フランシェス兄弟はアンニュイ(弟編)

朝陽ヨル(月嶺)

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馴れ初め

朱廉と出逢う前の語り

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 最近、ジョアルに恋人が出来たらしい。それはめでたいことだ。あの兄を支えることの出来る人物とはどんな人だろうか。それをジョアルは勝手に話し出すのだが、どれも抽象的で分かりにくい。 

 ……しかし、その時のジョアルの表情は、普段の作り笑いではなく穏やかで、心の底から笑っているようだった。 

 恋人が出来てジョアルは変わった。だから尚のことジョアルの傍にはいたくない。 

 ジョアルを変えたのは時。………否、恋だ。恋で人は変わる。 

 --恋とは、一体どのようなモノだろうか。 

 今までの人生で感じたことの無い感情が生まれる。ジョアルの話によるとそういうことらしい。 

 胸が高鳴り、どうしようもない波に襲われ、抗えず、その苦しみが心地良いのだと。 

 ……訳が分からない。 

 そのたった一つの感情で、ジョアルをあんなにも変えた。いや、感情だけではなくその人自身がジョアルを変えたのかもしれない。様々な経験が相互しているのだろう。 

 もしも、ジョアルの恋人に出会う機会があれば話してみたい。 

 ……私も、変わるだろうか? 

 人との関わりは、その者の人生に大きく作用すると聞いたことがある。それが良いか悪いか決めるのは自身だが。 

 狭い関わりしか持たなかった。それはジョアルも私も同じ。ジョアルは一歩踏み出した。私も踏み出さなくては。 

 ジョアルにとって、その人は変わるきっかけ。鍵だ。 

 ならば私にはどうか? ……いや、当てはまらないだろう。 

 互いに恋したからこそ、だと。 

 私にもそんな相手がいつか現れるのだろうか。人を変える力を持つ人と。
 うつほな私を何かで埋めてくれるのだろうか。 

 他人に自分を変えてもらうなど、傲慢で執着しているということになるのではないか。
 一方的ではなく、私自身も相手に影響を及ぼすことになるのだろうか。
 
 …………わからない。 

 起こってもいないことを思案しても意味が無い。 

 出逢うも出逢わないも、それが運命というものなのだろう。


 END 
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