世間の風潮に逆行して50才で免許とろうとしたら、自動車学校で予想以上の苦難が待っている体験談

ぽんたしろお

文字の大きさ
3 / 23
第三章

自動車学校、怒濤の入学っ!

しおりを挟む
お役所系の仕事の流れがよくわからない…。
「なんちゃら許可書」が届くまで二週間ほどかかる、と電話口の職員さんは確かに言った。
なのに、だ。
その電話から四日ほどで書類が届いたのである。

二週間と聞いたときには愕然としたけれど、二週間入学まで猶予ができたとそう思い始め、うっかり油断していたときだったので、学校に通う気構えが緩んでいた。
自動車免許試験所は、私に心理戦を仕掛けて試しているのか?と疑いたくなった。


運転適性相談終了書ーこれが正式名称だ、「なんちゃら許可書」でなかった。受理番号が書いてある。自動車学校に入学するのに大変な思いをした知らない仲間がいるのだな、と思った。

早速、自動車学校に連絡を入れた。自動車学校も私から二週間ほどかかると伝えてあったので、驚いたようだがすぐに入学手続きの日を教えてくれた。
すったもんだで自動車学校に入学したいと学校に伝えてから一か月、「運転適性相談終了書」以外の書類と学校に払う大金の準備は万端である。

私は、書類を揃えて二日後、自動車学校の生徒になった。

私の選んだのはAT限定免許のコース(補習〇時間無料付き)である。
MTでの高度な運転を覚える自信は半世紀生きてきて、全くなかった(断言)。AT限定でも苦労するだろうとわかっていたので、迷うことなく補習〇時間無料コースの高い授業料を払った。
地方の自動車学校だったので、補習無制限コースは残念ながら設定されていなかった。あったら、絶対それを選んでいたのだが。

自動車学校に入学初日、最初の授業があると知らされていた。
漠然と運転するための初歩、ハンドルや、ブレーキ、アクセルなどの場所を教えてくれる「基本のき」を学ぶのだろうと勝手に思っていた。
しかし、その日入学手続きを終えた3人が案内されたのは、ちゃちなドライブゲームみたいな運転シミュレーターだった。

内心、あせる。しつこく言うが、私はハンドル以外の運転に必要なアクセルやシフトレバーの場所も意味も知らないのだ。
ブレーキの意味は知っていた。車を止めるためのものだ、でもどこにあるのよ???
頭の中の疑問を声に出す余裕はなかった。
ちゃちとはいえ「運転席」に座るように命じられ、混乱状態でシートベルトを左側からのばそうとして、はっとする。身に沁みついた「助手席」の感覚である。
右側からシートベルトをのばすという行為すら、「運転」をさせられると感じて、すでに心は泣いていた。

ちゃちなシミュレーターは、私の混乱を無視して機械的な声で
「アクセルを踏みましょう」
「ウインカーを出しましょう」
「道路状況の確認をしましょう」
「ハンドルを左にきってみましょう」
と次々指示を飛ばしてきた。
アクセルふむ?どれぐらい踏めばいいの?ずっと足のっけているの?
ハンドルを左に切る、切る?ってどういうこと
ウインカーってどこにあるのーーーーーっ!?
目の前の画面には、運転席から見える風景が動画で映し出され、おそらく私が何をやっていいかわからないまま触ってるもろもろの動作を無視して、自動車の運転シミューレションは勝手に自動車を動かしていた。
50分後、後ろに立っていた教官が
「はい、お疲れ様です。シートベルト外して降りてください。これで、実習1時間目は終了になります」
と言ったのである。

え?これが実習の1時間としてカウントされちゃうの?私は何を学んだというの?
混乱する頭は、爆発寸前で思考停止。
ほんとに、自動車を運転できるようになるのだろうか?という疑問が思考停止した脳に上書きされて、世界はぐるんぐるんと回っていた。

という、私の思考状態とは関係なく、教官からバトンタッチしたらしい事務職員の人が自動車学校の中の案内を始めた。
私、運転できるようになるの、これで?の自問自答を繰り返しながら、機械的に案内を受ける。
そして、
「これからの予定は担当教官と相談してください」
という声で若干、私は現実に戻った。

ちなみにこの自動車学校は一人の教官が基本的に最後まで面倒をみてくれる担任制システムをとっている。
まぁ、私のような覚えが悪い生徒に対応できるのは、おそらく教官の中でも特別な訓練を受けているだろうから(勝手な妄想です)、担任制でなくても私には担任がついたに違いないーそこまで私の心はねじ曲がっていたのだ。

何度も言うが、私が何を感じようが、自動車学校というベルトコンベアに乗せられた私は、実習の担任教官に会ったのである。
「明日、枠が開いています。大丈夫ですか?」
「はぁ…」
「では、明日から自動車に乗りましょう」
「はい…(まじかよ!?)」
ちゃちなドライブシミュレーターで打ちのめされた私「が」、翌日から実車!を運転するんたどよ。
心の中の私は、号泣していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...