転移先がかご中の飼われインコ⁉。中味は人間、どうすんの⁉

ぽんたしろお

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第2章

インコ生活が始まった

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 インコになった翌日、目が覚めてもやっぱりインコのままだった。
どうして私は、インコになる事態に陥ったのだろう? 睡眠用の布がかかって暗いかごの中、私はつらつら時間をつぶしていた。

 整理してみよう、と私は思った。
 私はセキセイインコの中に意識が「転移」したようだ。人間だったはずの私のからだが、今どうのような状態なのかは一切不明だ……。
 自分のからだが非常に心配ではある。他人が「転移」して入っている可能性は? はたまた、意識がない状態で死んだと判断されて、もしかしたらもうこの世に体がないという可能性も……私はセキセイのからだで羽をブルブル振るった。考えれば考えるほど、悲惨な状況しか思い浮かばない。
 昨日以前の私のことは一旦保留だ。一晩寝ても私はインコのままだ。まずは、このからだに慣れていくことを考えよう。
 私は体はインコだが、思考は人間のままだ。人間だった時、インコの飼い主だった。ゆえに、インコになってしまったこの意味不明な状況において、インコという生き物の特性を多少人間視点で知っている。
 なんとか、この鱗な脚や、羽がファサファサしている体に思考を順応させて今の状態を少しでもよりよくしていこうと、かなり建設的かつ前向きに決意した。
 飼い主は二十代前半と思われる日本人女性。飼い主の言葉を理解できるというアドバンテージは私にとって非常に大きい。
 飼い主はこちらが日本語を理解しているとは、夢にも思わないだろうがなw。
 時代は私が人間だった時代とほぼ同じ。なぜかわからないが飼い主の住んでいるアパートの間取りは、私が人間の時住んでいた賃貸アパートの間取りに似ていた。
 さすがに、同じアパートってことないよな? 一人暮らし用の間取りはだいたい似ているものだ。確かめる手立てはない。私はかごのインコだし、飼い主が自己紹介しないゆえ、ここの住所がわからないのだから!

 そこまで考えた時、飼い主が「おはよう!」と言いながら、かごの布を取っ払ってくれた。起床時間になったようだ。昨日は気が付かなかったが、私のかごの他になんと二つも鳥かごが置いてあった。
大きい方のかごに、オカメとセキセイが一羽づつ入っていて、小ぶりのかごにはセキセイインコが一羽入っていた。
 ほう、私を入れて4羽のインコがいるわけか。

 一羽かごのインコはメスだ……。しかも、相当いばり散らしている様子が伺える。籠を独占している理由はすぐに察しがついた。大きいかごのオカメとセキセイは、メスセキセイが同居できないほど、痛めつけたのだろう。
大きなかごのオカメとセキセイは、いばったメスに蹴散らかされた負け組で、おとなしく同居かご入る結果になったのだろう。ほぼほぼ、この組み合わせになった経緯は想像がつく。
 そのボスメスセキセイと視線が合ったので、思いっきり睨み返してやった。私もメスセキセイだ、気が強いのは人間だった時から変わっていない、こいつとは、いつか一戦交えることになると私は直感した。
 
 オカメとセキセイが二羽入っているかごは、大きくてつくりもしっかりしていて、入れようと思えば、もう一羽ぐらい同居できる広さがありそうだ。
 飼い主が考えることが手に取るようにわかる。これはまずい。協調性なんぞ見せようものなら、鳥かごの数は減らしたいから(しつこいが、人間だった時の私は、インコ飼いだった)、私を大きなかごにぶっこんで、様子を観察するに決まってる。
 オカメメスで図体の割りにはへなちょこな性格のようだし、同居しているセキセイはオスで、セキセイのメスよりは気が弱いと思われる。どちらも、ちょっと威嚇してやれば、ビビるタイプだ。この二羽には徹底的にマウントをとって、飼い主の同居させようなんていう愚考を、速攻あきらさせなければならない。
 せっかく今、一羽でブランコもついているこのかごを誰が明け渡すものか!
いきなりインコになって、精神的ダメージは計り知れないというのに、共同生活なんぞやってられるかよ!
そうだ、最初のインコ生活におけるミッションは。この鳥かごの死守だ!
 ……と一羽で盛り上っていたが、ふと気が付けば他のインコ達は、朝食やら身繕い(っていうか毛繕い)に余念がない。そうだ、インコになってしまったからには、インコとしての生活スタイルをきちんとこなしていかねばならぬ。
 飼い主が用意した朝飯に駆け寄った。朝からしっかり食べてインコなからだづくりに励まねば!
で、私のお箸は? と一瞬あたりを見まわして自分の羽が目に入った。そうだ、お箸なんて羽なんだから持てないし必要ないんだ……、うなだれた頭をそのまま餌箱につっこみ、私は嘴で餌をつっつき始めた。
 生まれて初めて食べた生のシードとペレットが混ざったインコの餌の味がほろ苦かった。

「それじゃ行ってくるからね、いいこで留守番していてね」
 かごの横をせわしなく、バタバタ行き来して外出の準備をしていた飼い主がそう一声かけると、部屋から姿を消した。遠くでバタンとドアの閉まる音とガチャガチャ鍵をかける音がきこえた。
 隣のインコ達が諦めたように寂しげに「きゅう~」と鳴いた。
 どうやら飼い主は仕事に出かけたようだけど、いつ帰ってくるんだろう? 私は急に不安になってきた。あの飼い主はちゃんとここに戻ってくるんだろうか?
 以前インコを飼っていた頃、あいつらも私が出かける度にこんな不安な気持ちで私を見送っていたのだろうか? ハハ、ハハハ、帰ってくるに決まっているじゃない、だってここは飼い主の部屋なのだから。
 飼い主の彼女の帰る場所は、ここなのだから。
 帰る場所……インコになる前の私にもあった帰る場所……また考え方が後ろ向きになってきた。
 私は頭をブンブンとふって、もたげてかけてきたマイナス思考を振り払った。そういうことを思い出すのは、当分おあづけだ。今は、インコとしていかに快適な生活を勝ち取っていくかを考えよう。

 朝食でお腹が心地よく膨れたらしい、隣のインコ達はウツラウツラ昼寝を始めるようである。飼い主が戻ってきた時に、遊んでもらえるように体力を温存させておくわけね。
 私にとっても、本日初めて迎えるであろう放鳥タイムは、非常に重要である。隣のインコ達に絶対負けてはならないのだ、彼らとの力関係で上位にたつことが、今後のインコ生活を快適にする鍵であり、とにもかくにも「インコの力関係」は、最初が肝心だ(ほんとにしつこいが、私のインコ飼育経験に基づく経験則である)。
 従って隣のインコ達が昼寝するなら、こちらも昼寝して、放鳥時間に備え充分に体力を蓄えておかなければならない。
 特に一羽でかごを独占しているメスセキセイ、あの女には負けられない。女の意地だ。
意地……? そんなものが自分に残ってるなんてと、ちょっと驚いた。それなのに私はどうして、インコになってしまったんだろう? ふっと気が抜けるとまた考え始めてしまう……。
 羽に顔をうずめ、私は昼寝を始めた。


(つづく)
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