視線に気づいたのか、シルクが近づく。

「な、なんだ?」
「ヨーくん!よろしくね!うーさんは見た目はアレだけど、とても優しい人だから大丈夫だよ!」
「アレとはなんだ、アレとは?」
「ヘヘへ・・・」

シルクは誤魔化すように月ノ城から目を逸らして、そのまま黒杉に近づいた。
そう言って、手を差し出す。

「握手!」
「お、おう、よろしくな」

俺はそう言って、自分も手を握り返し握手をした。

「なっかまー♪なっかまー♪」

すごい、嬉しそうだ。
シルクは月ノ城の周りをスキップしながら不思議な踊りをしていた。
その奇妙な踊りはなんだか可笑しくなり、思わず声をだして、笑いそうになった。

「すまんな、シルルは久しぶりに仲間が増えて嬉しいんだ。」
「お、おう」
「ところで・・・黒杉」
「な、なんだ?」

月ノ城は黒杉をポーチに指をさして言う。
ポーチの中には薬草と水が入っていた。

「その薬草は何処で手に入れたんだ?」
「ああ、これはだな・・・」

月ノ城は興味津々にその薬草を見つめる。
どうやら、この人は、洞察力も優れているようだ。
黒杉は、薬草がある場所まで、案内する。

───【1時間後】

「ほお・・・すごいな」

感心をするように、周りを眺める。
すると、月ノ城は機械を取り出し、何かを計測しているようだ。
黒杉達は、先ほどから月ノ城たちが使っている物が、自分たちの元の世界に近い物ばかりを使っている事が気になってくる。

「それはなんだ?」
「ああ、これか?魔素度を測るものだ」

【魔素度】、魔素の濃度を計る物だと、分かるが、黒杉は魔素と魔力の違いが、いまいち分からなかった。

「思うんだけど、魔素と魔力の違いってなんだ?」
「そういや、別世界から来たんだっけか」
「ここの世界に来て、結構知らないことが多くてな、教えてくれないか?」

そう言うと、月ノ城は胸ポケットから、メモ用紙らしきものを取り出して、詳しく説明する。

「【魔力】は体内から生成される、人工的なエネルギーのことだ。人によって、魔力量は変わるが・・・まあ、魔改造すれば、増やす方法はある。魔素とは違って、基本的には体内に内包してある。知っての通り、俺たちが使ってる、スキルや魔法は魔力を消費して、外に吐き出すように、発動する。特に一番影響があるのが、身体能力強化系だな、あれは魔力量によって持続力と質が変わる」
「ふむふむ・・・」

一瞬だけ、不穏な単語が、出てきたは気にしないでおこう。
続けて、魔素の説明を始める。

「草や木、水などの、自然で生成された、エネルギーのことを【魔素】だ。生成された、自然エネルギーは湧き続けるから、内包しきれなかった、魔素は表に吐き出す。特に谷底など奥深い所は魔素が使われることはないから、魔素は濃い。・・・だけど、濃すぎると、植物は魔素に耐えきれず、育たない。だから、何故、この場所に薬草が育ったのが不思議なんだ」

説明されながら、しばらく進むと、自分が作った釜土がある。いつもの拠点にたどり着く。。

「すごい、濃度だな・・・しかし、なぜここまでの濃度に草木は耐えられるんだ?」
「うーさん、うーさん!見てください!あそこに水があります!」

シルクは興奮したように、月ノ城の裾を引っ張り、そのまま連れていく。
連れていかれた場所は、湖だった。
月ノ城は、手ですくって、水を飲む。
確認するように味わうと、何か分かったような顔をして、シルクに言う。

「よくやった、シルルありがとうな」

そう言って、シルクの頭を撫で、「ウヒャアアア」って叫びながら喜んだ。

「何かわかったか?」
「あぁ、多分この水辺のおかげで草木は育ったんだろう」
「ほうほう」
「これは霊水だ。非常に濃度の高い水のことだ、この水に浸かるだけで、致命傷でもすぐに治るだろうな。そんな、霊水で育った、この薬草は、霊月草って言う」
「詳しいんですね」
「ああ、昔、色々あってな・・・まあ、それよりも、本来はとても希少な草なんだ。まさかここでお目にかかれるとは・・・しかもこんなにも大量にあるとは、予想外だ」

その霊月草のおかげで、自動回復効果ついたことは黙っておいた。
そして、胸の傷はが治ったのは、この霊水のおかげだと気づく。

「さて、今回は良い収穫だ。さてそろそろ基地にもどるか」
「出口はわかるのか?」
「ああ、こっちだ、ついてこい。」

そう言って、月ノ城に案内され、洞窟に外に向かうことになった。

――――――――後日談

「そういや、月ノ城さん達のステータスってどうな感じなのさ?」
「気になるのか?」
「そりゃ、オロチをミンチにしたんだし気になるに決まってるじゃん。」
「ふむ、そうか・・・いいぞ見て」

見たことない、機械を取り出し、月ノ城はステータスを見せる。

【月ノ城 羽咲】
職業 殺人鬼
LV163
HP200000
MP100000
SP100000

攻撃 111400
防御 85000
魔力 77000
精神 80000
素早さ 80000
器用さ 76000
運  15

スキル
熾炎流抜刀術・壱、弐、参、肆、伍、陸、漆、零式
秘剣「夢幻浄永」
秘儀「刻楼」
熾炎流抜刀術・最終奥義「無十」

パッシブ
・殺人衝動・EX
・修羅
・覇気
・剛神
・武神
・悟りの極致

「な、なんじゃこりゃ!??」
「あぁ、ちょっと色々あってな」
「ちょっとあってなじゃないよ!?職業が殺人鬼ってなにさ!?」
「ハハ、その話はまた今度するよ。ただ今はもうそんなことしてないさ」

規格外とは思っていたが、163レベルってどういうことだよ・・・俺の8倍あるじゃないか・・・。
そして、自分が今まで、悪寒を感じたのは、きっと・・・というか、絶対に『殺人鬼』という職業せいだと思った。
他にも、アイリスもあったが、覇気というのも気になる。
一方シルルのステータスはというと・・・


【シルク・ネーラ】
職業 ヒーロー
LV101
HP140000
MP80000
SP80000

攻撃 80000
防御 80000
魔力 80000
精神 80000
素早さ 80000
器用さ 80000
運  70

スキル
武装変身「キャット・うーにゃん」
大剣使い
必殺パンチ!
必殺キック!

パッシブ
武装神姫
猫魔神
悪は滅ぶべし

この子もやっぱり、ステータスがバグってる・・・・。
そもそもスキルの名前が色々おかしいんだが、武装神姫はまだ分かる。
キャット・うーにゃんってなんだよ!?

他にも色々ツッコミたいが追いつけない黒杉であった。

「なんですか、この子のステータスは!?てかヒーローって何だ?職業なのか?」
「それはユニーク職業だ」
「ユニーク職業?」
「ユニーク職業っていうのは一定の条件を満たすか生まれながらの持つ珍しいですねぇ」

ちゃっかり説明する、シルク。

そういや、アイリスと一緒に転職の加護を、調べた時も、ユニーク職業は、転職できないとか書いてあったな・・・。

「そう!僕の理想の職業です!ウッヒャアアアア!」

そして、シルクは一人で暴走する。

「てか、ヒーローと勇者とは何がちがうんだ・・・」
「何ってるんですか!全然違いますよ!!」

そういって、猫耳帽子とピクピクしながら反応するシルク。

「勇者は使命があるんですが、ヒーローには無いんです!ただしそこに悪があれば飛び込んで成敗するんですよ!フンス!」
「仮〇ライダーみたいだな・・・」
「〇面ライダーとは?」
「そうだなぁ、シルクさん・・・みたいな職業かな?」
「ウヒャアアアアア!私以外にヒーローがいるんですね!」
「おう、いっぱいいるぞ」

嘘は言っていない。
実際、何十年も受け継いでいる、伝統的なヒーローだからな。
色々突っ込みたいことあるけど、聞かないでおこう。

黒杉たちは、夕陽に照らされ、今後のことを考えながら、基地へ向かうのだった。



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戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生先はご近所さん?

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大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

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転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

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ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

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