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第7章
記憶と恨みと復讐だ!
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インコになって思うことは、時間の流れがとても早いということだ。
セキセイの寿命は十年とも二十年とも言われているけれど、人生百年時代の人間と比較すれば、数倍の早さで一生を駆け抜けていくことになるのだ。
飼い主にとっては朝出かけて夜帰ってくることは、半日ぶりのつもりなのだろうが、インコ的には2,3日ぶりの感覚なのだ。
ということから考えれば、以前旅行で実家を二週間離れた後戻ってきた私が完全にインコ達に忘れ去られたのは いたしかたないことだったのね。
「おまえ達、ほんっとアホ!」
私と対面して恐怖の面持ちで「こいつ誰?」とかごの側面にへばりついたインコ達に、がっくり肩を落とたしけれど、ごめんね、インコ的には忘れて当然の長い期間だったのね。
とまぁこんなふうに思うのは、私が人間とインコを両方経験したからであって、他のインコ達にとってはそれが ごくごく普通の感覚なのだろう。
話は変わるが、私はついに例のセキセイ女「グリ子」と激突した。セキセイインコってのは、しっぽの付け根が非常に敏感なのだ。うそだと思うなら、セキセイインコの尾っぽ引っ張ってみろ。おそらく引っ張ろうとすると、さっと尾っぽを動かして阻止するから。
セキセイにとって尾は、からだの向きを調整するための働きがある。たとえば、止まり木なら背中をまっすぐ伸ばし直立姿勢を保つし、歩行時には体を横にして尾っぽを地面に接触させずに歩き回る。
非情に説明がましくなったが、触覚的な働きを尾っぽが担っているのだ。
その触感の働きのある尾っぽを引っ張られるとどうなるかといえば、全身が怖気だつ鳥肌ものの不快感に襲われるのだ。
ちなみにオカメインコはそこまで尾っぽに敏感でない。同じインコやオウムといっても種類が違えば、感覚のぶれはあるのかもしれない(適当)。
私はセキセイインコだから、尾っぽが弱点だ。そして、グリ子もセキセイ女で背後に回られるのを極端に嫌っている。つまり、尾っぽを引っ張られるのが非常に嫌なのだ。
ゆえに、飛べないインコである私が、グリ子に仕掛ける嫌がらせは空中戦ではない。完全に気を抜いた時のグリ子を狙って、背後に回り込んで渾身の力で尾っぽを引っ張るのだ、これが私の作戦だ。くどいけど、インコ飼育経験者ですからね、飼育経験で得た知識や感触は、インコになった今こそフルに活用するのだ!
というわけで、放鳥タイムで部屋をグルグル飛び回って満足して一休みしたグリ子がおやつに夢中になっている後方に、私はそっと回り込んだ。よし、いくぞっ! 私はすかさず抜け目なく音をたてず、くちばしでグリ子の尾っぽをくわえ、そして一気に彼女の尾っぽを引っ張った!
「ぎょええええええええ~~~~~っっっ!!!」
背後にいたので、彼女の形相を鑑賞できないのが非常に残念であったが、彼女が叫んだ瞬間、食べかけの餌がグリ子の嘴からホロリとスローモーションで落ちていくのが見えた。私はグリ子の尾っぽを引っ張り続けながら、思いっきりほくそえんだ。
私がインコになって初めて飼い主の肩に乗った日。
オカメ女に突き飛ばされて転げ落ちて、でも不屈の精神で這い上がっていこうとした私を、飼い主の肩の上から見下ろしやがったあの時のこと、それからその後、私が飛べないと知るや私の頭の上をかすめるように旋廻しては、私を煽りやがったこと――今こそ、溜め込んだ恨みを晴らしてやるんじゃ~~っ!
随分以前のことまで覚えているなんて不気味だって? それに旅行から帰宅した飼い主を忘れても仕方ないって話と矛盾しているって??
いやいや、恨みってのは忘れないもんでね。ちなみに旅行で飼い主に捨てられたと解釈したインコは、旅行から帰ってきた飼い主のこと思い出したら、それとともに捨てられた期間のことも同時に蘇えるわけよ。で、多いにいじけるでしょ? それと同じ。人間もインコも恨みは忘れないんだよっ!
そうよっ、私をふった元彼氏も、私をクビにしたバイト先の店長も! インコになった今も忘れてなんかいないからなっ‼
一部始終を目撃した飼い主の彼女が一瞬
「なんて恐ろしい……」
と絶句して固まったが、ハッと気付いて私をグリ子から引き剥がすと、ガミガミ説教を始めやがった。
飼い主の肩でグリ子はブルブル震えていて
「よしよし 大丈夫だったかい?」
などと飼い主から優しく声をかけてもらっていたが、あのさぁ~、くっさい演技するんじゃないよっ、ケガがないようにこっちだって考えてやっとるわいっ! 騙される飼い主もアホだわ~。
私は説教なんぞ馬耳東風とばかり、頭を脚でカキカキしてフケをとばしていた。
(つづく)
セキセイの寿命は十年とも二十年とも言われているけれど、人生百年時代の人間と比較すれば、数倍の早さで一生を駆け抜けていくことになるのだ。
飼い主にとっては朝出かけて夜帰ってくることは、半日ぶりのつもりなのだろうが、インコ的には2,3日ぶりの感覚なのだ。
ということから考えれば、以前旅行で実家を二週間離れた後戻ってきた私が完全にインコ達に忘れ去られたのは いたしかたないことだったのね。
「おまえ達、ほんっとアホ!」
私と対面して恐怖の面持ちで「こいつ誰?」とかごの側面にへばりついたインコ達に、がっくり肩を落とたしけれど、ごめんね、インコ的には忘れて当然の長い期間だったのね。
とまぁこんなふうに思うのは、私が人間とインコを両方経験したからであって、他のインコ達にとってはそれが ごくごく普通の感覚なのだろう。
話は変わるが、私はついに例のセキセイ女「グリ子」と激突した。セキセイインコってのは、しっぽの付け根が非常に敏感なのだ。うそだと思うなら、セキセイインコの尾っぽ引っ張ってみろ。おそらく引っ張ろうとすると、さっと尾っぽを動かして阻止するから。
セキセイにとって尾は、からだの向きを調整するための働きがある。たとえば、止まり木なら背中をまっすぐ伸ばし直立姿勢を保つし、歩行時には体を横にして尾っぽを地面に接触させずに歩き回る。
非情に説明がましくなったが、触覚的な働きを尾っぽが担っているのだ。
その触感の働きのある尾っぽを引っ張られるとどうなるかといえば、全身が怖気だつ鳥肌ものの不快感に襲われるのだ。
ちなみにオカメインコはそこまで尾っぽに敏感でない。同じインコやオウムといっても種類が違えば、感覚のぶれはあるのかもしれない(適当)。
私はセキセイインコだから、尾っぽが弱点だ。そして、グリ子もセキセイ女で背後に回られるのを極端に嫌っている。つまり、尾っぽを引っ張られるのが非常に嫌なのだ。
ゆえに、飛べないインコである私が、グリ子に仕掛ける嫌がらせは空中戦ではない。完全に気を抜いた時のグリ子を狙って、背後に回り込んで渾身の力で尾っぽを引っ張るのだ、これが私の作戦だ。くどいけど、インコ飼育経験者ですからね、飼育経験で得た知識や感触は、インコになった今こそフルに活用するのだ!
というわけで、放鳥タイムで部屋をグルグル飛び回って満足して一休みしたグリ子がおやつに夢中になっている後方に、私はそっと回り込んだ。よし、いくぞっ! 私はすかさず抜け目なく音をたてず、くちばしでグリ子の尾っぽをくわえ、そして一気に彼女の尾っぽを引っ張った!
「ぎょええええええええ~~~~~っっっ!!!」
背後にいたので、彼女の形相を鑑賞できないのが非常に残念であったが、彼女が叫んだ瞬間、食べかけの餌がグリ子の嘴からホロリとスローモーションで落ちていくのが見えた。私はグリ子の尾っぽを引っ張り続けながら、思いっきりほくそえんだ。
私がインコになって初めて飼い主の肩に乗った日。
オカメ女に突き飛ばされて転げ落ちて、でも不屈の精神で這い上がっていこうとした私を、飼い主の肩の上から見下ろしやがったあの時のこと、それからその後、私が飛べないと知るや私の頭の上をかすめるように旋廻しては、私を煽りやがったこと――今こそ、溜め込んだ恨みを晴らしてやるんじゃ~~っ!
随分以前のことまで覚えているなんて不気味だって? それに旅行から帰宅した飼い主を忘れても仕方ないって話と矛盾しているって??
いやいや、恨みってのは忘れないもんでね。ちなみに旅行で飼い主に捨てられたと解釈したインコは、旅行から帰ってきた飼い主のこと思い出したら、それとともに捨てられた期間のことも同時に蘇えるわけよ。で、多いにいじけるでしょ? それと同じ。人間もインコも恨みは忘れないんだよっ!
そうよっ、私をふった元彼氏も、私をクビにしたバイト先の店長も! インコになった今も忘れてなんかいないからなっ‼
一部始終を目撃した飼い主の彼女が一瞬
「なんて恐ろしい……」
と絶句して固まったが、ハッと気付いて私をグリ子から引き剥がすと、ガミガミ説教を始めやがった。
飼い主の肩でグリ子はブルブル震えていて
「よしよし 大丈夫だったかい?」
などと飼い主から優しく声をかけてもらっていたが、あのさぁ~、くっさい演技するんじゃないよっ、ケガがないようにこっちだって考えてやっとるわいっ! 騙される飼い主もアホだわ~。
私は説教なんぞ馬耳東風とばかり、頭を脚でカキカキしてフケをとばしていた。
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